日向坂46のライブに初めて行った話
一期一会という言葉を知っているか?
それが偶然すれ違いになるか、それとも運命の出会いになるか、全ては己にかかっている。
私の愛する森見登美彦先生の著作、夜は短し歩けよ乙女の一節。
日々の瞬間瞬間に運命を運命成し得る可能性は常に内在する。
あの時スルーした「あなたへのおすすめ」が、選ばれなかった蕎麦屋が、もしかすると運命成し得たかもしれない。
逆に、おすすめされるがまま見て胸に刻まれたボーンアイデンティティが、選ばれたつるとんたんこそが、それこそ運命だったんだろう。美味しかったあ。
つまり、全ては自分次第。
私は12/26、そんな一期一会に導かれるままに、日向坂46という新たな扉の門を叩いた。
ライブ前の会場から新体験の連続だった。
普段行くバンドのライブとは全く違う熱気で漂っていた。
それぞれの推しの色が混在しカラフルに彩られた東京ドーム。ピンク、赤、青、緑、バッジだらけのリュック、あちらこちらにいるアクスタ、老若男女、思っていたよりも、うんと様々なおひさま…
色は違えど、年齢性別は違えど、愛する人は違えど、応援する熱意は違えど、思いを一つにした百花繚乱の同志たちが作り出す熱気は今までに見たことのない絶景だった。
18:00
君はハニーデューから幕を開けた。
開幕から脳天に拳撃ち抜かれた。
驚いた。あの人数で隊列、移動、ジャンプのタイミングが一切合切乱れない。
大人数、一曲目、千秋楽、自分たちを待っている4万5千人の客、そんな簡単ではない条件下で俺よりも三つも六つも九つも年下の女の子たちが堂々と完壁な輝きを放っている。
イントロとサビでその右ストレートをもろに喰らってしまい完全に虜になった。
過去数回アイドルのライブに行ったことのある経験上、コールアンドレスポンスよりもファンサをもらうことに重きを置く人が多く、そしてその重要性もよくわかっている。だからそこまでコールアンドレスポンスには期待していなかった。
杞憂だった。
鳴り響く野太い魂の叫び。
二回席にも関わらず全力で腹の底から、あちらこちらから声を出していた。
私はというと予習してきたのもあり、そしてtakuya∞に喉を鍛えられたということも良く作用し全力でコールを楽しむことができた。おひさまたちよ、crewは脊髄反射でどんなコールもできるから任せてほしい。
そもそも、日向坂のコールに限ったことなのかはわからないが、割と覚えやすくその場でもなんとなくついていけるコールが多いのも有り難かった。ただ、ブルーベリー&ラズベリーでペンライト白にすることを知らなかったことだけは猛省している…すまん…
ライブ中盤、見たことない魔物。
盛り上がりの異様さ、コールの楽しさは述べるまでもない。
私が感動したのは曲の導入での藤嶌果歩ちゃんのMC。
おそらく彼女の持ち合わせる喉のキャパシティ150%を解放して会場を掌握していた。
あんなにも小さな体で、決して会場を驚かせるような声量でもない可愛らしい藤嶌ちゃんがその瞬間、全ての観客の目線を心ごと奪い去っていた。
その瞬間にこそ、アイドルの真の姿を見たように思う。
情熱、闘志、苦悩、葛藤。人間臭さや醜い部分全てを隠し、綺麗で美しい幻想だけを見せる彼女たちが、見せれる幻想全てを出し切ったその先に見せる、情熱でも幻想でも言い表せない、そこに立つ藤嶌果歩ちゃん、それこそまさしく真のアイドルなのかもしれない。そう思ってしまうほど圧倒的だった。
もちろん全力で声援とコールを送ったが揺さぶられた心とその衝撃で夢見心地で曲が終わってしまった。
そしてそれだけでは終わらなかった。
ライブ直前に放送された日向坂で会いましょうで予告されていた通り、オードリー春日が登場した。
オードリーの東京ドームライブの抽選に全て外れ、映画館で鑑賞した私にとっては日本武道館以来の"ビッグトゥース"との再会。どんなに辛いことがあった週でも、憂鬱なバイトが待っている週でも、嬉しかったことがあった時も、忘れられない別れがあった週もオードリーのラジオがあることは変わらなかった。いつも変わらない二人の話に救われた日は数えきれない。
本来ならば笑うはずの春日の登場で目から水が止まらなかった。笑いも止まらなかった。もうわけがわからなかった。
こんな幸せな初ライブがあっていいのか。
そんな興奮も冷めやらぬまま、次のサプライズが。
春日を交えて行われていたのは日向坂メンバーとのホームラン対決。サインボールを客席に向かってスイングし、何本客席にヒットを打てたかを競うもの。
その春日への配給役を特別ゲストが務めると進行役の松田このちゃんが言う。
周りはザワザワ。「誰だ?」盛り上がっていた。この時、メンバーはラミちゃんと知らされていたらしい。
よく考えたらそんなわけないのだが、正直この時点で私は確信していた。
この期待感を超えられるのはもうあの人しかいないでしょう。
あの時と同じ、自転車で駆けて現れたのは若ちゃん。
映画館で、DVDで、毎週のラジオを聞いて、何度生でオードリーの東京ドームを見れたらと思ったことか。
目の前にいるのは間違いない、オードリーだ。
あの時と同じ、東京ドームに二人がいる。
しかも、あの時とは違い、二人が東京ドームでキャッチボールをしている。
日向坂という運命の可能性は、あの時失った運命の可能性を私に運んできてくれたのだ。
そんな感動のまま迎えたjoyful love。
これまでも、他アーティストのライブで観客と作り出す演出はいくつも見てきたが、この東京ドームで見た虹色のjoyfui loveは最高峰のものだった。
ファンと共に、オードリーと共に、全員が同じ視線を見つめ、全員で未来を創り出す。そんな日向坂を体現したかのような光景はこの先の私の未来にも大きな活力を与えくれた。
何者でもなかった少女たち、何者でもなかった男子高校生たち、そして何者でもない私たちおひさまが作り出した奇跡。
私の推し、くみてんは全てを忘れて幸せになって欲しい、そんな場所にして欲しい、と言っていた。
その言葉以上の、この上ない幸せをもらった。
そしてその幸せは、何者でもない私を煽動する光になる。
暫く忘れていた、諦めていた夢を私は思い出した。まだ口に出せるほどの覚悟は無い。何年かかるかもわからない。それでも、私は前に進めていこうと思う。彼女たちの背中を追って、何者かになるために踠こうと思う。
今夜の奇跡を最終的に奇跡たらしめたのは他でもない、私自身の選択だ。その一期一会の果てで運命の出会いに、日向坂はなってくれた。
私自身の選択で、何者かへと自分自身を進めるしかないのだ。
彼女たちのような光へと私はなれるのだろうか。わからない。だが、光を求めるならば、風を吹かせるしかない。
運命の一期一会に感謝。