②
ねがいごと。
そう小さく呟いたあの女の人の表情が忘れられない。
スキニーにスニーカーの、シンプルな格好の人だった。
立ち止まってから商品を手に取って持ってくるまでもあっという間だったから、きっと考え方もシンプルなんだと思う。
決断力と行動力のある女性は格好いい。
わたしもかっこよくなりたぁーい。
誰もいない部屋でちょっぴり大きめの独り言。
両耳の『リース』を外す。
後ろ向きにぼふんと座り込んで足をぱたぱたさせたらソファーがきゅ、と軋んだ。
本当はジェルからポリッシュにネイルを替えたい。
ゆるふわロングから大人っぽいショートヘアにして、思い切ったね!とか、すごいじゃん!の言葉が欲しい。
何一つできてないけど。
このたくさんのスパンコールみたいに、形を変えないまま輝けたら良いのに。
あの時、あの人は私を見て綺麗に微笑んだ。
優しい眼差しにどきりとした。
格好良くて綺麗って、なんかずるい、と思った。
まあ私は私、なんだけどさ!
足をもっとぱたぱたさせたら、右足のスリッパがひょーんと飛んでテレビに当たった。
明日はダイヤのスパンコールたちを両方とも右耳に着けよう。
もっと可愛くしてみよう。
右半身だけでも2割増しで綺麗にならないかなと仕様もないことを思った。
Raro 『リース』