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桜に思う


    今年は桜の開花が1週間から2週間ほど、例年より早かったのです。
そのおかげか、約1ヶ月間、桜をあちこちで楽しませてもらったのですが、枝がしのる(枝がしなるが正しい使い方。『しのる』は北海道の方言)ほどにたわわに花を重ねた八重桜が今年最後の桜になるのでしょう。ピンクが鮮やかで、ついつい目を奪われてしまいます。

桜というと、「おはん」や「生きて行く私」などの作品で知られる作家の宇野千代さんに思いを馳せます。
小説家として、また和服デザイナーとして、事業家として、明治30年生まれの女性としては、世間からはみ出て活躍された女性ですが。
現在もハンカチやメガネケース、ストールなどに、宇野千代さんデザインの桜がちりばめられた品があります。
宇野千代さんは、よほど桜が好きだったようで、和服も桜モチーフの作品が多いように思います。
ワァーッと咲いて、一気に散る、そして葉桜になり、それはそれで美しい景色です。
さっと無言で散る潔さが、宇野千代さんは好きだったのではと想像しますが。

結婚して、しばらくの間、札幌に住んでいたのですね。
小説を書き、東京に行き、そこで新しい恋をして、さっさと夫とは別れる。
銀行マンだった夫さんには、理解不能の女性だったに違いありません。

それに終わらず、宇野千代さんは生涯に沢山の恋をして、大概は捨てられて、
ただ、頓着しないのですね。
終ったわ、私の恋は終った、、さあ、生きなければ、私は生きて行くのよ!と、後ろを振り返ることもなく、前へ前へと進む。
次の恋に向けて。

桜にそっくりです。

明治30年、山口生まれの女性が、結婚して遠く離れた北海道まで行くのですから、なかなか、なかなか。そして、東京へ。

札幌の中心部から少しだけ東に行った所に住んでいらしたらしいのですが、その場所に実際に行ってみて、まったくイメージはわきませんでした。

札幌はトウモロコシが美味しい土地です。宇野千代さんは、市場でトウモロコシを買ってきて、茹でてザルにあげて、食べてみるとその美味しさに大ファンになったのでしょう。

毎日のように、トウモロコシを沢山買ってきて、茹でてザルにあげておく。
ご飯代わりに食べていたとか。

私もトウモロコシ大好きなので、トウモロコシについて書かれてあった頁はよく覚えています。竹で編んだザルに茹でたトウモロコシを入れて、布巾をかけておく。
1本食べて、また、つい手が出る。
お腹はいっぱいになるので、
ご主人の夕飯の支度を忘れてしまう。
こんなに美味しいトウモロコシがあるのですから、ご飯は他にいらないでしょうと、あっさり割りきってしまう性分も、可笑しく、また、トウモロコシ好きの私には、よーく、理解出来ることなのですね。

ただ、
山口にはない、こちらには、濃い桜色のエゾヤマザクラがあるのですが、それについては、触れていないので、
札幌の桜時期には、宇野千代さんは札幌にはいなかったのかもしれないと思うよりないのですが。

日本人の女性には、必ず大なり小なり、その人なりの桜景色があるそうですから、宇野千代さんデザインの桜を見る限りは、
ソメイヨシノが宇野千代さんの桜景色だったのだろうなぁと想像します。

薄桃色、さくら貝のように透き通るようなピンク色の桜の花弁。

桜さん、また来年ですね、また来年宜しく。