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<エンデバー起業家インタビュー:十河 宏輔氏> 独自の道を切り拓く起業家たちの物語


どのように起業家「十河 宏輔」は誕生したのか?
AnyMind Groupの創業ストーリー

                                                                              (AnyMind Group=以下AnyMind)

Endeavor前田:
十河さんが起業されたきっかけについて教えていただけますか?

十河:
私が起業を決意した背景には、幼少期からの夢と、前職での経験が大きく影響しています。双方の祖父が自身で事業を営んでいた影響もあって、幼少期から社長になりたいと思っていました。
前職時代に、東南アジアで海外拠点の立ち上げを担当し、最初はベトナム拠点の立ち上げから始めて、その後6カ国すべての東南アジアの拠点を立ち上げる機会をいただきました。現地法人の社長を務めたことで、社長としての仕事が本当に楽しいと再確認できる機会となりました。
初めて立ち上げでベトナムに行った際には、もちろんベトナム語を話せないので、英語でコミュニケーションを取らなければいけませんでした。当時25歳で現地社長を務めることになったので、若い上にコミュニケーションが取れないということで、最初は大変でしたが、コミュニケーション力を鍛える良い機会となり、現地のメンバーとの関係を深めることができました。
そして、メンバーと一緒に、当時扱っていたアドテクの事業を各国で立ち上げていくことに成功しました。
東南アジアで生活をする中で、地域の活気と同時にビジネスチャンスを感じていました。平均年齢の低い東南アジア市場は、確実にデジタル中心の世界になっていくと感じました。一方で、まだまだビジネスにおけるインフラ的な存在となる会社が不足していることも事実でした。そこで、これまでの経験とアジアで感じた可能性を元に、2016年にシンガポールで起業を決断しました。当初からグローバルな展開を視野に入れており、私が既に経験を積んでいたアジア市場を中心にビジネス展開を図りました。



創業後、一番の困難をいかに乗り越えたのか?

Endeavor前田:
創業以来、数々の困難を乗り越えられてきたと思うのですが、1番の困難だったと思われる経験、そしてどのように乗り越えられたかをお聞かせいただけますか?

十河:
創業以来、さまざまな困難に直面しましたが、最も記憶に残るのは、上場を3度目のチャレンジで果たしたことです。
1度目の上場は、企業評価が高く、成績も好調だったため自信がありました。しかし、ウクライナとロシアの紛争が勃発し、市場が冷え込みました。株主の皆様をはじめとする方々からの多くのアドバイスや外的要因を考慮し、一度目の上場を延期する判断をしました。
2度目は翌年12月、前回の経験を踏まえ、準備を整えて挑みました。しかし、予期せぬ問題が浮上し、またしても上場を見送らざるを得なくなりました。これは、株主やクライアントの皆さま、そして社内の期待が高まっていた中での延期であったため、非常に心苦しかったです。また、社内の士気をどう保つかが一番難しかったですね。メンバーたちにとっても上場は大きな期待の一つだったので、離脱も可能性として考えられました。
当時、具体的な上場スケジュールも見えていない状況で既に2度も延期したため、本当に信用してもらえるのかという不安もありました。
そこで出資者を含めた全てのステークホルダーに対し、とにかくコミュニケーションを取り続けました。また、メンバーに対しても、様々な角度からコミュニケーションを取りました。「このような状況であっても、ビジネスは好調で、投資家や株主も支えてくれている。上場は必ず実現する」と、気持ちを伝え続けました。
「では、いつ上場するのか?」という問いに対し具体的な期日を明言できない状況だったことは非常に辛かったのですが、CFOの大川が関係者とうまくコミュニケーションを取ってくれました。
また、業績が伸び悩んでいると、社内の士気やキーマンの減少を含めて難しいと感じることもあると思いますが、幸いにも創業以来、事業成長は継続できています。
「上場が3ヶ月伸びようが半年伸びようが、10年先を見たときには誤差でしかない」という自分の方針を関係者全員が認識し、共感してくれたことは本当に大きかったです。

その結果、3度目にしてようやく上場することができました。
2023年の1月から3月は本当に忙しかったですが、上場プロジェクトチームの尽力に、とても感謝しています。彼らと協力して上場に向けて取り組んだ結果、確実に進むことができ、その進捗を丁寧に社内外と共有することで、信頼を築くことができたのだと思います。



AnyMindのカルチャー・チームビルディング

Endeavor前田:
困難に直面した時のフォローだけではなく、それまでの関係性が構築されていたからこそ、みなさん十河さんについてこられたのだと感じたのですが、日頃から企業カルチャーの構築やチームビルディングなどに関して気をつけていらっしゃることはありますか?

十河:
オープンにコミュニケーションをとることです。
AnyMindには様々な国籍の社員がいます。現在の社員数は1300人ですが、そのうち日本人は約300人であり、大半は海外出身の方々で構成されています。特にアジアの文化では、ダイレクトなコミュニケーションの方がより伝わりやすい場合が多いです。そのため、会社のバリューの中にもありますが、「Be Open」の精神でコミュニケーションをとっています。
加えて、経営陣と社員との情報格差をなくすために、経営陣と社員の距離感を近くすることを意識しています。私たちは事業展開している国の数も多く、事業内容も多岐にわたるため、私たち経営陣の解像度を上げるには、情報をとにかく拾い上げるしかないんです。経営陣と社員との距離が離れると、情報が入ってこなくなります。そのような状況を避けるため、AnyMindでは、密にコミュニケーションが取れる環境作りを常に心がけています。

Endeavor前田:
まさに、AnyMindのコーポレートバリューの一つである”Be Open”(誰にでもオープンマインドであれ。フラットであれ)ですね! とはいえ、なかなか社員から社長に話しかけるのはハードルが高いと思うのですが、一般社員の方が十河さんを訪ねて社長室に来られることもあるのですか?

十河:
あります!
それこそ昨日、東京に戻ってきた際に、社員と雑談しました。結構フランクな関係を築けているかと思います。社員からは「ちょっと上の先輩」という風に見られてる気がします(笑)。

起業家同士のコミュニティ

Endeavor前田:
社内の文化やコミュニケーションについて伺いましたが、社外ではどのような方々とコミュニケーションを取られているのですか?
十河さんが相談できるお仲間は、どのような方々なのでしょう?

十河:
そうですね、やはり海外でビジネスを展開している起業家の方々とは、コミュニケーションを取ることが多いかもしれません。
起業家としての共通の経験や課題があるため、互いの失敗体験などを共有しながら、有益な情報を得ることができます。同じ市場でビジネスを展開している方々からの知見やアドバイスは非常に重要であり、勇気をもらうことも多いです。
あるある話を聞けたり、「課題感を抱えているのは、自分だけではない」と感じ、少し気が楽になることもあります。特に、海外ビジネスの悩みについて「こんな状況の時、どう対処しますか?」と質問し合うことで、新たな気づきを得ることが多いです。海外でビジネスを展開している日本人はそれほど多くなく、そのためこのようなコミュニティは非常に貴重です。相談できる仲間として、互いに切磋琢磨しながら成長していける関係を大切にしています。

エンデバーを通じて得た経験

Endeavor前田:
やはり同志のコミュニティは起業家にとって非常に重要な役割なのですね。
十河さんはエンデバー起業家としてもご活躍されていますが、エンデバーのグローバルコミュニティを通じて得られたネットワークなどあれば教えていただけますか?

十河:
エンデバージャパンの紹介でニック・ナッシュという投資家と出会いました。アドバイスやフィードバックをいただいたり、ピッチもさせていただきました。ニックは東南アジアでインターネットビジネスを立ち上げて、非常に成功していますし、M&Aの経験も豊富な方なので、彼の知見や経験をシェアしていただいたことはとても勉強になりました。ニックから「十河、M&Aは全ては絶対うまくいかないけれど、失敗してもチャレンジし続けることが重要だ。だから絶対にちょっと失敗したとしても、チャレンジすることをやめるな。やり続けなさい」というアドバイスを受け、素晴らしい方だなと感銘を受けました。エンデバーを通じて、こうした経験豊富な方々と繋がることができるのは、大きな魅力だと思います。

AnyMindの次なる挑戦

Endeavor前田:
既に大成功を納めていらっしゃいますが、次なる目標、挑戦はなんでしょうか?

十河:
そうですね、AnyMindには、まだまだポテンシャルがあると感じています。
特に東南アジアやインドの市場は成長率も高く、伸びしろを感じます。
AnyMindは成長市場の中で、主力事業であるeコマースやマーケティング領域で代表するような会社になっていきたいと思います。
現状は私たちのビジネス規模的に、まだまだ大きな勝負ができる状況ではないんですが、時価総額を10倍、いや100倍にすることを目指しています。
この規模に達することで、アジアの経済成長に寄与し、デジタル分野での影響力を拡大できると考えています。AnyMindには、各国に優れたメンバーが在籍しており、共にアジアを代表する企業を築きたいと考えてくれています。これからも私たちは彼らと共に、eコマース領域でアジア経済にインパクトを与え、アジアでNo1のテクノロジー企業になれるよう挑戦し続けます。

Endeavor前田:
次にベンチマークされてる国はありますか?

十河:
中東では、ドバイを拠点に展開していますが、サウジアラビアも比較的オープンな国ですので、非常に興味深いエリアです。
アジアで言うと、韓国ですね。韓国は言語の壁があるものの、ビジネスの需要は高く、特にクロスボーダーのeコマース領域における、韓国ブランドの東南アジアや日本への進出は増加しています。このような観点から考えると、韓国に拠点を設けて、クロスボーダーのビジネスを展開することで、AnyMindが現在展開している東南アジアのネットワークとシナジーを生むことができると考えています。さらに、オセアニア地域で考えると、オーストラリアも魅力的な市場です。オーストラリアは経済が安定しており、デジタル分野でのビジネス拡大が考えられるため、注目しています。

Endeavor:前田
「経済自体にインパクトを与えたい」と仰っていましたが、具体的にはどういったことを可能にしたいと思われていますか?

十河:
昨今、個人も法人も含めデジタル上でビジネスをやる人たちが増えてきている状況です。デジタルコンテンツを売りたい、コンテンツをマネタイズしたい、という方たちが、それらを実現したいと思った時に、AnyMindの持つ、ソリューションやプロダクトをニーズに合わせて使っている状態を作りたいと思っています。AnyMindを一言で表すと「架け橋」です。将来的にはビジネスを飛ばしたい方々のビジネスの成長の手助けをする際の、ビジネスインフラ的な存在になっていきたいと考えています。
ビジネスを成功させる上で、AnyMindのプロダクトは外せない!という状態を作っていきたいです。



次世代の起業家に向けてメッセージ


Endeavor前田:

最後に、次世代の起業家配信先に対してメッセージをお願いできますでしょうか?

十河:
「グローバル」と聞くと、多くの方々が苦手意識を持たれるのかなと思います。ただ、特に日本初の企業においては、「挑戦すれば、戦える!」というメッセージを伝えたいと思っています。自分自身、アジアに対しては解像度も高く知見も広いと思うのですが、それを踏まえて判断すると、日本の品質は一定の水準で、世界で通用します。特に東南アジアや台湾では、親日家が多く、日本の製品は信頼されているため、需要も存在すると考えています。さらに、人口もまだまだ増えているマーケットですし、「今やらなければ、いつやるのか」と思います。
全くできないと思っている方でも、実際に挑戦してみると長期的に同じビジネスを継続できる可能性もあるかもしれません。とにかく、一歩踏み出して行動することが非常に重要だと思います。

Endeavor前田:
十河さんのように挑戦し、一歩踏み出して行動することで世界をより近くに感じる起業家が増えることを期待したいです!
本日は、ありがとうございました。


★今回、初めて対面で十河さんにお会いしたのですが、ソフトで爽やかな雰囲気の中にも力強さを感じる素敵な方でした。そんな十河さんのオフィスはなんと六本木ヒルズの上層階!とってもおしゃれな環境で働くスタッフの方々もキラキラと輝いて、本当に場所も人もオープンな空間でした。

<プロフィール>
十河宏輔(Kosuke Sogo)
1987年香川県生まれ。
2016年シンガポールにてAnyMind Groupを創業。横断的なデータ活用を軸に、商品開発、生産、EC、物流、マーケティングまで、ブランドビジネス全体の一気通貫支援事業をアジア13ヵ国・地域19拠点で展開する同社の成長を牽引。
エンデバー・アントレプレナー、Forbes JAPAN誌「日本の起業家ランキング2022」TOP10など、国内外で複数の表彰歴を持つ。前職の株式会社マイクロアドでは最年少取締役としてアジア全域におけるビジネス拡大に貢献。




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