通過する夏に目を細めて
喫煙所の少し手前でタバコを吸う大人。必要以上に近くを通るおじさん。わざと大声であちー!って叫ぶ若者。くだらん街でくだらん愛を語っていた私。この街が大好きで大嫌いだったんだね。君がここでくれたものってなんだった?愛より愛憎みたいな歪でぶん殴ってくるから逃げられなかったんだね。等しく並ぶ箱を見上げて苦い顔出来る私でよかった。ちょっと離れていた方が素直になれるなら会いたいなーって気持ちだけ抱きしめていようかな、無理かな、無理だね私には。夜の街に夢も希望もないよまったく。新品のタバコたちがヘンゼルとグレーテルみたいな顔しているネオン街をケラケラと笑いながら歩くとき、君だけが私の脳裏に焼き付いて離れない背徳感で超生きている。左薬指の爪が遠くで息をするから破滅させることも出来ずに、砂漠の中のオアシスみたいなそれに恍惚としているのが悔しい。夏の海が汚くてよかった。キラキラしすぎているものは簡単に私を飲み込むからじっとりと流れる汗が太陽光を纏い輝くくらいのほうが私には案外綺麗に見えちゃったりする。金木犀が咲く頃には溶けてなくなる君でも寧ろその方が夏のせいに出来るよね。
ねえ、全部、夏のせいにしてみない?
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