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絵を描くこと

先日、油絵を1点友人に納品した。ずっと待たせてしまっていて申し訳ないなぁと思いつつも、家に飾ってもらった写真を見てふーっと肩の荷が降りたような気がした。
仕事でもなんでも、絵を送る時はいつもいつも緊張する。末裸になって突撃している気分だ。何年も絵を描いては人に見せているのに、今回こそもう筆を折ろうと思ってしまうようなことを言われるんじゃないかとビビりまくっている。(実際世の中の人ってすごい優しいし、そんなこと言ったりはしないんだけども)
でも多分それで良いんだと思う。良くも悪くも、そうならないと自分の血肉にならないから。

今回、本当に久しぶりに油絵を完成させて作品作りの感覚がちょっと違ったものになっていた。昔は祈るような気持ちでキャンバスに向き合い、山を登るために岩肌に杭を打って進み、登り切った先に完成があるような感じだったが、今回はボートを漕ぎ出して水の温度を確かめたり、あんなところに鳥がいるなと思ったり、そんなことをしているうちに対岸についたような完成だった。
単純に体力がなくなっただけな気もする。でも自分の今の体力で渡り切れることがわかって、いつでも漕ぎ出せるなと小さなワクワクがある。そのことが今すごく嬉しい。

いまだに自分の描く絵は一体なんなのか、全然わかっていない。掴みかけてはスルスルといなくなって、こっちだよあっちだよと気がつくと背後に立っている。自分の絵なのに全然コントロールできない。技術の問題なのか、でも全てコントロールできてしまったら私は絵を描くだろうか。あれよあれよと流れ着いていて、後ろを振り向くと確かに作品は出来上がっている。ずっとそんな感じだ。
急に壮大な話だけど、私も今までの人生もそんな感じだと思っている。よく母に「なるようにしかならない」と言われるけど、本当にそれだなと思う。それが苦しい時もあるし、悔しい時もある。でも最近はそれでいいんだと思う。

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