聴こえない人のための音楽講座2回目
昨年、聴覚支援学校の音楽科の先生をお招きして、聴こえない人のための音楽講座を初めて実施した。
同じ先生に一年ぶりに来ていただき、初めての方や2回目の方を対象としたレクチャーをしていただいた。
参加者12名。
まずは音楽の基礎的な知識について。音程や音の大小、音楽の流れを視覚的に表現しながら、楽譜の仕組みを解説。
先生が右手で手話/キューサイン/指文字を表し、左手でリズムとテンポを表すテクニックは何度見ても、驚異的。
先生ご自身のYoutube動画を映しながらのピアノ実演では、ピアノに直に触れて響きを体感したり、内部のハンマーの動きを覗き込んでみたりした。
そして昨年も教わったダンスの4,8,16のルールをおさらいして、流行りのアニメダンスをみんなで踊ってみた。
動きを目で追うのは結構忙しかったが、聴こえない仲間同士、出来不出来を気にすることなく身体を動かすことができた。
それから和太鼓リズムゲームを体験。楽曲のリズムに合わせてコントローラーを押すのを見守る側にも、熱が入る。
先生が教えた子ども達はゲーム感覚でリズム感を身に付け、先生よりもゲームのスコアを伸ばす子もいるとのこと。
「いわゆる明るい音楽、暗い音楽」とはどういうものなのか。みんなで思いつく曲名を挙げて、どちらなのかを教えていただいた。
西城秀樹の「ヤングマン(YMCA)」は?
「めちゃくちゃ明るい。」
尾崎豊の「15の夜」は?
意外や、「明るい。」
各国の国歌なども出てきた。
同じ曲をピアノで、「楽譜を単に音にして弾いた場合」「感情を込めて丁寧に弾いた場合」「怒りを込めてみた場合」と様々な弾き方をしていただいた。
明るい言葉の歌詞だから明るい曲というわけではない。
音と音の隙間の長さを微妙に調節したり、打鍵の強さを変えたりすることで、明るさや暗さが表現されるらしい。
最後に、「自分にとっての音楽」を順番に語り、フリートーク。
20代から60代まで幅広い年代の方が集まり、デフファミリーや聴者の家庭、手話が禁止されていた時代の聾学校、聴覚支援学校、地域の学校など、育った環境は様々であった。
子ども時代、音楽とどんなふうに出会うことができたかが、その後の音楽体験に大きく影響していることを改めて感じる。
音楽の授業で主体的に味わうことができないまま残念な成績をもらい、音楽との関わりを深めることがないまま大人になったという方。
背中を押してもらいながらリズム感を学び、今も音楽ライブへ行くという方。
自ら楽器を楽しみ、演奏している方。
予定していた二時間はあっという間に過ぎ、会場が使用できるギリギリの時間まで話は尽きず。
終わってからも場所を移して、お茶を飲みながら話の続き。
ゲームセンターの「太鼓の達人」の楽しみ方、
「高いけれど、お勧め」だという映画館の音響体感シートの体験談、
事前に音楽を詳しく調べてからアイススケートのショーを鑑賞し、より深く味わうという話など、
やってみようかなと思うことが次々と出てくる。
「音楽の理論を教わることで、どうやって味わったらよいのかがわかる。興味が広がった。」
「それを教えてもらうことなく、わからないままだと音楽が好きなのか、嫌いなのかもわからない。」
という発言に深くうなずき、「皆さんから教えてもらうことが多かった。」と語る先生。
先生のこれからの音楽の授業も、私達の人生も、より味わい深いものになっていくに違いないと実感したひとときだった。