ML-1L降臨
FacebookフレンドのK.SさんがML-1L初期モデルを導入されたことに刺激を受け、たまにはML-1も聴いてみたいなあ…などと思って久しぶりに所有している女友達に連絡してみたら、使ってないから預かっといてとML-1L最終モデルが飛んで来ましたw
この個体は14年前にその友人がオークションで入手したものでしたが、出品者が何と元RFの技師責任者だったM氏という大変貴重な個体でした。
少しエピソードをお話ししますと…
2007年6月のある日同時に2台のML-1Lが別の出品者からオクに出品されており、友人からどちらを買ったら良いか分からないから出品者に質問して欲しいと頼まれました。
DC漏れの有無をバランスボリュームの操作により判断出来ることを知っていたので質問してみたところ、M氏からは的確な答えが返って来ました。
そして、電源が本来であれば最終モデルはPLS-153Lのはずなのに、PLS-150が付属していました。PLS-150には2種類のトランスがあることを知っていたため更に質問してみました。
私:「PLS-150のトランスはEIコア、トロイダルコアのどちらでしょうか。また、本体とPLS-150のシリアルナンバーを、差し支えのない範囲で(末尾の桁を*で表示していただいても構いません)教えていただけますか?」
M氏:「ご質問有り難うございます、PLS-150のトランスは私は敢えて音源の位置が揺れ動かないEIを選びました、ナンバーは15**、本体は41**です。後期の本体に選りすぐりのEIの150は最良のセットだと私は思います。」
普通なら全てRCA端子に改造しがちなLEMO端子ですが、LEMOの良さを知っているからこそ、敢えて大半はそのまま残してあるところがプロの仕事でしょう
接点の増えるLEMOコネクターを使用しないで、必要なシーンにはRCAケーブルを使える素晴らしい改造と感じます
この個体はウッドケースは付属しておらず、PHONO 1とMAIN OUT 1のみRCA化してあるところを見ただけで、出品者は只者ではないと感じました。そしてこれ一択しかないと友人と共に決心しましたw
そんなこんなで友人が入手してから14年の月日が流れたのですが、友人は後に#7オリジナルを入手してからML-1Lはほぼ使わなくなっており、電源だけはずっと入れて保管しておいたという個体でした。そのため湿気でモジュールが逝っていなかったのは幸いです。
さて前置きが長くなりましたが、この個体のコンデンサを見て頂くと基盤に2個のみの配置となっており、内部ACカップル/DCカップル切換ディップスイッチさえも廃止されDC固定になっていることが分かります。配線材は私の中期LNP-2Lと同じタイプの銀線を使用していました。
ML-1Lの初期モデルのコンストラクションはJC-2Lそのもので、基板にはモジュール真横にJC-2と刻印されています。JC-2L基板の線を基調にしたプリント配線とは対象的に、中期以降のML-1基板は面を基調とした配線となっており、初期モデルで感じられたハイスピードで硬質な高解像度傾向からモジュールの改良と共により穏やかな傾向に向かったのであろうと想像しています。
ML-1L最終型のコンストラクション
初期ML-1Lとはまるで違います
ACカップル/DCカップル切換の内部ディップスイッチもDC固定化のため
省かれていることに注目
ML-1L標準のA3フォノカード
キャップを外した切換スイッチにより
入力インピーダンス2段切換/ゲイン2段切換が可能
※オプションのA4EはEMT TSD/XSD15と低出力MMカートリッジ用のハイゲイン設計でした
KF96-50CSでコーティングする前に、セスキの劇落ちくんで筐体と刻印文字を入念にクリーニングします
クリーニングとシリコンコーティングにはScott ショップタオルを使用
ツマミもこれだけ汚れていました。溝の中も徹底的にクリーニングします
シリコンコーティングすれば、ツマミ類もかなり汚れ難くなります(私は直接手で触りませんw)
内部クリーニングのついでにモジュールピンも無水アルコールでクリーニングします
やるとやらないのでは当然音質に差が出ます
綺麗なようでもこれだけ汚れていました
※クリーニング後はT居さん推奨のシルバーコンタクトペンを塗布することも忘れませんw
PLS-150にはトロイダルとEIコアの2種類のトランスがありました。M氏は自分で使うために敢えて回路のシンプルなPLS-150を選択し、しかもEIコアトランスをオーダーし組み合わせていたようです
PLS-150は70年代中判設計なのに、リモートセンシング機能を取り入れた画期的な電源でした
ML-1L後期の本来の付属電源は、回路が複雑になりトロイダルトランスの積まれたPLS-153Lです
LNP-2Lと並べた姿は美しいと感じます
どちらもKF96-50CSでコーティング済
スペクトロールポテンショメーターのパッシブアッテネーターはCDプレーヤーのゲインを落とすために使用
果たして出て来る音は、非常にきめの細かいサウンドで、初期の荒削りでダイナミックなサウンドが木綿豆腐としたら、この最終回は絹ごし豆腐でしょうかw
私は初期のML-1Lの音質が元気があって好みですが、こういう落ち着きのある雰囲気を味わえるML-1Lも非常に素晴らしく、LNP-2Lにはない魅力ではないかと改めて感じました。
9.19.2021