フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか(堀内都喜子 著、ポプラ新書、2020年)
フィンランドが幸福度の高い国といわれる理由は、「人」を尊重するルールや文化にある。
特に日本特べると、法律で決められていることに、休みに関する部分が多く、半強制的に効率化を求める必要があるからこそ、GDPも高いものになっていると感じる。
歴史的な背景や、地理的に環境が過酷な部分から起因する国民性は、日本と近しいものがあるからこそ、フィンランドか学ぶところは多い。
筆者と同じように、日本の法規制の中で真似ができるところは取り入れていきたいと感じさせる一冊だった。
読書メモ
フィンランドはなぜ幸福度1位なのか
「身近な自然」(20)
⇨地理的なこと以上に「ゆとり」の意味合いが含まれる
「選択の自由度、これが私がフィンランドに関わって、よく感じていることである」「選択肢が多くあるというよりも、選択を限定する要素が少ない」(25)
フィンランドも初めから順調ではなかった
⇨「フィンランドは100年前まではスウェーデンとロシアに支配され、ほとんどの人が小規模な農業や森林業に従事する、ヨーロッパの中でもかなり貧しい国の一つであった」(37)
1953年、ヘルシンキで夏のオリンピック開催
1973年、ヨーロッパ共同体と自由貿易協定を締結
1995年、EU加盟
それは、特にワークライフバランスや「ゆとり」の部分にある(43)
フィンランドの効率のいい働き方
仕事を終えて、次の仕事に行くまでに11時間のインターバル(仕事をしない時間)を設けることや、週に1度は35時間の休憩をとることも法律で決められている。(49)
「大変な仕事を簡単そうにやっていたり、効率よくこなしサーッと帰るのが格好よく、できる大人の証拠」(50)
今のような就労時間や場所に柔軟性が生まれたのは、1996年に施行された就労時間に関する法律の影響が大きい。
就労時間の半分は、働く時間も場所も、従業員と雇用主が相談して自由に決定することができるようになるのだ。(52)
⇨例:美容院にいてもメールの読み書きや調べ物はできるため、仕事の時間として認めてもらう。
「タウコユンパ」(タウコは休憩、ユンパはエクササイズの意味)
5〜10分程度自主的にピラティスなどのエクササイズを実施、強制的ではない
カハヴィタウコ=コーヒー休憩
コーヒー休憩の時間をとることは、雇用者が労働者に対して保障しなければならない法律上の決まりである。
反対に、お昼休憩はそれほど重要視されていない(30分程度のところが多い)
仕事力を高める活動は法律でも決められている。(69)
必ずしも会うことを重要視しない(76)
フィンランドの仕事文化に欠かせない、ウェルビーイングと効率の追求
ウェルビーイング・・・身体的、精神的、社会的に良好な状態であること
「人件費が高く、休みや残業なしを考慮しなければならないフィンランドでは、従来以上に、生産性の向上、業務の効率化を求められるようになっている。〜移り変わりが激しい現代では、〜イノベーション、創造性や革新性が求められる。それには社員や職場のウェルビーイングが充実していることが必須」(78)
⇨文化やルールなどによって、必要性が高いからこその働きやすさ
フィンランドの心地いい働き方
「職場でのオープンな関係性」(86)
⇨社会や組織においてフラットで上下関係があまりない文化で、効率性につながっていいる。
相手を信頼して任せてみる
「性別にこだわらず、年齢が若くとも、勤続年数が少なくとも、ともかく相手を信頼して任せてみる」(93)
フィンランドの上手なや休み方
フィンランド人が平日にスポーツをしている時間は世界でもトップクラス(112)
⇨会社が趣味やスポーツを支援する
・スポーツ・文化チケット(1人あたり年1.5万円)
・各自治体に生涯学習の学校がある
企業にとってみればウェルビーイングの向上のため(114)
睡眠は7時間半以上(117)、土曜日はサウナの日(125)
サウナはお風呂の代わりのようなイメージで、9割以上の人がサウナを楽しむ
夏休みは1ヶ月
農業中心だったフィンランドでは、冬に必要な大量の干し草を7月に準備する必要があった。
7月は1年の中で最も日照時間も長く、気温も高い。(137)
「夏は何も進まない。大事なことは決めない。連絡も取れなくて当然」と最初から割り切ってしまえば、何とかなるものである。
面白いのは、緊急の場合は私の携帯に連絡してね、という人がほとんどいないことだ。(138)
フィンランドの法律によれば、夏季休暇は12勤務日以上の連続した休みを与えなければならないとなっている。(140)
夏は代わりにインターン生が戦力となる。
フィンランドにいると「人間、休みは必要」と皆が理解しているのがとても心地いい。(156-157)
フィンランドのシンプルな考え方
SISU:困難に耐えうる力、努力して諦めずにやり遂げる力、不屈の精神、ガッツ(160)
フィンランドの貪欲な学び方
「コップに砂をいっぱいに入れて指を突っ込んでみて。指を抜いたらどうなる?穴ができるのは一瞬。あっという間穴が埋まってしまう。それは組織と同じなんだよ。自分が抜けても、必ず周りがその穴を埋めてくれる。だから安心して抜けていいんだよ」(217)
会社や国がワーキングライフを重視し、一人ひとりを考える時代になってきた今、働く側も自分自身の生き方を大切にする時代が来ている。(218)