🇻🇳ベトナム｜活気ある起業家エコシステムとテクノロジーの進化

*本記事はエンデバー・ベトナムのマネージング・ディレクターであるラン・アン・グエン氏が寄稿しています。（2024/3/22｜以下、本文）

ベトナムが若い国であることは否定できません。人口は1億人ですが、その5分の1が25歳以下。これを弱点と考える人もいるかもしれませんが、エンデバー・ベトナムを設立しマネージング・ディレクターとして5年間運営してきた経験から、私はエコシステムの若さこそが最大の強みだと考えるようになりました。

次回のエンデバー・インターナショナル・セレクション・パネルの開催を控え、私は将来さらに多くのインパクトのある企業を立ち上げ、成長させるベトナムのエコシステムの潜在力を広くアピールできることを非常に楽しみにしています。

• 若いエコシステムの問題

2018年末にフォーブス・ベトナムからエンデバーを立ち上げるために異動してきた当初、ビジネス・ジャーナリストとしての経験から、物流、eコマース、その他多くの垂直分野で会社を設立し、問題を解決しようとしている野心的な若い起業家がベトナムに溢れていることを知っていました。"Grab"や"SEA"のようなサクセスストーリーは、国際的なビジネスモデルを現地の状況に適応させることでベトナム企業をスケールさせることが可能であることを、当時すでに証明していました。

私たちはすぐに、33社43人の起業家をエンデバー起業家候補として選定し、そのうちの16人がエンデバー起業家に選ばれました。

しかし、ベトナムには多くのアイデアとエネルギーがあったものの、当時のエコシステムはまだ発展の初期段階にあり、他の初期のエコシステムが直面するのと同じような問題を多く抱えていました。例えば、ベンチャーキャピタル市場は小さく、地元市場のみならず6億人の潜在顧客を抱える巨大な東南アジア市場にも進出するには、起業家は文化や言語の大きな違いを乗り越えなければなりませんでした。

最後に、世界中の新興企業と同様、ベトナム企業も過去5年間、国家的・世界的な不可抗力によって揺さぶられてきました。ベトナム経済の減速は起業家にとって逆風となり、COVID-19は多くの若い企業の成長を鈍らせました。パンデミック後の世界的なVC投資の凍結もベトナムに特に大きな打撃を与え、ベンチャーキャピタルの資金調達額は2019年の8億6,100万ドルをピークに、2023年には6億5,000万ドルという最低水準を記録しました。

• 若いエコシステムの有望性

若いということは課題をもたらす一方、この5年間で、それがさらに多くの機会を生み出すと確信しました。ベトナムの人口は若く、ダイナミックです。そして国際的な視野を持ち、教育水準も高い。ベトナムは、海外に留学させる学生の数で、中国やインドのような大国に次いで世界第8位にランクされており、その結果、企業が活用できる地元のハイテク人材は驚くほど豊富なのです。

企業は膨大な人口から採用できるだけでなく、デジタル化が急速に進む大規模な人口を売り込むことができます。このような利点に、チャンスがあるという感覚と、挑戦する大胆さが加われば、継続的かつ長期的な発展のレシピが完成します。このように、ベトナムは、10年以上前のブラジルやアルゼンチンのようなラテンアメリカのサクセスストーリーと同じような位置づけにあり、成長の余地も大きいと確信しています。

そのような成長のきっかけとなる人脈を作り、サポートを提供することが私たちエンデバーの役割だと考えています。ベトナムで成功を収めたエンデバー起業家の2名は、私たちの理念の実践と、エコシステムの将来的な可能性の大きさを物語っています：

左：グエン・タイン・チュン氏｜Sky Mavis 共同創業者 右：ヴー・ラム氏｜Katalon CEO

ヴー・ラム氏｜Katalon 共同設立者兼CEO
幼少期にアメリカに渡り、そこで学校に通ったヴー氏は、90年代半ばにベトナムに戻り、IT企業を次々と設立して成功を収めました。エンデバーがベトナムに進出してすぐに、私たちは彼を、我々のネットワークに大きな付加価値を与えてくれる経験豊富な起業家として認識し、一方ヴー氏もすぐにエンデバーのミッションの支援と若い創業者の指導に飛び込んでくれました。エンデバーでの活動に触発されたヴーは、2015年に共同創業者のウイ・トラン氏と手を組み、世界中の企業にサービスを提供する急成長中のソフトウェア・テスト会社カタロンを設立。2021年、ヴー氏とウイ氏はエンデバー起業家に選出されました。ヴー氏は、エンデバー乗数効果の完璧な実践例として、エコシステムの好循環を促進する起業家の一人です。

グエン・タイン・チュン氏｜Sky Mavis 共同設立者
ブロックチェーンゲーム会社Sky Mavisは、ベトナムの最新のユニコーン企業のひとつで、2021年の評価額は30億ドルに達していました。その創業者であるグエン氏は、成功だけでなく、困難に直面したときの回復力においても、ベトナムのエコシステムとエンデバー・アプローチの好例となっている。2023年、グエン氏は、ハッカーが顧客から6億2500万ドル以上を盗み出すという事件に直面しました。危機を冷静に乗り切ったSky Mavisチームは、ユーザーに返済し、成長への道を歩み続けることができました。若い企業、そして若いエコシステムは、必然的に困難な瞬間に直面しますが、グエン氏の経験は、それを乗り越えて成功することが可能であることを示してくれました。

"Katalon"と"Sky Mavis"は、地元企業がローカル市場の制約を越えて拡大するという課題をどのように克服しているかを示しています。両社ともにベトナムを本拠地としてグローバルに販売できる技術ベースの製品を提供し、ベトナムの豊富な若い技術人材を活用しています。エンデバー・ベトナムのネットワークには、特にSAS、ゲーム、ブロックチェーンなどの分野で、人材とグローバル市場の利用可能性に基づいて繁栄している他の多くの企業があります。今後、このような企業がさらに増えていくことを期待しています。

エンデバー・アントレプレナーの次世代を選出するため、世界中から候補者が集まる選考会をベトナムで開催する準備が整った今、私はエンデバー・ベトナムを運営してきたこの5年間を振り返り、ベトナムのアントレプレナーたちがどれだけの道のりを歩んできたか、そしてこれから先、彼らがどれだけの影響力を持つことになるのかを実感しています。

詳細はこちら（原文）
https://endeavor.org/stories/vietnams-tech-evolution/