若者には「好きにやってごらん」とだけ言いたい
若者へ伝えたいことは、「好きにやってごらん」である。それ以外に言いたいことも、言うべきと思うことも、ない。この言葉しか言えないが、しかしこの言葉だけは強く言いたい。
数年前から、本業の傍らメールカウンセリングを提供している。勉強しているころから薄々思ってはいたが、仕事でカウンセリングをするようになり、この言葉が必要な人が多いことを実感した。
好きにやってダメなら諦めもつくけれど、誰かに言われたとおりにやってダメだったときは、どうしても呪ってしまう。呪えば一時的に胸はすく。でも、呪ったところでその先の人生が生きやすくなるわけではない。呪ってはいけないとは言わない。呪う作業が、呪う時間が必要なときもある。ただ、呪うだけでは辛いままだ。
誰かに責任を預けることが習慣になると、自分の人生を生きる感覚が希薄になる。地に足がついていない人生はひどく不安定で、自分が依拠する誰かや何かの評価を常に気にしなければならなくなる。大海原で、大きな船に身を預けているようなものだ。一見安定しているように見えて、その船がいつ沈むとも限らない。いつ降ろされるかもわからない。向かう先も把握していない。自分で制御や管理できない船に乗っている限り、この不安は拭えない。
その点、自分で船を動かすのは大変だけれど、行きたい方向へ行ける。操舵のコツも、いつどこをメンテナンスすべきかも、だんだんわかってくる。これが「好きにやる」ということ。責任も、反省も、ぜんぶ自分のものにする。誰かにやれと言われたことではなく、自分でやろうと思ったことをやる。誰かにやれと言われたことだったとしても、やるかどうかは自分で決める。これが自覚的にできるようになると、人生は楽しくなるはずだ。
自分のやりたいようにやる。人によっては当たり前に聞こえるかもしれないが、できていない人は決して少なくない。他人の船で生きてきた人はみんな不安そうにしている。それも、自分で選んでそうしたのではない。選択の余地なく、それこそ当たり前のように船に乗せられて、そのままここまで来てしまったのだ。
親をはじめ、周囲の大人の責任も大きいが、そればかりではない。インターネットを介してあらゆる情報が見えるようになった今、拠りどころにできる物差しが多すぎるのだ。そんな中で、あえて自分の好きなようにやるというのは、勇気がいる。あなたが今いる場所によっては、周りの人に気でも触れたかと思われる瞬間だってあるだろう。それでも、好きにやり始めるのは早い方がいい。周りの人が当たり前に乗っている船をあえて降りて、自分のちっぽけな船を漕ぎだすのだ。
好きにやってごらん。
文:市川円
編集:真央
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