パラダイスティ1
「今回は採用を見送らさせていただきます。」
この一言を見るは何度目だろうか。見飽きた文章を一通り読み終えてくしゃくしゃっと丸めてゴミ箱に捨てた。
友達とのグループLINEは以前は頻繁に通知が鳴っていたのに今は閑古鳥が鳴いてるようだ。みんなも私と同じ状況なのだろうか、はたまた就職が決まった事をなかなか言い出せないのか。
そんなことを気にしたところで私の就活が良い方向に向かう訳ではない。むしろマイナスの感情で押しつぶされそうだ。
冷蔵庫を開き、缶ビールを1本取り出す。まだ飲み慣れてないのに飲み会の最初の1杯はビールという先入観でビールを飲んでいる。缶を開けてビールを飲んでみたが苦い…。どうしたらこの苦さを受け入れる事ができるだろうか。
「明日香、昼間っから飲まないの。」
リビングでビールを飲んでいると母親に叱られた。
「どうして大人ってこんな苦い物が好きなの?」
純粋な疑問を母親にぶつけてみた。
「それはお父さんに聞きなさい。お母さんはビールの良さは全く分かりません。」
「………。」
私は無言でビールを飲んだ。お母さんは私が就活で上手くいかない事を知ってるからか、前より煩く言ってこなくなった。見たい番組があるわけでは無かったがなんとなくテレビを付けてみた。まだ16時というこの時間は大体ニュース番組だ。真剣に見るわけでもなく、スマホを弄りながらなんとなく聞いていた。しかしテレビから流れてきた何気ない一言に私はスマホを触る手が止まった。
「学校で調査したところ、いじめの事実はありませんでした。」
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