(200) 天からの贈り物
庭木の間の草取りを始めた星さんは、シュロの木の傍らに、20センチほどの若木を見つけました。あら、また小鳥さんのおかげね。
星さんは嬉しくなりました。水をたっぷりあげましょ。
12坪ほどの庭の、どこに何が植わっているか、すべて星さんの胸にしまってあります。この20年、ひとりで丹精込めて、この庭を育ててきたのですから。
初めてここに家を建てて住み着いた時は、瓦礫の埋まった荒れ土の庭でした。庭師にたのむほどの余裕はなく、会社勤めの夫にも頼れず、星さんは 途方に暮れました。
ある日、ふと思いついて、庭に小さな穴を掘り、生ゴミを埋めてみました。一杯になると土をかぶせ、その隣に穴を掘り、と端から順にくり返しました。時々、ネコが骨やアラをねらって掘り返すことに気づき、穴の上にバケツを逆さにして、防ぎました。
気の長い作業を続けるうち、いつのまにか庭土は、ほっくりと軟らかく生まれ変わっていました。木々は青々と茂り、アジサイもツツジも鮮やかな花をつけます。
小鳥たちがナンテンの実や、ユスラウメをついばんでいきます。
植えた覚えのないザクロが生えだした時は、首を傾げたものでした。垣を巡らした庭は、外の世界とつながっていたのです。風や小鳥に、空からの贈り物をもらって・・。
今日の若木は、何の木でしょうか、楽しみです。