行政書士業界で「ヒヨコ狩り」が流行る理由。

行政書士業界にはびこる「ヒヨコ狩り」

行政書士として開業を考えている方や、行政書士試験の合格者の方が、行政書士の実務や実態について調べていくと必ず目にすることになるのが「ヒヨコ狩り」というワードです。

「ヒヨコ狩り」とは、業歴の浅い新人行政書士に対して、同業者である先輩行政書士が「士業として失敗しないためのコンサルをします!」とか「初年度から〇〇〇万稼げる方法を教えます!」とかいう宣伝文句で迷える子羊である新人を誘い出し、お手製の教材やらマニュアルやらを高額で売りつけることを指します。

ちなみに私は利用したことがありませんし、「ヒヨコ狩り」をするつもりもありません。

ただ実はこれ、特にSNS(Xとか)の行政書士界隈では定期的に燃え盛るホットな話題なんですよね。

「行政書士は食えない」というイメージを逆手にとって「開業〇年目で年商○○千万が目指せる!稼げる方法を教えます」みたいな触れ込みをしつつ、SNSでは「プライベートも業務も充実してます!」と、キラキラ生活アピールをしている行政書士の先生をちらほら見かけます。
(完全にSNSを同業者向けのPRツールにしてますね)

それに対して、

「ヒヨコ狩りなんて言語道断!」
「士業としてあるまじき行為だ!」
「同業者を食い物にするなんて倫理的におかしい!」

と烈火のごとくお怒りになる先生もいらっしゃいます。

私も試験勉強中~開業後までSNSで情報収集をしていたので、ヒヨコ狩りの話題が炎上するたび、最初は「なんだこの偏屈な業界…怖い人いっぱいいる…」という感じでちょっと怯えてたのですが、
一か月に一度は話題に上がるので「ああ、また誰か何かやってるのね~」ぐらいな感じで慣れました。

「ヒヨコ狩り」が行政書士業界で目立つ理由

行政書士業界でこうしたヒヨコ狩りの話題が目立つのはなぜなのか?
それは行政書士業界がいわゆる「即独」をされる人たちが大変多い業界だからです(私もそうですが)

司法書士や弁護士などは、試験合格後に半年~1年間の研修を受けることが義務付けられています。その研修を終えて「即独」をするのはごくごく少数です。大半は、司法書士事務所や弁護士事務所などに就職をするのが一般的です。

それに対し、行政書士は登録後の倫理研修など(行政書士として最低限守るべきこと)は必須のものもありますが、業務内容に関する研修で義務付けられているものはほぼありません。文字通り、登録が完了すれば「即、独立」できるのです。

極端な話、登録の通知が来て、交付式を終えれば「はい!あとは自分で全部頑張って~!」ってな感じで野に放たれます。
ほとんどの人が「行政書士試験に受かるための勉強」しかしていないのにもかかわらずです。

行政書士には、自分の専門業務を決めるところから、実務の勉強をしつつ、集客・営業もして事務所経営を行うという工程をすべて初期の段階から自分で一からやらなければいけないという、他の士業にはない特徴があるのです。

だからこそ、こうした開業の不安につけこむ「ヒヨコ狩り」が流行りやすいのです。

また、今は行政書士試験の段階で多くの予備校が手厚くサポートを行っていることも、「ヒヨコ狩り」が生まれやすい要因があるのではないかとも思います。

有名な予備校に数万~数十万を払えば、プロの講師の方が試験のポイントや間違えやすい論点を分かりやすく教えてくれ、試験の合格にもぐっと近づきます。

「試験の時と同じようにお金を出せば、プロの講師が実務のポイントやノウハウを教えてくれて効率よく学ぶことができるのではないか」という体験に基づく期待も、ひとつの要因としてあるのかなと思います。

行政書士にロードマップはない

私自身いろいろ思うところはありますが、先生方ひとりひとりにそれぞれのお考えがあると思うので、どちらが正しいとか間違っているとか、そういう形では言及しません。

一つ言えるとしたら、行政書士にロードマップはないということでしょうか。

私自身も即独はしていますが、行政書士業務を行わない別の会社で勤務を続けています。いわゆる「金なしコネなし」の状態で突然無収入になるのはあまりにもリスクがあると考えたためです。

「兼業なんて行政書士として一人前ではない!」という意見も見かけたことがありますが、正直私にはそんなの関係ありません。
少なくとも、私にとってはこれが最善の方法だったと考えていますし、ずっと兼業しながら上手に仕事されている先生方もたくさんいらっしゃいます。

行政書士の開業にロードマップはないし、正攻法もマニュアルもないというのが自分自身で一番実感しています。今までいろんな人の開業体験談を読んできましたが、結局自分にぴったり当てはまるものはありませんでした。

「ヒヨコ狩り」と呼ばれるものについても、利用する・しない、コンサルをする・しないについて正しいとか間違ってるとかは言わず、あくまで私は私なりの距離を取るしかないよな、と思っています。
また年数を重ねてくれば私の考えも変わるかもしれませんが、今のところは、こういう感じで考えています。

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