【Endeavor Report】Outliers 2024 徹底解説
エンデバーでは毎年、エンデバー・コミュニティから最も業績が良く急成長している企業を「Endeavor Outliers」として認定し、それぞれのエコシステムに対して還元してもらうための特別なプログラムを提供しています。EndeavorがOutliers Programを提供する理由、2024年の認定起業家やトレンドについてご紹介していきます。
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1. Endeavor Outliers とは
10年前、チュニジア生まれのカリム・べギル氏は、ディープマインド（2014年にGoogleが買収したロンドン拠点のAI事業）に匹敵する企業をアフリカに設立することを夢見ていました。2023年7月、彼は自身の会社”InstaDeep”を6億8000万ドルで売却しました。
インドネシアでは、ジブラン・フザイファ氏が教育資金を賄うために自身の養魚池で養殖を始めました。現在彼の会社”eFisery”は70,000人の農家を支援し、その価値は10億ドルを超えています。
一方、ブラジルでは4人の共同創設者からなるチームが15年間かけて決済処理サービスでユニコーン企業となったPismoを構築し、昨年10億ドルでVISAに売却しました。
これらの企業は全て、世界を変えるイノベーションがどこからでも生まれ得ることを証明してくれています。そして彼らは全員、2024年のEndeavor Outliersです。
エンデバー・アウトライヤーを実施する目的は、予期せぬ場所で設立されている優れた企業にスポットライトを当てることと、一連のイベントやオンラインプログラムを通じて創業者同士が繋がり、互いにサポートし、次世代にインスピレーションを与えることができる特別なコミュニティを構築することにあります。
カリム氏、ジブラン氏、ジブラン・フザイファ氏は、今年のアウトライヤーのほんの数社に過ぎません。多くの地域でベンチャーキャピタルの低迷、経済混乱、困難な状況、政情不安にもかかわらず、彼らと他の今年のアウトライアーの創設者たちは巨大なビジネスを成長させ、体系的な問題を解決し、自国に良影響を与えています。
彼らは単に会社を成長させるだけでなく、資金を循環させ、投資し、指導し、次世代の起業家たちにインスピレーションを与えているのです。エンデバーではこれを「Miltiplier Effect（乗数効果）」と呼んでいます。
2024年のエンデバー・アウトライヤーがどのように認定され、そして世界中の新興市場でアントレプレナーシップを形成する傾向について、彼らのストーリがー私達に何を教えてくれるのか、ご紹介していきます。
2. Endeavor Outliersの役割
エンデバーのポートフォリオに含まれる企業の多くは成功していますが、エコシステム全体を変革できるレベルの成功を収めることができる企業はほんのわずかです。これはエンデバーのイノベーション理論の核心でもあります。ほんの数人の成功した起業家が乗数者になれば、エコシステムを活性化できるのです。
しかし、高成長ビジネスを拡大し撤退するまでの道のりは長く孤独なものです。そしてそれは、創業者がしばしば経済的、政治的混乱と戦わなければならない最前線では、より一層当てはまります。戦争の混乱に直面している中東の企業、ベンチャーキャピタルからの資金提供が半分に減ったエコシステムにあるアフリカのスタートアップ、あるいは経済回復が鈍い中で事業を展開しているラテンアメリカの創業者達にとって、大規模な企業を構築することは限りなく困難なことです。
だからこそエンデバー では、エンデバー起業家の中から更に急成長を遂げている企業やイグジット後に次世代のロールモデルとして自身を成長させたい創業者達を認定し、1年間のアウトライヤー・プログラムを設立しました。このプログラムは今年で7年目を迎えましたが、プログラム参加者は優れた創業者コミュニティの中で互いの経験を共有し、学び、サポートしあっています。
「アウトライアー・プログラムの目標は、創業者が会社を拡大し、リーダーとして成長することをサポートできる信頼のネットワーク上に構築された強力なピア・コミュニティを育成することです。」
最も重要なことは、Endeavor Outliersは、相乗効果が実際に起きていることを示す最良の例であるということです。彼らは、大きな夢を持ち、スケールアップするというエンデバーの精神を体現しており、そしてその夢を最高レベルで実現しています。
彼らは過去 2 年間で他のエンデバー起業家への指導・アドバイスに 2,000 時間近くを費やしてきました。また、エンデバー・カタリスト（エンデバーのルールに基づいて共同投資を行うファンド）を通じて、次世代のエンデバー起業家に 4,000 万ドル以上を投資しました。 40 人のアウトライアーからなるグループは、ローカルのエンデバー支部の役員に加わり、更に多くの貢献を目指す人もいます。は、相乗効果が実際に起きていることを示す最良の例であるということです。彼らは、大きな夢を持ち、スケールアップするというエンデバーの精神を体現しており、そしてその夢を最高レベルで実現しています。
彼らは過去 2 年間で他のエンデバー起業家への指導・アドバイスに 2,000 時間近くを費やしてきました。また、エンデバー・カタリスト（エンデバーのルールに基づいて共同投資を行うファンド）を通じて、次世代のエンデバー起業家に 4,000 万ドル以上を投資しました。 40 人のアウトライアーからなるグループは、ローカルのエンデバー支部の役員に加わり、更に多くの貢献を目指す人もいます。
3. Outliers Programが生み出すインパクト
アルゼンチンの起業家がブラジルの連続起業家にサンフランシスコで出会ったら何が起こるでしょうか？起業家達が国境を超えた時、そのインパクトはより大きくグローバルなものとなるのです。ここでは3つの出会いを紹介します。
「エンデバーの起業家たちは素晴らしいことを成し遂げています。彼らは自分たちの会社を築いているだけではなく、自分たちのコミュニティ、自分たちの都市、そして率直に言って自分たちの国の未来を築いているのです。
投資を通じて効果を生み出す
アウトライヤーがマルチプライヤーになる最も強力な方法の 1 つは、資金を前払いし、エンジェル投資家または独自の現地ファンドを通じて新しい創業者に投資することです。
例えば、メルカド・リブレの共同創設者ヘルナン・カザ氏と元最高財務責任者ニコラス・シェカシー氏によって設立されたカシェク・ベンチャーズは、すでにラテンアメリカの100社以上に投資をしています。Init-6 は、インドネシアの次の大手テクノロジー企業に投資するために、電子商取引大手 Bukalapak の創設者である Achmad Zaky によって設立されました。ブラジルの新興企業ロフトの共同創設者であるマテ・ペンツ氏とフロリアン・ハーゲンブーフ氏の2人が設立したCanary VCは2017年から活動を開始し、ラテンアメリカのアーリーステージの企業にとってなくてはならない存在となっています。Yemeksepeti.com の共同創設者であるメリ・エデミス氏とネヴザット・アイドゥン氏は、トルコで最も多くの企業に投資しているエンジェル投資家の一人として知られており、それぞれ 50 社以上の企業に投資しています。
4. Endeavor Outliersとして認定される 3 つの方法
エンデバーは起業家としての歩みのあらゆる段階で創業者をサポートすることに尽力しています。そのため、エンデバー・アウトライヤーになる資格を得るには、各企業の段階に応じて 3 つの方法があります。彼らの多くは、複数の段階にわたってアウトライヤーとして認定され、複数年間コミュニティに参加しています。実際、7 年前にこのプログラムが開始されて以来、毎年 25 社が資格を取得しています。
成長は企業を評価する際の重要な要素ですが、新興市場のエコシステムに属する企業は多くの場合、自国や市場の不安定性に耐えるために収益性を優先する必要があることに注意することが重要です。つまり、アウトライアーの多くは急速に成長している一方で、より発展した市場のスタートアップ企業よりも早く収益性を達成しており、その成長がさらに印象的であるということです。
3つの指標
① スケールアップ
急成長を遂げている企業を率いるエンデバー起業家 (収益 2,000 万ドルから 1 億ドル)
② スケールアップと成長
エンデバー大企業 (収益 1 億以上) を築き上げ、現在も急速に成長している企業を導く起業家
③ マルチプライヤー（成長を遂げた創業者）
会社を上場または5億ドル以上で買収し、現在それを次世代の起業家に返済しているエンデバー起業家
2024年のエンデバー・アウトライヤーには、「スケールアップ」カテゴリー（収益2,000万～1億ドル）の99社、「スケールアップし、成長を続けている」企業77社、「マルチプライヤー」（成長を遂げた創業者向けのカテゴリー：上場もしくはM&Aを行った企業）30社が含まれます。
「エンデバー・アウトライヤーに選ばれた企業は、競合他社を上回るパフォーマンスを示しているだけではなく、例外的な意味を再定義しています。同社の収益と 3 年間の年平均成長率 (CAGR) は、同様の民間企業の平均 6 倍です。彼らの成功を理解することは、彼らの並外れた性質を浮き彫りにするだけでなく、私たちの分析に貴重な洞察を与えてくれます。」
データ分析ディレクター Endeavor Global
最初のカテゴリー (「スケールアップ」) に属するこれら 99 社の収益の中央値が 3,900 万ドル、3 年間の CAGR の中央値が 155% であることが注目すべき点の一つです。そのうち 12 社以上が 3 年間で 500% を超える CAGR 率を記録しています。このグループには、ラテンアメリカのフィンテック企業Nomad、Cora、Clara、Pomelo、a16zが支援する南アフリカのゲーム企業Carry1st、グローバルHRテックプラットフォームOysterが含まれています。
5. 2024年のエンデバー・アウトライヤーの紹介（4社）
【Scaling up】
Carry1st: アフリカのゲーム開発者の収益化を支援するプラットフォーマー
殆どの企業は、たとえ本当に優れた企業であっても、企業が規模を拡大するにつれて成長率が劇的に鈍化する傾向があります。エンデバー・アウトライヤーの場合はそうではありません。おそらく最も印象的なのは、「スケールアップ」グループ (収益 1 億ドル以上) の 77 社の収益中央値が 2 億 200 万ドル、3 年間の CAGR 中央値が 129% であることです。これには、収益が 1 億ドル以上で、現在も毎年 100% 以上成長している企業が 20 社以上含まれています。フィンテック企業としてはサウジアラビア初のユニコーン企業”Tamara”や決済・支払サービスを提供する”Tabby”、B2Bマーケットプレイス企業として”Chari”、”Yassir”、”Sary Saudi”、ラテンアメリカの不動産プラットフォーム”Habi”、インドネシアの水産養殖スタートアップ”eFisery”が選出されています。
【Scaling up & Growing】
Chari: 北アフリカにおける小売向けB2B電子商取引プラットフォーム
このグループには、Careem（2019年にUberが31億ドルで買収）、Auth0（2021年にOktaが65億ドルで買収）、Peak Games（2020年にZyngaが18億ドルで買収）の創業者が含まれます。
最近加わったのは、ブラジルのフィンテック企業Pismo（2023年6月にVisaが10億ドルで買収）とチュニジアのInstaDeepの創業者で、2023年1月にBioNTechが6億8,000万ドルで買収し、アフリカ大陸のテック系スタートアップとしては過去最大の買収額となりました。
【Multiplier】
Careem: 中東初のユニコーン企業
このグループには、Mercado Libre (NASDAQ: MELI)、Globant (NYSE:GLOB)、dLocal (NASDAQ: DLO)を含む14の上場企業や、ブラジルのフィンテック企業であるCreditasやEbanx、東南アジアの中古車マーケットプレイスであるCarsomeやCarroなど、今後数年のうちに上場を予定している企業12社も含まれている。今年のOutliersクラスで最大の企業は、Mercado Libre (NYSE: MELI)である。25年以上前にエンデバーによって選ばれたMELIは、エンデバーの起業家マルコス・ガルペリンが率い、時価総額840億ドルに成長した。
【Multiplier】
Mercado Libre: 中南米初のナスダック企業
6. 2024年のEndeavor Outliers
① エリア別
② 業界別
Fintech領域は 2 年連続で最も代表的なセグメントであり、全体の 4 分の 1 以上を占めています。この領域では、世界的な決済会社”Checkout.com”(評価額 110 億ドル以上) や経費管理プラットフォーム”Brex”(評価額 120 億ドル以上) などの巨大企業に加え、デジタル銀行”Papara”、”Neon”、”Moniepoint”が含まれており、新興市場で銀行口座を持っていない何百万人もの消費者が金融サービスを利用できる恩恵を受けています。
Marketplace領域では、最も急速に成長している企業がいくつも見受けられます。収益の中央値が 1 億 2,200 万ドル、3 年間の CAGR の中央値が 207% を誇っており、具体的な企業としては、不動産市場に革命をもたらしている”Casavo”、”Clikalia”、”PropertyFinder”などプロップ・テック、 世界中の小商店のDXサービスを提供する”MaxAB”、”GrowSari”、”Chiper”のようなB2Bマーケットプレイス、自動車マーケットプレイスの”Carro”、”Carsome”、”Kavak”などが含まれています。
③ 各領域の代表的な企業群（詳しくは原文をご覧ください）
7. 総括 - コミュニティは創業者の孤独の解毒剤 -
新興市場の起業家たちは、業界全体、場合によっては経済全体を再構築しているとして、当然のように称賛されています。雑誌や特集の見出しには、その国初のユニコーンが謳われ、『Forbes』の各ローカル版には、今後の有力者リストに創業者が名を連ねています。しかし、十分なサービスを受けていない市場で影響力のある起業家は、雑誌のプロフィールでは捉えきれないストーリーを持っています。
4カ月ごとに規模が倍増するビジネスを成長させるには、並外れた困難が伴います。エンデバー起業家の多くは、評価が上がれば上がるほど、プレッシャーも大きくなると語っています。エンデバー・ブラジルの最近の調査によると、起業家の69％が途中で孤独を感じているという結果が出ています。信頼できるチーム、経験豊富な投資家、長期的なパートナーに囲まれているにもかかわらず、高成長ビジネスを構築するためには、他の高成長創業者にしか理解できない部分があるのです。
これは世界中で言えることですが、新興市場の創業者にとっては特に難しいことなのです。多くの創業者は自国で初めてこの道を歩むため、自国には尊敬できる人もいなければ、成功や課題について話し合える相手もいない。だからこそ、同じような軌跡を辿りながらも、他の市場の創業者たちと出会うことは、とても重要で貴重なのです。
エンデバーは、アウトライヤーを通じて、優れた創業者のコミュニティを定期的に（対面でもバーチャルでも）集う機会を創り、経験を共有し、互いに学び合い、世界一流の講演者の話を聞き、最終的には互いに支え合うことを目指しています。創業者の旅の辛さや孤独を少しでも減らせるとしたら、頼れる仲間のコミュニティがあることだと我々は信じています。
今年のプログラムは、6月にカリフォルニアで開催されるアウトライヤー・リトリートで正式にスタートします。プログラムの要であるこのリトリートは、創業者たちが日常から一歩引いて内省し、「そこにいた」仲間たちから学び、共通の体験を通じて永続的な友情を築き、最終的には充電され、起業家としての旅を続ける活力を取り戻すまたとない機会となっています。
「起業家であることは孤独なこともあります。しかし、努力型の起業家であってはなりません。アウトライアー・コミュニティは、当社のトップ創設者が課題や挫折を共有し、インスピレーションの物語を交換し、将来への希望をより深く掘り下げるための安全なスペースを提供します。そうすることで、彼らは創設者の旅の困難を少しでも和らげ、孤独を少しでも和らげるためにお互いをサポートします。これが努力の魔法です。」
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