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冷たい風がぶわりと吹き上がる。
甘いにおいがじんわり溶けてゆく。
切り揃えられた髪の間から見えるうなじに、短い髪も似合う人だったんだなと思う。
ポッケから引っこ抜いて繋ぎ直した彼女の左手はひんやりとしていた。
もう一枚羽織ってくればよかったね。
そう言うと、君はちょうどいいよと言った。
僕を見上げて、ふふふと可笑しそうに笑った。
右手がきゅ、と握り返される。
ちょうどいいの。
嬉しそうに目を細める僕の大切な人は、桜色の耳飾りと同じくらい赤い顔をしていた。
written by Ayaka Watanabe / エンノシタ
EMUO (エムオー)
オカ マイ
しだれ桜