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(74) 機械音痴
「手紙を書くの、ユーウツ!」
文字がきれいに書けなくて、コンプレックスの岡さんに、クラス会幹事の役が、まわってきたのです。
「ぼくのパソコンをワープロとして使えばいいよ。使い方は教えてあげるから」と、夫がその日のうちに、あれこれと説明してくれました。
さて翌日、夫が会社へ出かけた後、本格的にパソコンに取り組んでみました。
英文タイプは学生の頃、経験があり、何とか思い出せます。
皆様お変わりありませんか・・そこまで入れて、画面を見ると、指がどこかに触れたのか、思いもかけない符号や文字が、いっぱい並んでいます。
あら、どうしよう。こんな時、すぐ短気を起こすのが岡さんでした。
えーい、どれか押しちゃえと、あちこち押したのです。画面はますますしっちゃかめっちゃか。そのうち、爆発でも起こすのでは、と心配になって、パッと消してしまいました。
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これで大丈夫、ともう一度入れ直すと、さっきと同じ画面が、オバケのごとく現れて、がっかり。
結局、手紙は一行も仕上がらず、その夜、もう一度、夫の手をわずらわせて、使用法一覧を書いてもらいました。
その詳しい指示書を片手に、翌日、再びやってみました。
「印刷は、ここを押すのね。次は?」
夫の書いた最後の一行を読んで、岡さんは目をむきました。
「ただし、電源スイッチを押さなくては、すべて動かない!」