⑦
フルーツたっぷりのタルトとシュークリームを顔を綻ばせて買っていった女性を見送り、ふぅ、と一息つく。
外もかなり暗くなってきた。
ずっしりしたガラス戸に『CLOSED』の板を引っ掛け、内側から鍵をかける。
明日は定休日だ。
大きなリングに丸いピンクのビーズとお花の詰まったガラスドームの通ったイヤリングは、自宅玄関の左手、靴箱の上のブリキの小皿に置かれている。
親友と愛娘とお揃いで着けている。
ちなみに親友のはピアス。
職業柄、私は店がお休みの日しか着けられないけれど、それはそれでいいなと思っている。
着けるには若すぎると娘に言われたあの日、実はしゅんとした。
だけどすぐ気にしなくなった。
ふふふ、と笑いながら靴を脱いで電気を点ける。
これは惚気だ。
小さい砂糖菓子がたくさん詰まってるみたいだ、なんて、本当に砂糖が吐けそうじゃない?
きっとあの人は何にも考えずにそう言ったんだろうけど。
ヒュゥ、と冷たい風が入って溶けた。
ぱたん、とドアが閉まる。
振り返ってにっこり笑って見上げると、きょとんとした目がこちらを見てくる。
やっぱりね。
なんでもないの、ともう一度にっこり笑って、不思議そうな視線を無視してリビングへと向かう。
ぺたぺたと付いてくる音を背中で感じて、堪らなく愛おしい気持ちになった。
peco 『ジャラビ』シリーズ