先の見えない我慢
コロナがまだそんなに騒がれていなかったくらいの2月頃、私は彼に内緒で5月のGWに合わせて彼に会いに行くため飛行機を予約し、スクショした予約画面をある日突然、彼にLINEで送りつけた。
「おお!!マジか!!来てくれるの!?」
サプライズ大成功。
それから一緒にホテルの予約をしたり、あれをしたい、これをしたいとネットや旅行雑誌を見ながら楽しみをふくらませて「あと1ヶ月切ったね!!」「早く会いたいね!」なんてウキウキしていたのに。
こんな事態になるなんて...。
私はそろそろ飛行機やホテルのキャンセルをしないと...というギリギリのところまで、ずっと「行くのやめるね」と彼に切り出せずにいた。
自分が保菌しているかもしれない、大事な彼に移してしまうかもしれない、まわりの人に迷惑を掛けるかもしれない。
そう考えて自分の中では「諦めよう」と決意は固まっていたものの、ただでさえなかなか会えない遠距離恋愛なのに、コロナというイレギュラーな理由で会えないことへのやり場の無いイラ立ちがあった。
4月も中旬に差し掛かり、私はようやく意を決して彼に電話をしコロナの話題を切り出した。
「だから...今回は...」
このときも「行くのやめるね」の言葉が出てこなかったけど、察した彼は
「そうだな。こんな状況で会うわけにいかないよな。俺もちょうどこの話しないとって思ってたんだ。nagomiが移動中に移るんじゃないかとか、逆に俺がnagomiに移す可能性だってあるし色々と心配だから...。残念だけど今回はやめようか。」
コロナなんかのせいで「うん、やめる」って返事をすることが悔しいやら、悲しいやら、認めたくないやら、なんとも言えない複雑な感情で、私は返事ができず言葉に詰まって無言になってしまった。
変な空気になり彼も黙ってしまい、しばらく沈黙が続いたあとに彼が「大丈夫?」と続けた。
私はそのひと言でずっと我慢していた糸が切れ
「大丈夫じゃない...行くのやめるって言いたくない!!!会いたいのに!!!」
と年甲斐もなく子供みたいに、おいおい声をあげて泣いてしまった。
電話口で泣かれるなんて絶対困るに決まってるから、遠距離の間は寂しくても何があっても絶対に泣かないって決めてたのに。
それでも彼は困るどころか
「こんなことで会えなくなるのは俺だって辛いよ...。どこに連れて行こうとかすごい考えてたしさ。でも、不謹慎かもしれないけど俺のことで泣いてくれて嬉しい。こんなに想われてるなんて幸せ者だよ。nagomiのこと、もっと好きになった。一生会えなくなるわけじゃないんだし、次会ったら思う存分楽しんで、いっぱいうまいもん食おう!だからもう泣かないで。」
となぐさめてくれて、この言葉で今までのモヤモヤしていた気持ちが嘘みたいに一気に無くなった。
大切な人からの言葉って本当に偉大。
でも「やめる」と言うのはやっぱり悔しかったから「やめる、じゃなくて、また今度だね...」と最後の悪あがき。
いつ収束するのか先が見えないけど、必ず会えると信じて今は自分磨きでもしようと決めた。
nagomi*