断末魔がこだまする横で冷静に処理する
ぬぉぉぉぉぉーぉぉ
ぬぉぉぉぉぉーぉぉん
音波が腹に響いて来るほどの近距離でそのような断末魔を身体に浴びつつ
淡々と作業を進める
いつぞや自分が経験したように
深夜の分娩
自宅の直ぐ裏手にある分娩牛舎で
先ほどお産で駆けつけた
手はみえているが大きくて進んでいない様子
頭の位置を確認してロープを子牛の両手にかけ
滑車牽引道具を装着して力いっぱい引っ張る
39歳だけど
結構筋肉はある方だ
けど
なかなか寝起きの力勝負はキツい
腰に回したロープが食い込む
陣痛にあわせてソーレでひく
休む
ひく
休む
徐々に舌が見えてくる
鼻がみえてくる
目がみえてくる
ここが山だ!
顔さえ出たらひと山越える
トゥるん
と山をこえて
ぬおおおおおおおおぉぉぉぉぉー
ぬおおおおおおおおぉぉぉぉぉー
わかってる
わかってるキツイなぁゃ
と呟きながら介助を続ける
実はこの牛舎、寝室側やからもうちょいボリュームおとしてくれると有難いわ
子供ら目が覚めたら可哀想やからね
頼むね
しーーー
なんて言っても無理だよね…
ぬおおおおおおおおぉぉぉぉぉー
ぬおおおおおおおおぉぉぉぉぉー
ぬおおおおおおおおぉぉぉぉぉー
自分が第1子を出産したときのことが被る
痛すぎて悶絶した
自然とだしたことのないような叫びが出てくる
分娩室に入る前は余裕で隣の部屋から聞こえてくる絶賛分娩中のママの断末魔を聞いて
だいぶドン引きしたはずなのだが
いざ自分となると
納得
さっきはお隣さんドン引きしてごめんなさい
痛いわ、これ
分娩は特に初めては痛い
そーよね
痛いいたい
頑張れ頑張れ
傍らでは助産師さんが
ドン引いているわけでなく
淡々と冷静に準備を進めて検査も行い
あれよあれよで進んでいった
そんなかんじで私も進める
次は肩をだす
その流れで肋骨をだしてあげたら
もう自力呼吸させることに専念せねばならない
巨大児の場合
自発呼吸が弱いことが多い
顔に冷水をぶっかけて
舌を引っ張り
眼球を押して刺激したり
鼻の穴に何か突っ込んで嫌がらせたり
取り敢えず産まれたんだぞ
の
刺激を与えまくる
この子は呼吸は大丈夫
ふぅ…
さて運び出す道具もってこよ
よっこらしょ
寝室の電気が消えたままなのを確認して
あわてて帰らなくてもよさそうなことに
安心して
その後も進む