【Endeavor Article】ラテンアメリカと南アフリカ、大陸を超えた2つのFintech企業による、新しい起業家間の提携の形

2023年12月、ニューヨーク市の金融街の上空で、世界の金融の未来を変えるかもしれない会合が行われていました。
 
ラテンアメリカ最大のFintech企業Nubankの創設者であるDavid Vélez氏は、アントレプレナーシップの未来を再考した功績を称えられ、Endeavor Galaで表彰される数時間前に、世界的な起業家20人と親密なQ&Aセッションを行っていました。
 
部屋にいた人々の中には、南アフリカ全土の金融アクセスを変革するデジタル銀行であるTyme Groupの共同創設者である Tjaart van der Walt 氏と Coen Jonker 氏でした。Q&AセッションはエンデバーのPresidentであるAdrian Garcia-Aranyosによる紹介から始まりました。
 
“彼らは似たような場所にいるけれど、世界の違う場所にいるので、語ることがたくさんあるのです” とAdrianは紹介の理由を語り始めました。

“まったく同じことをやっているようなものですが、完全に異なる市場なので、競合しているわけではないのです。”

このQ&Aセッションから1年が経ち、NubankとTymeはナレッジシェアのセッションを重ねる中で関係性を深め、最終的にはNubankがTymeの南アフリカとフィリピンのチームを訪問するまでになっていました。それから1年後、Nubankは現在、Tymeの2億5,000万ドルにのぼるシリーズDの資金調達ラウンドを主導しています。

“この資金調達により、設立6年未満のTymeは評価額15億ドルのユニコーン企業に躍り出たのです”

この資金調達は、新興市場出身の起業家が世界をまたにかけ互いにどのように支援しあってきたかという点においてだけでなく、ロンドンやニューヨークのような伝統的な世界の金融市場の中心地にも触れながら、グローバルの金融システムのルールを書き換えるという点において、革命的な変革の一つとも言えるでしょう。そしてその変革を私たちは今目撃しているのです。

平行した道、共通の野望

大陸は離れているものの、Nubank と Tyme は金融アクセスを民主化し、旧来のシステムを破壊するという共通の使命を持っています。両社の出会いと関係性の深化は非常に自然なものでした。
 
David氏が2013年にNubankを立ち上げた当時、ブラジルでは5つの銀行が市場の80%を占めていました。手数料の高さと顧客サービスの悪さから、何百万人もの人々が銀行口座を利用できませんでした。Nubankの手数料無料のクレジットカードとユーザーフレンドリーなデジタルプラットフォームは状況を変え、現在ではブラジル、メキシコ、コロンビアの1億1千万人以上の顧客にサービスを提供しています。上場企業であるこの企業の価値は現在約700億ドルです。

6 年後、南アフリカで Tyme は同様の課題に直面しました。南アフリカの金融資産の 90% は、4 つの老舗銀行によって管理されています。Tyme の解決策は、アンバサダーを配置した物理的なキオスクで、ユーザーが 5 分以内に口座を開設できるよう支援することです。
 
Tyme はアフリカ外のフィリピンにも進出し、2024 年 1 月に南アフリカとフィリピンで 1,500 万人以上のユーザーにサービスを提供し、世界で最も早く収益を上げる独立型デジタル銀行となったことで注目を集めました。同社は現在シンガポールに本社を置いており、フィリピンがアジア最大の市場であり、ベトナムとインドネシアでも事業拡大を進めています。

“共有すればするほど、より多くのものが返ってきます”

大陸は違えど、これらの創設者たちは金融包摂を書き換え、人々がこれまでになかった製品やサービスにアクセスできるようにしています。
 
Tyme にとって、今回の提携により、Nubank のデジタルクレジット、世界的な知名度、IPOの野望の検証に関する専門知識にアクセスできるようになります。
 
「私たちは常に、できる限り多くのものを共有するべきだと信じてきました。重要なのは市場へのアクセスなので、私たちは何も隠していません」とTjaart氏は振り返っています。

起業家間の新たな資本移動

Nubank による Tyme への先行投資は、新興市場の創業者が自社のエコシステムに再投資し、自社の成長を主導するという、より広範な傾向を示しています。
 
「起業家同士のこうした提携は、世界のベンチャーキャピタルの形を変えつつある」と、エンデバー・カタリストのマネージング・パートナー、Allen Taylerは語っています。「誰よりも市場を熟知している創業者たちが、未来を築くための手綱を握っているのだ。」
 
世界中で、エンデバー起業家がこの変化を推進しています。

• Medcado Libre

Guillaume Pousaz氏が設立したMercado Libreは、ベンチャー部門を通じてラテンアメリカのスタートアップエコシステムを形成しており、地域最大のエコシステムとしての地位を利用して初期段階のテクノロジー企業に投資しています。現在、同社は28社に投資しており、その総評価額は90億ドルを超えています。

• Checkout.com

Guillaume Pousaz氏が設立したCheckout.comは、中東最大規模のラウンドの1つである2021年のTamaraの1億1,000万ドルの資金調達ラウンドを主導し、Tamaraをユニコーン企業に押し上げた直近の3億4,000万ドルの資金調達ラウンドにも参加しました。

• UnifonicX

Hassan Hamdan氏とAhmed Hamdan氏によって設立されたUnifonicの投資部門であるUnifonic Xは、アクセラレータープログラムを通じてサウジアラビアとMENA地域のスタートアップ企業に投資し、地域全体のアントレプレナーシップの醸成の強化を支えています。

新興市場の創業者は、知識を共有し、市場に合わせて独自にカスタマイズされたソリューションを構築することで、変化を推進しています。この動きは、従来のシステムを飛び越えるネットワークを構築することに通じています。
 
「これがコラボレーションの力です」と、エンデバー・サウスアフリカのマネージングディレクター、Alison Collierは語っています。「新興市場には才能、アイデア、そして今や自らの未来を築くための資本があります。」
 
David Vélez氏とTymeの創設者はパートナーシップを継続しながら、起業家同士が資本だけでなく信頼、知識、そしてより良い未来に向けた共通のビジョンで投資し合うことで何が可能になるかを証明しています。
 
“共有すればするほど、得られるものも増えます。最初の会話から、Nubankも同じ気持ちであることがはっきりしました。”
 
彼らのコラボレーションは単なる金銭的なものではなく、信頼と相互学習に関するものです。彼らの才能と革新を組み合わせることで、新興市場全体でデジタルバンキング ソリューションを推進できます。これは、創業者が次世代の起業家を育成することでエコシステムを構築するという考え方である、 Endeavor の乗数効果のもう 1 つの例でもあるのです。

原文はこちら
https://endeavor.org/stories/nubank-invests-in-tyme/