急な運動にご用心
普段、運動らしい運動を一切しない。暖かい季節には保育園の送迎や買い物で歩いていたが、寒くなってからは車移動が当たり前になってしまって、いよいよ運動不足が深刻化している。
とはいえ、全く身体を動かしていないわけではない。毎週末、2歳になった息子を連れて近所の公園に行く。公園までの道は車通りが少ないのでそれなりに自由に歩かせるが、ついていく大人は油断できない。車や自転車を避けるため、とっさに抱っこすることもしばしば。しかし、それが運動になっているかというとそうでもない。身体より先に精神的な疲労がたまる。
公園につくと、そこらじゅうを練り歩く彼を見守ったり、すべり台のサポートをしたり、リクエストに応えて地面にアンパンマンを描いたりして帰ってくる。これもやっぱり運動不足解消になるほどの運動ではない。
かろうじて運動不足解消法と言えるものと言えば、「歩くこと」だろうか。
運動は苦手だが歩くのは昔から好きで、以前は通勤や散歩でよく歩いていた。息子が生まれてからはなかなか時間が取れず、保育園の送迎が唯一の歩くチャンスになっている。しかし前述のとおり、ここ最近は寒さに負けて、それすらサボっていた。そこで今回のテーマにあやかって、数週間ぶりに歩くことにした。
さっそく、玄関脇で若干ホコリを被りはじめていたベビーカーを取り出す。久しぶりのベビーカーに、息子はテンションが高い。シートに自らよじ登って着席するほどだ。直近の彼はとくに精神面での成長が著しく、気に食わないことがあると癇癪を起こすようになった。ベビーカーも何かのトリガーになるのではないかと少し警戒していたが、その心配はなさそうだ。
歩き始めるまではおっくうに感じていたが、歩き出すと風や日差しが気持ちよく、めんどうだった気持ちもすぐに忘れる。道中、息子も旺盛に声をあげ、楽しんでいる様子だ。往復3、4キロほどの道のりを歩き終えて帰宅するころには、すこし汗をかくくらい身体が温まっていた。
やっぱり歩くのはいい、との思いを新たにしつつ、パソコンに向かって仕事をしていると、間もなく背中が痛くなった。この痛みはなじみがある。背筋のハリが原因だ。こうなると座って作業し続けることが難しい。最近は調子がよかったのにどうして。変化といえば、今朝歩いたことくらいである。
さらに日中、激しい睡魔に襲われ、昼寝せずにいられなかった。これも歩いた影響だとしたら、流石に運動不足が過ぎる。さすがにそれはない、と笑い飛ばしたいが、否定しきれないのが怖いところだ。
運動不足のくせに、準備運動もせず体を動かすからこうなる。痛めると、それを治すためにまた運動不足になる。現在の私の運動不足は、この繰り返しでできあがった。もっと軽い運動を習慣化して、徐々に負荷を高めていけばいいのだけれど、普段運動しない人間にはそれがなかなか難しい。
それなら部屋の中で運動できないか、と考えた。インドアな私は、きっとそのほうが習慣化しやすい。
でも、室内で運動するのもけっこう難しい。息子とリビングで追いかけっこしても、さすがに大人の息が上がるほどの効果は望めない。筋トレなら短時間で効果が見込めるが、子守り中は難しい。変わった動きをすると、息子が寄ってきてしまうのだ。腕立てをすれば背中に乗り、スクワットをすると股間の位置に来る。その状態で勢いよくしゃがめば大惨事だ。激しい運動をともなうダンスのようなトレーニングは言わずもがな、息子を蹴り飛ばしそうでとても危ない。
しかしできないできないとばかりも言っていられない。子どもがもっと大きくなれば、一緒に動く機会も増えるだろう。運動会で張り切って怪我をするお父さんにはなりたくない。
当面の目標は、ちょっと歩いたくらいで背中を痛めないように、保育園の送迎で車に頼らないことである。
……なんて書きながら、今朝、さっそく車で送ってきた。運動不足解消はまだまだ遠そうだ。
文:市川円
編集:真央
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