Spain
ここの所、肩こりがひどい。おそらく眼精疲労からきているやつだろう。肩通り越して首まで痛い。血行が悪いのかなあ、なんだか痺れたようなピリピリした感覚が広がっている。
ピリピリ、チクチク。
もみほぐそうと首に手をやると、指先に痛みを感じた。
首に異変が起きているのを感じ、急いで鏡を覗き込む。
首周りに、細くて柔らかそうだが鋭いトゲが生えてきていた。
あれか、身体がストレス社会から身を守ろうとしているのか。
トゲは首の後ろだけでなく、背骨に沿って生えていた。
背中だけ守ってどうするというのだ。ダメージはあらゆる方面からやってくるのだぞ。
しかも服を着ると、柔らかいトゲは寝てしまってまったく現れない。
となると、身を守るためではないのだろうか。
そもそも、サボテンってなんでトゲ生えてるんだっけ・・・?
サボテンになったこともないのでわからない。今の状態がサボテンになりかけていると言えなくもないが。
【サボテン トゲ 理由】で検索してみた。
どうやら、身を守る以外にも、温度調節や水分を集めたり、色々な役割を果たしているらしい。
たしかにわたしは汗っかきだから、保水と温度調節は大事。死活問題とすらいえる。
でも、別にトゲが生えてから、涼しくなった気もしないんだけどなあ。
あと普通に喉も乾くし、汗もかく。
なんなんだろ、いったい。
トゲはそれ以上太くも硬くもならず、ほわほわと背中に生えていた。これじゃ産毛と大差ない。ちょっと毛深いだけの人。ただ、じかに触ると突き刺さって地味に痛い。それだけだった。
剃ってしまおうかとも思ったが、背中に生えているものをきれいに剃る自信がなくて、結局そのままにしていた。
ある夜のこと。
ふしぎと胸騒ぎにおそわれて、わたしは目を覚ました。
月明かりに照らされて、頭上で何かがぼわりと光っている。
起き上がってあたりを見回したが、それらしきものは見うけられない。
ふと気づき、鏡の前に立ってみると、わたしの背後に白い大輪の花が咲いていた。
それは見事な花だった。薄暗い部屋の中で、ほの白く、儚げでありながら、凛とした、折れない気高さを見せていた。
これが自分の内から生まれたものなのか。それとも、わたしが花に寄生されているのか。どちらにせよ、この身にこの美しいものが宿っていることがわたしには嬉しくて、いつまでも鏡の前で花に見とれていた。
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