#2〜親だってしんどい〜
元通信制高校の職員だった私が、実際に面談で受けた相談や、今後直接問い合わせがあった質問・お悩み事に答えていきます。
是非、これからの対応の参考の一助にしてもらえればと思いますし、そういう考え方もあるんだという気づきになってもらえると幸いです!
2回目となる今回は実は、これほぼ全員がお持ちのお悩みなんですが、保護者の方からすると口に出していうことも憚られる内容だったという案件です。想いのすれ違いから起こる悩み。是非見てみて下さい。
正直、最初この質問というか相談ををいただいた時に、一瞬、間も取りましたし、時間をかけてしっかり話したい内容だと瞬間的に感じました。
何がそうさせたのかと後から考えれば、私はこの質問・相談をすることの出来るこのお母さんに力強さと本気度を感じたからだと思います。子を思うが故の葛藤、そして自分をどうは奮い立たせるか。
「少し飲み物でも飲みながら、一緒に考えましょうか」
こうした会話からスタートしたことを記憶しています。
<ポイント>
現状の再確認
目的と目標、そして手段の目的化?
現状の再確認
これは「何が、このご相談の”核”なのか」というところが大きなポイントになります。
つまり、このお母さんを苦しめているものは何かということです。
それは、お子さん本人でしょうか?
それとも、お子さんが動けなくなっている状況でしょうか?
これ、両方とも違うことにお気づきでしょうか?
お子さん本人が、お母さんを苦しめていることは当然あり得ないですよね。
であれば、日常元気に過ごしているご本人を見ても、苦しむはずです。
そして、お子さんが動けなくなっているという状況に対してというのも、違和感があります。何故ならば、例えば本当に腹痛で動けないとか、骨折をして動けないとかであれば、心配であるとか、不安であるという心理状態になりますが、おそらく「苦しい」という状況にはつながらないものと思います。
ここでポイントになるのは、お母さん自身の中にある
「信念」や「価値観」が苦しめているということなのです。
人には、その時代・環境で変化・左右される信念・価値観があります。
その価値観や信念は間違っているということではないのですが、その考えにとらわれすぎていると、その想いと異なってしまっている状況や言葉・言動に対して、マイナスの感情や違和感を覚えることがあるのです。
例えば今回の場合だと、私は一つ一つ確認をしていく中で、
「お母様の世代では、学校に行くことは”当然”とされていた時代だったと思いますが、やはりそうした考えは、お母様自身もお持ちですか?」
「一生懸命、子育てをされて愛情を注いでこられたお子さんが、同じ年代の子どもたちと、同じように”普通”に生活できていないという状況になるということは想定されていませんでしたよね?」
お話を少し言い換えたり、まとめたりして私からお伝えをした内容です。
実は、ここに既に「価値観」が入っているのです。
「学校に行くことは当然」
「自分の子どもは、他の子と同じように普通に通学できるはず」
この当然・普通が違う状況になっているのです。
それは違和感・そして苦しみの根源になるのです。
ただし、間違ってもここで勘違いをしてはいけないのは、
それぞれが持っている「信念」「価値観」は間違っているということではないということ。
大事なのは、その
「信念」「価値観」は時代や環境とともに変化するということ
そして
多くの人が”違う”「信念」「価値観」を持っているということを知る
それを「相互承認していく」こと
ここを私はこの保護者の方にお話をさせていただきました。
目的と目標、そして目的の手段化?
先程の話をすると、納得とそして、私は厳しいのかもしれない…という自責の念に駆られている様子が垣間見えてきました。
でもこれって、いたって普通なんです。
違いがあるってことに気づくのは、立ち止まる時や冷静になったとき、そして第三者の視点を持てたときが多いので、現場に直面している保護者の方は一番難しい状況の最中にいるのです。
じゃあ、少し次の段階の話に行きましょう。
「『再スタート!』と思えているということは、きっとどこかしらにこうなってほしいという”ねらい”というか、”在りたい姿”みたいなものがあると思うのですが、そこはどうお考えですか?」
「やっぱり元気に毎日、学校に通って、楽しく学校生活を過ごしてほしいです。社会に出ても困らないように、今のうちから生活リズムを整えてほしいです」
ここで、皆さんに少し考えていただきたいのです。
このお母さんの想い、とても明確で、はっきりとしているものなのですが、どう思われましたか?
私は、その時、失礼を承知でお伝えしました。
「お母さん、それもしかしたら、手段の目的化ですね」
そして改めて、もう一度問い直しました。
「改めて同じ質問ですが、お子さんにどのようになってほしいですか?」
そうすると色々な言葉が出てきました。
社会で活躍してほしい。
やりたいことを見つけてほしい。
色々な人と出会ってほしい。
幸せな人生を過ごしてほしい。
もし、今挙がった内容が、保護者の方が望む「目的」なのだとしたら、生活リズムを整えることは、本当に絶対必要なのでしょうか。
※あえてこういう言い方をします。
昼夜逆転している仕事、その中でも活躍されている方、もしくはこれからの働き方が多様性になる時代の中で、規則正しい生活だけが社会に出て困らない要素の一つなのでしょうか?
つまり、本当になりたい姿。あってほしい姿。目的
というものは、見失いがちになり、今目の前にあることを変えていく、挑戦していくことが「目的」にすり替わることがかなりあるという話なのです。
簡単な例で言うと、よく生徒の中に「海外で活躍したい」という目的を掲げ
、そのためにはまず外国語をしゃべれるようになることが必要だ!ということで、本気で「英語検定」に取り組んでくれることがあります。
私は、この取り組み自体は非常に素晴らしいのですが、その子はどうしてもネイティブと話すのが苦手でしたので、たまたま交換留学の形で来校していたフィリピン人の生徒と話すきっかけの場面を設定したのですが、その子は残念ながら参加しませんでした。
理由は、「英検の本番が間近に迫っているから」です。
まさしく、手段の目的化。
本当は、海外で活躍したいの裏側に、色々な人との交流が…という部分があったにもかかわらず、目の前の検定合格という手段が、最重要目的になってしまった瞬間でした。
さて、話は戻りますが、手段の目的化
この話を保護者の方に投げかけたとき、かなり戸惑われていました。
大事なのは、この目的は、自身でゆっくり考えなおす。
立ち止まって見つめなおす。
この時間が必要なのです。そして、少しずつ言語化させていく。
ここで、最後に仕事でもつかえるフレームワークとして、私が応用しているものをご紹介します。やはり職業柄、どうしても言葉を大事にする癖があるので、ここが上手く伝わるかですが、それぞれを明確にしていくことが大事になるというワークです。
「目的」「目標」「達成基準」「遂行方法」※「スモールステップ」
の4項目(と1つの考え方)です。
「目的」は、登山で言う「山の頂上」つまり、ありたい姿です。
ここは正直、定性的な表現でもいいと思います。
「目標」は、その山を登るために、どういうルートを通過するかという「通過地点」ここは少し定量的な設定をいれてもいいかもしれませんね(ただ、達成基準と被る可能性もあり得ます)
「達成基準」は、そのルートをちゃんと通過できたか、通過した記録を誰が見てもわかる(可視化)出来るように”数値化する”ということが大事です。
「遂行方法」は、じゃあその山頂や、通過地点を目指すために、いつまでに誰が、何を準備するのかなど、どのように遂行していくのかを明確にしていくいわばスケジュール感を決めていくことです。
ここにたくさんのスモールステップが入れば、自身のやるべきことが見えてくるはず。ただし、忘れてはいけないのが、「目的」を見失わないこと。
このフレームワークに関しては、改めて「指導の引き出し」の中でもいつか取り扱いたい「目標設定:SMART」でももう一度お話をしたいと思います。
さて、このお母さんはその後、苦しむことは少し減ったというお話をいただきました。
何故か。
「今の目標」は、この子が少しずつ前を向けること
なぜなら「目的」は、最終的な幸せを感じれること
に転換したからだそうです。
保護者の方は、いつも目の前で、そして刹那で変わる状況にすべて対応しなければならないと感じることも多いと思います。
でも少しずつ、1つずつ立ち止まって、手段の目的化に気づいてみませんか?
さて、こうしたお悩み相談、数々の事例もありますので、次々にこうした事例を紹介していければと思います!
さらに、もしご興味があれば、コメント欄でも構いません!
ぜひ一緒に考えていきませんか?
今後ともよろしくお願いします!