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コロナ渦だからこそリアルな学びを−MORIUMIUSとのオンライン課外授業①

こんにちは、広報担当のシロです。
まだまだ収束の見えないコロナウイルス感染症。
エンカレッジ各教室でも、人数制限や、オンラインでの学習支援等、安全に学習できる環境を模索する日々が続いています。
その中、コロナ渦だからこそできることはないかと考え、「オンライン課外授業」プロジェクトを企画。
宮城県石巻・雄勝にある、こどもの複合体験施設MORIUMIUSと一緒に、「食の循環を学ぶ」をテーマに、昨年9月からスタートしています。
今回は、このプロジェクト担当の曽根原さんより、立ち上げのきっかけを伺いました。


パラダイスでなかった沖縄

初めまして、曽根原です。
現在、エンカレッジの運営する「若葉こうさく室」というレンタルスペース兼シェアオフィスの室長を担当しながら、沖縄県の子どもたちへ多様な学びの機会を企画・実施しています。


縁あって沖縄に来て、そしてエンカレッジと関わってもうすぐ2年が経ちます。
それまで私にとっての沖縄はパラダイス!しかし暮らしてみると、全然違う印象を受けました。
アメリカや日本に翻弄されてきた歴史。日本でありながら、様々な格差がある離島であること。「孤」が多い。決して豊かじゃない食卓・・。
そして、「子どもの3人にひとりが貧困」という、一つの数字に驚愕しました。

3人にひとり、実に全国の倍です。
なぜ沖縄は子どもの貧困率が高いのか。
沖縄は、県民所得、平均所得、ともにワースト1です。最低賃金は全国で一番低く、若年層の失業率も高い。コンビニのおにぎりの価格は全国一緒なので、すなわち生活コストが割高なのです。
車社会で、維持費もかかる。子どもの教育費など捻出できるわけもなく、高等教育などを受けるチャンスもなくなり、高収入で働けるチャンスも減る。さらに、若年出産や非婚出産、シングルマザー率も高い。
つまり、貧困が貧困を生む構造になっているのです。

経済的に困難を抱える子どもを生み出さないために、自治体では、子どもとその子どもを取り巻く環境に対して様々な対策を行っています。また県内のNPO法人も、生活や学習、食事の支援を行っています。
エンカレッジも、学習支援を中心に、子どもたちの自己肯定感を向上させるための様々な取り組みを行っています。
関わる中で、学力をあげることも大切ですが、子どもたちが、エンカレッジを安心で安全な居場所と思ってくれること=心の支援が何よりと思っています。


コロナ渦だからこその学びを

その中、コロナウイルス感染症が拡大。ここでも情報格差が起こりました。いろんな動きが止まり、観光に依存していた県民は、経済的に困難な状況に陥っている。
だからといって、子どもの学びを止めるわけにはいかない。

春休み中に顕在化した緊急事態宣言による外出自粛で、エンカレッジの子どもたちは教室に行けなくなりました。
エンカレッジ各教室、オンラインでの学習支援ができるように整備し、そしてありがたいことに約1000人の大学生が無料でオンラインでの家庭教師を行ってくれました。

しかし緊急事態宣言が長引く中、子どもたちの閉塞感は加速していく。何か新しい、コロナ渦だからこそできることはないかと思い、「オンライン課外授業」を企画しました。
この授業のポイントは、「声を発したり、体を動かしたい」「普段会うことのない著名な講師に会いたい」「参加した皆で一体感を持ちたい」に応えること。

初回は音楽家の奏万里子さんを講師に迎え、3回シリーズで、「みんなで歌をつくろう」授業を実施しました。
リクエストした曲を即興で弾く万里子さんの絶対音感にびっくりする子どもたち。
画面越しでも、真剣に万里子さんの奏でる音や声を聞いて、楽しんで、歌って、踊って。
そしてみんなのコトバや想いがつまった「みんなの歌」ができました!

最後は「今度はリアルに会おうね」と約束。コロナは普通にあった日常を壊したけど、新しいことも連れてきてくれたんだと実感した時間でした。


「美味しい」という体験を子どもたちに

経済的に困難を抱える子どもたちの食は、決して豊かなものではありません。
家の大人たちは働いているから、忙しいから、時間がない。スーパーのお惣菜など出来合いのもので済ませることも多い。
一人で食事をする子どもたちも多い。
「美味しい」、という体験が少ないのではないかと思いました。

そこでオンライン課外授業の実験として、今度は「モリウミアスの料理プログラム」を実施しました。
宮城県石巻・雄勝にある、子どもの複合体験施設MORIUMIUS。
漁師町の雄勝の自然やそこに暮らす人たちと、国内外から集まってくる子どもたちがサステナブルな暮らしの体験を行う施設です。

しかしコロナ渦で、施設へ子どもたちを集めることができない。そして漁師たちも海産物を卸すことができない。
そんな中、いち早くオンラインで料理プログラムを始めていました。
雄勝から送られてきた海産物を手に、画面越しのモリウミアススタッフと一緒に、海産物それぞれの構造を教わりながら調理し、最後はみんなで一緒に「いただきます」をする、というプログラム。
一方的でなく、対話ができ、個人に向けての温もりがありました。

2020年7月、「タコのカルパッチョ」を作るプログラムを実施しました。
子どもたちはエンカレッジの運営する若葉こうさく室で、調理にチャレンジしました。
画面越しに初めて会う、東北のモリウミアススタッフと、世界パスタ選手権で初代チャンピオンになった山田剛嗣シェフ。
目の前には東北から送られてきた蛸。ほぼ初めて触る包丁。
そしてカルパッチョという聞いたことがない料理名。

最初は緊張していたエンカレッジの子どもたちも、同じもの(蛸)を手にする共有感や、自分の手でさばいたことの達成感、画面越しに「よくできてるよ」と褒められる嬉しさ・・。どんどん表情が変わっていきました。
ドレッシングづくりでは、自分好みにアレンジする子も。

そして最後はみんなで「いただきます」。
半分食べて、手が止まった女の子。「もう食べないの?」と聞いたら、「お母さんに持っていきたい」と小声で言いました。


子どもたちが自信を持つために

コロナ渦だからこそ、オンラインとリアルを組み合わせたプログラムを実施したいと思いました。
家⇄学校⇄エンカレッジ(居場所)から、少し外の世界へ連れていきたいなと。違う土地だったり、なかなか会うことのできない人だったり、初めて見るものだったり。
単発でなく、継続的に実施したい。そして達成感を感じて欲しい。
この経験が、自分への自信だったり、沖縄への誇りになると思いました。

そこで、1年間の「食の循環を学ぶプログラム」をスタートしました。プログラムの提供はMORIUMIUS。
若葉こうさく室の庭を畑にして、エンカレッジの子どもたちと野菜を育てる。稲はバケツで育てる。畑の堆肥は、近隣のカフェから出る生ゴミで作る。
「食の循環」を、子どもたちがリアルに体験し、学ぶプログラムです。

このプログラムへ、クラウドファンディングを通じて多くの皆様に応援いただきました。
おかげさまで、子どもたちへより豊かな体験・学びを提供することができています。

子どもたちが、豊かな体験を通して、自分たちの未来を作り出し、自らの足で歩み出せるよう、しなやかにたくましくなってくれたらいいなと思っています。(続)


次回は、実際に「食の循環を学ぶプログラム」の内容や、参加している子どもたちの様子について、引き続き曽根原さんにお話を伺っていきます。



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