【感想】for elise ~エリーゼのために~┊陰鬱な描写が生々しい狂気の鬱ゲー
今回紹介するのは、『さよならを教えて』など鬱ゲーと名高い作品を世に送り出したCRAFTWORKの処女作『for elise ~エリーゼのために~』。
プレミア化しているし、そもそも動作するか分からないので入手は難しそう…と半ば諦めていたんですが、数年前に公式から最新OS対応でDL販売してくれたおかげでようやくプレイすることができました。
感謝…っ! 圧倒的感謝……っ!
【作品概要】
あらすじ
ゲームシステム
「見る」「話す」「移動する」などのコマンドを選択して進行するコマンド総当たり型のアドベンチャーゲームです。
進行でつまずくことはないと思いますが、ルート分岐するポイントが少し分かりづらいかも。
主人公の名前は名字のみ変更可能です。(デフォルトでは「日置」)
プレイ時間など
◯ 主人公の扱いに胸が苦しくなる
主人公は零細企業に勤めるうだつが上がらない営業マンで、根暗で女性経験無しの童貞、コミュニケーション能力も低く社内で肩身が狭い思いをしている——いわゆる、弱者男性。
そんな主人公が同僚たちに馬鹿にされ、上司に罵られる描写が容赦なく描かれています。
そんな主人公が出会う、女性たち。これが人生の転機になるのかと期待を抱くも、そんな都合の良いことが起こるはずもなく。
女性からの酷い扱いで更に精神を病んでいき、ヒロインたちに対して加虐的な妄想を抱くようになっていきます。
今作のHシーンはその妄想が過半数。内容としては、床を舐めさせたり、肉便器化したり、性器に煙草を押し付けたり——と陵辱色強めのものばかり。
女性からの酷い扱い。簡単に言うと、付き合っていたはずのヒロインは別の目的があって主人公に色目を使ってきて、そのことを問い詰めると「アンタみたいな冴えない男を好きになるわけがない」とボロクソに貶され散々利用された挙げ句捨てられて、裏では陰口を叩かれる。
エロゲのヒロインとは思えない発言ばかりで、ある意味リアリティのある女性像なのだけど……性格が終わってる女が多すぎるんですよね……。
主人公自身の言動や行動にも悪いところはあるものの、こんな仕打ちを受けたら精神も病むよな、と同情してしまった。
自分含め、このゲームに登場するキャラクターを好きになるプレイヤーはほとんどいないはず。そのくらい醜悪で一癖も二癖もある登場人物ばかりでした。
ちなみに今作、真澄と泉の2ルートがあるんですがどちらも同じくらい胸糞悪いです。泉の方は出会った当初からクズっぽく描かれていたので、絶望感は真澄の方が強いかもしれない。
◯ じわじわと狂気に染まっていく様の演出
ゲーム内の日付を跨ぐ毎に上記のような女性の生首CGが全面に映し出されるのですが、最初は目を閉じていたはずの女性が徐々に開眼していき、主人公の精神がじわじわと狂気に染まっていく様を表現している演出が印象的。
加虐的な妄想のトリガーとなる頭痛も日に日に頻度が増してきて、現実と妄想の境目が曖昧になっていく様子が伝わってきました。
そして迎える結末は——本当に救いがなかった。
このモノローグと生首のCGはしばらく忘れられなそう。
具体的な描写ないのが余計に想像を掻き立てられます。
【まとめ】
評価:★★★☆☆(69点)
最初から最後まで救いがない鬱ゲー。
典型的な弱者男性が職場で罵られ、ヒロインたちには悪口を言われまくった挙げ句に利用されて裏切られて。エロゲに癒やしを求めたプレイヤーを不快にする描写の数々が今作を鬱ゲーたらしめる所以だと思います。
感情移入できなかったとしても、読んでいて気持ちがいいものではないのも確か。
かなり尖った作品ですが、今作の持つ独特な雰囲気は評価したいところ。「エリーゼのために」を不協和音で奏でるとあんなに不気味になるんだね。
ちなみに、シナリオライター直々の解説が魚拓で残されていたのでプレイ後に読むと更に理解が深まると思います。
決して内容が面白いとは言えませんが、じわじわと胃が痛くなるような鬱ゲーを求めている人にはおすすめ。
人によっては強いストレスを感じてしまう描写もあるので、プレイする際はご注意を。
何はともあれ、プレ値がついていたエロゲを令和の時代に安価で入手、プレイできる機会を与えてくれたメーカー様に圧倒的感謝!