彼女のさりげない優しさが好きだ。
人魚みたいと目を輝かせるその子に、
彼女は少しだけ大げさに正解!と答えた。
彼女のさりげない優しさが好きだ。
ひとつひとつの返事にうんうんと相槌を打つところも、
子どもの目線に合わせてしゃがむところも、
小さな手が耳飾りに触れるままにしてあげる、そんなところも。
「きれい」
「でしょう?」
本当に嬉しそうに話すから、こちらまで頬が緩む。
よく気が付いたね。
屈んで小さな頭をなでると、ちいさなおませさんは照れたような顔をした。
「なんたって贈り主だもんね」
おませさんの隣で見上げる悪戯っぽい視線に髪をくしゃりとしてやる。
彼女がくすくす笑うたび、耳元の人魚が泳ぐように揺れた。
written by Ayaka Watanabe
EMUO (エムオー)
Mai Oka
illustrated by 田村