(19) かやの中
「おばあちゃんち、あみ戸は ないの?」
マイは 蚊 (か)にくわれた あとを かきむしりながら、初めて きづいて いいました。
「そのうちには、入れようと 思ってるんだけど、古い 家だからねぇ」
おばあちゃんは、がらんどうの ブタさんの 中に、火を つけた蚊とり線香 を入れて、えんがわや 茶の間に おきました。
マイと タイが、ざしきや 納戸 (なんど) を 探検 (たんけん)している 間に、おばあちゃんは 8じょうの へや いっぱいに、緑色 (みどりいろ) の 四角い ものを つりました。
「これ、なあに」
「かやだよ。マイは 初めて なんだね。さ、ふたりとも 中に 入って、おひるね すると いい」
マイは どきどきしながら、こい緑の 家に 入って みました。 うわぁ、森の 中 みたい! タイも もぐりこんで きました。ふたりで びょんびょん、フトンの上を、ウサギに なって とびまわりました。
外を 見ると、えんがわの むこうの 庭の木も 石も、ぼんやりと かすんで 見えます。海の 中に いる みたいです。
魚 (さかな) になって、タオルケットの 波を、すういすうい。
はしゃぎまわって、いつのまにか ふたりとも、手足を 広げて、しずまっていました。
うとうと しかけた マイの 耳に、コトコト、天井うらを 走る 小さな 音がしました。ネズミです! いるって 聞いてたけど、ほんとに いるんだ!
(おばあちゃんち、だあいすき! かやがあって、 ネズミなんかこわくないもん)
ためいきといっしょに、マイは 動かなく なりました。