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6章(11)あなたも新築の家!
新しいお家の設計がまだこれからなら、ぜひ「風の道」を考えに入れてね。北と南が吹き抜けられるように「網戸」にしておくと、とても健康的で、自然の風を楽しめます。我が家は今年の夏、扇風機も使わない状態です。もちろん、クーラーもなし。北側の窓は小さくてもいいのです。
家が出来上がる頃に、倉敷へ行くことにして、途中下車する楽しみが増えました。お引っ越しがあるから、忙しくて、ワクワクの日々ですね、疲れ過ぎないでね。
ところで、あなたの原稿の話だけど、K社が年賀状のたびに「今年こそ」とか「もう少しお時間を」と書き添えてあるだけで、返してくれず、書き手の人間は、よく〈生殺し〉の目に合ってる、という経験がよくあるのね、あなたの場合は。いらないなら返してくれればいいのに、と思いたくなるよね。いっそのこと、返して下さい、と思い切って言ってみたらどうかしら?
あなたの家の建て替えの件は、ナショナル住宅に頼んで、自由設計にしてもらい、向こうで作ってくれた図面が気に入って、一目惚れして,決めちゃったんですって? 調べて見たら〈風の道〉があったなんて、よかったじゃないの。それに、あなた自身の畳の部屋内に「バス・トイレ・ミニキッチン」付きなのね。1階の半分には、台所と食堂と居間があるんだ。それは息子さんが結婚される場合を考えた「2世帯住宅」ってことと同じね。素晴らしいアイデアだわ。あなたは、自分勝手にスキなときに自分で家事をやるなんてぜひ見たいな。
2階が息子さんと,遠い未来の孫の部屋と、バス・トイレ・洗面所があるのね。あなたのざっと書いた図面で、ほぼ想像がつきました。ぜひ拝見したいけど、その前に引越しをして、今ある建物を壊してもらって、それから新築してもらうのだから、かなりの時間がかかるわ。そして、体力の消耗もね。どうか元気でこの図面通りの家が出来上がるのを、楽しみにしてるからね。
『寮物語・3』への励ましをありがとう! 今、このノートを送るのと同時に、「再校ゲラ」を送り返すのですが、何度赤ペンを入れても、削り取っても、担当編集者に残される部分があって、そこは私の文章ではなくて、K女史の後を引き継いだ、別の編集者の文なのだけど、私には違和感があって、理屈っぽくて、どうしてもイヤなので、これで3度目か4度目の「削除」と書きこみ、なぜ削除したいか、の細かい心理分析文を、鉛筆で書きこんで、やっと気分がすっきりしました。でも、ひょっとしたら、向こうは向こうで,譲れない部分なのかも、と気にはなったけど、後は、あちらで判断してくれるでしょうよ。
あなたの「納得できなかった、あかね書房のファンタジーの件」は、あのままなの?
小峰書店の方で、「ちょっと気に入った」のが書けてよかったね。これは きっと、私から見れば、輝いてる作品、の予感がするな。
あのね、おかしな体験をしたの。イギリス人のパムさんに誘われて〈カラーコーオーデイネイター〉に会いに行ったの。その人の話では、たいていの日本人は〈冬色〉のグループに入る色が似合うけど、私には〈夏色〉が似合うのだって。レモンイエロー、ラベンダー、明るい茶色など、柔らかい色がいいそう。そのくらい、わかってるよ、と思ったのだけどね。イギリス人は色白だから〈春色〉で、澄んだ色合いで、ゴールドのアクセサリーがよくて、私はシルバーや真珠が似合うのだって。最後に、私に似合う色を全て綴じてある〈色見本〉をくれて、買物する時、それと照らし合わせるといいのだって。全部で45色のお勧め色を持ってるけど、私は自分の好きな色を選ぶから、持ち歩いたりしないわ。こういう世界があるのだ、と知っただけね。
お化粧の方も、丁寧にやってくれて、口紅は何色、アイシャドウは何色など、全て記録してくれたけど、これは私はやるわけないわ。面倒なのと、 色や匂いに弱くて、かぶれやすい体質でもあるから。