コメディとして残酷な史実をこの世に残す [映画 ファーゴ 感想]
72点
事実を忘れさせない、おかしくも残酷なノンフィクション
1987年に実際に起きた事件を題材にしているノンフィクション映画。
車のディラーラーを生業とする主人公が仕事のミスで400ドルの損失を自腹で埋めなければならないところから始まる。
金を捻出できない主人公は、金持ちの義父に目をつける。なんと、同僚のツテで紹介されたゴロツキに妻を誘拐させ、義父に身代金を要求。その身代金をごろつきと折半するという非人道的な策略だ。だが、強盗たちは自分らのミスから関係ない人間を殺めてしまう。そこから悲劇ははじまり…という話。
今作に出てくる非行者の行動は皆が揃って軽薄なのである。なんの戦略も立てずその場その場で超えてはいけない一線を超え続ける。嘘に嘘を重ねていく。
今作の凄みはそんな非行者たちのぶっ飛んだ犯行を嘲笑の対象としてフォーカスする事によりコメディとして成立させているところにある。
そんなわけないだろ!!!笑
いや、銃で撃たれてるんだから!!無理無理!
そんなの見え透いた工作じゃすぐ見つかるて!!
なんてツッコミを入れたくなる場面が度々登場する。中々に笑える。が、これはノンフィクションだ。その事実が、当たり前なのだが、コメディとして飛躍する事なく、終始どこか張り詰めた緊張感を作品に与えている。
また、実際に起きたノンフィクションという点で、見終えた後に後味が悪くなるだけで終わらない様な工夫が見られる。それは、中盤から徐々に明るくコミカルな態度で真摯に善意を持って事件解決に挑む婦警に徐々にフォーカスしていく視点だ。
悪意の真相をもってして物語を締めるのではなく、善意の視線から悪を裁き、悪意の中の悲しみへの同情をも生み出す。ただのノンフィクションで終わらない素晴らしい作品として成り立つ理由なのではないだろうか。