アクティブラーニングの実践1
-海洋学習の可能性-
本年度から小学校で,次年度より中学校で新学習指導要領に基づいた教育が実施される。その中心が「主体的・対話的で深い学び」の視点に立った授業改善,つまり「アクティブラーニング」の導入である。
生涯にわたって学び続ける力、主体的に考える力を持った人材は、学生からみて受動的な教育の場では育成することができない。従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である。(中央教育審議会 答申)
振り返ってみれば,私が現任校に転勤して以来,取り組んできたことは,海洋学習としてのアクティブラーニングの実践だったように思う。
それまでの「総合的な学習の時間」(総合学習)のあり方に疑問を感じていた私にとって,新しい試みを実践するのに最適な環境と条件が整っていたのが本校であった。
総合学習の多くが,体験に重きを置き,校内外で外部講師の指導による「体験学習」に終始し,ワークシートにまとめたり感想文を書いたりするだけである。体験活動は重要な教育活動ではあるが,そこに「学び」がなければならないと思っていた。
目の前に広がる海の町,古くより漁師町として栄え,人々は漁業や海運業によって生計を立てていた。しかし,両親が漁業を営む家庭は少なくなり,ほとんどの生徒が海との関わりが希薄になっている。かつては「海の運動会」と名付けた遠泳大会が学校行事に組まれていたが,沿岸は護岸で隔てられ,湾内は遊泳禁止区域となり,生徒は海を眺めるだけになった。海が目の前に広がる町に暮らしながら,都会の人々がドライブや釣りに海岸を訪れるのと同じ日常を過ごしている。当然,漁師の仕事も役割も知りはしない。海に船を出して魚を捕って売る人,名産の牡蠣の養殖をしている人,そんな認識である。湾内に係留された漁船を目にすることはあっても,実際にどのように漁業を行っているのかは知らない。
本校では,約20年ほど前から,漁協の協力により地場産業である「牡蠣の養殖体験活動」(種付け,生育状況の中間観察,水揚げの諸活動)を1年を通して学校行事,総合学習として毎年行ってきた。他校にない独自のカリキュラムは,生徒の大好きな活動であり,この体験を通して海を身近に感じ,生まれ育った地元の姿を知っていく,素晴らしい教育活動である。しかし,この活動もまた体験のみに終始し,体験が学びにつながっていない。
そんな時に,漁協から声がかかったのが「アマモ場の再生活動」であった。この活動もまた体験で終わるのかと乗り気ではなかった私の気持ちを大きく揺さぶったのが「聞き書き」活動だった。
このあたりの経緯は,海洋政策研究所が発行する「Ocean Newsletter」(第341号)に収録された拙文< 人と海に学び,豊かな感性を育てる海洋学習 >に書いている。
海洋学習を始めて2年後の2016年から19年まで毎年,その年の活動や実践をまとめた冊子,『人と海に学ぶ海洋学習』Ⅰ~Ⅳ集を発行してきた。その中から私が書いた「概要」を転載しておく。
部落史・ハンセン病問題・人権問題は終生のライフワークと思っています。埋没させてはいけない貴重な史資料を残すことは責務と思っています。そのために善意を活用させてもらい、公開していきたいと考えています。