【事例紹介・みんなで考える女性の健康プログラム】従業員には正しい知識の前に正しい意識を持ってもらいたいと考えていました。
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「健康経営優良法人」企業の取り組みインタビュー
東急住宅リース株式会社 様
■ 取材企業 ■
[東急住宅リース株式会社]
・業種:不動産賃貸管理
・従業員:1,122名(2022年3月末時点)
・所在地:東京都新宿区西新宿2-3-1 新宿モノリス16F
・認定部門:健康経営優良法人2023 大規模法人部門 ホワイト500
・事業概要:■賃貸管理・運営(マンション・アパート1棟/分譲マンション/戸建) ■海外投資家向けサービス ■建物管理サービス ■リフォーム工事サービス ■アセットコンサルティングサービス
・会社HP:https://www.tokyu-housing-lease.co.jp/
近年注目されている「DE&I」。
様々なところで耳にする機会が増えています。
「DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)」とは、今では一般的な言葉となった「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」に、日本語では公正性と訳される「エクイティ」という考え方を明確に付随した言葉です。
米国に端を発したこの考え方は、経産省を中心に日本でも推進されており、
ダイバーシティの中でも、「女性の活躍推進」は特に多くの企業が注目している分野です。
本記事では、2022年度にemphealの【YOLISOH prpgram~みんなで考える女性の健康~(以下、本プログラム)】を導入いただいた東急住宅リース株式会社 人事部の梅澤様へインタビューをさせていただきました。
梅澤様の役割やミッションなど教えていただけますでしょうか。
私は人事部 勤労グループのマネージャーです。グループの役割は労働基準法をはじめとする労働関係法令に基づいて従業員が安心して働ける環境を整えるということ、そして給与計算や入退社の手続き、社会保険、従業員の健康増進、メンタルヘルスケアの予防などの安全衛生や健康経営を推進することです。
ミッションとしては従業員一人ひとりがいきいきと働ける風土を醸成し、環境を整備することだと思っています。
現在の健康経営関連の取り組み状況や手応え、課題点などがあれば教えてください。
これまで当社は、運動習慣があまりない従業員が少なくありませんでした。そこで、2019年度から毎年、全従業員を対象にウォーキングイベントを開催しています。
スマホにアプリをいれて、歩数を個人単位とグループ単位で競うようなイベントです。昨年は参加者の歩数に応じて、日本赤十字社さんへの寄付なども行いました。
そしてコロナ禍になってからは、従業員が安心安全に運動に取り組めるように、2021年から関連会社の東急スポーツオアシス提供のWEBGYM(ウェブジム)アプリを使って、自宅など場所を選ばずにすきま時間に各自で運動できるイベントを毎年実施しています。
また、2022年4月に定年を60歳から65歳に延長したのですが、シニアがいつまでもいきいきと働くためには健康診断だけでなく自分の体力を知ってほしいと思うところがあり、体力測定の結果に基づき専門トレーナーのカウンセリングが受けられるカラダ測定会を実施しました。
参加者の多くから「良かった」「来年以降も実施してほしい」という声が寄せられています。
今年度新たに取り組んだのは、「オーラルケアセミナー」です。歯の健康や口腔清潔度等がわかる唾液検査、歯科衛生士による座学を実施し、こちらも好評でした。
参加者は施策ごとに異なります。ウォーキングイベントは全従業員約1,300名のうち500名が参加しています。
その他の施策は人数が増えるとその分コストもかかるため、例えばオーラルケアセミナーは最大100名という枠を設けて開催しました。ほぼ満席になったのでそれなりのニーズはあると思います。
ウォーキングイベントを盛り上げるために工夫はされましたか?
社内SNSで参加を呼びかけたりイベントの経過(ランキング)を発信することで、一人でも多くの従業員が積極的に参加してもらえるよう工夫しています。参加者はニックネームを設定しているのですが、ランキングトップのメンバーが1日3万歩のスコアで、「これは誰だ」と社内 SNS で会話が生まれたりしています。
ただ、どうしても地道に努力している、例えば毎日頑張って一万歩歩いているようなメンバーが隠れてしまうので、グループ対抗戦ではグループの平均値で競うようにしています。参加したメンバーは「景色が綺麗な場所を散歩した」「歩いていたら街でこんなものを見つけた」等、社内SNSに写真や書き込みを投稿し合って自然と盛り上がっています。
課題としては参加しない従業員が半数以上はいることです。
本当はより多くの従業員に参加してもらいたいのですが、任意参加のイベントなので、強制することはできずなかなか難しいですね。
健康経営の中でも「女性の健康」に取り組もうと思われた背景や、きっかけについて教えてください。
当社は、女性の従業員が半数を超えています。派遣社員も含めると約6割が女性です。
女性がライフステージに応じて体調が変化するということは皆なんとなく知っていると思いますし、部下から生理等の体調不良で休暇の申し出を受けるということは多くの管理職が経験していると思いますが、正しい知識を会社で学ぶ機会というのは今まで全くありませんでした。
生理や更年期障害については、男性に対してだけでなく、女性同士でも話題にしないという話も聞いていましたし、タブー視されることもあったので、問題が言説化されることが無く、人事でも問題意識が持てていなかったというのが正直なところです。
そのため、会社の中でずっと辛い思いをしている従業員のケアが十分にできていませんでした。
当社の代表が『従業員の働きがい』を重視しているのですが、働きがいというのは『働きやすさ+やりがい』です。
女性の従業員が働きやすくなるためには、男性は女性の特徴を知り、女性自身も正しい知識を身につけてお互いに理解して助け合う風土の醸成が大切だと考えたので、
今回、基礎的な女性の健康についてのセミナーをお願いしたというところになります。
弊社の他にも女性の健康の研修はあるかと思いますが、本プログラムに決めたきっかけや理由はありますか?
担当してくださっているemphealの朝倉さんですね。
朝倉さんの人柄と言うか、こちらの悩みを丁寧に聞いて相談に乗ってくださったところが最終的な決め手になりました。
今回初めての開催ということもあって、従業員には正しい知識の前に正しい意識を持ってもらいたいなと考えていました。
女性の健康や体の特徴を知ることで、『女性は活躍しづらい』かのような誤った認識を従業員が持ってしまうかもしれないことが一番の懸念点でした。
一つの課題を深く掘り下げるというよりも『女性と仕事』というキーワードを通して幅広い知識を具体的な事例を含めて説明いただくことで、参加者の誰もが共感して課題意識を持つこと、その上で女性特有の困りごとを共通言語化するということを期待していてそれに対応できるのが御社のプログラムだったということです。
本プログラムは様々な企業様に導入いただいていますが、企業によって任意研修だったり、全従業員向け、女性向け、管理職向けとパターンが分かれている中、今回御社は管理職必須参加研修として実施されましたが、今後女性の健康に関する取り組みについてどのようなステップで進めて行く予定ですか?
来期以降の研修スケジュールはまだ検討中ですが、女性特有の困りごとに介入する会社の姿勢は示したいと考えています。
管理職には継続して研修を通じた最新の知識を提供し、管理職ではない従業員にも、今回のような基本的な知識を提供しヘルスリテラシーを高めることでお互いに助け合えるような風土醸成ができたらと思っております。
本プログラム導入後、社内にどのような効果があったと思われますか?実際のお声などもあればお教えください。
まだ1回開催したばかりの状況であるため、具体的な効果はありませんが、参加後に管理職メンバーから「やってよかった」「大切なことだ」「今後も啓発を進めていくべきだ」という声が上がっています。意識づけができたことは、大きな一歩だと思います。
研修と併せて、他にも施策を継続的に展開することで徐々に浸透して見えてくるものがあるのではないかと思っています。
朝倉さん曰く「少なくとも3回はやった方がいいですよ」と。
仰る通りだと感じていまして、座学の研修だけでなく、アウトプットを前提としたものなど、他の施策も併せて継続していく必要があると考えています。
本プログラムで良かった点はありましたか?
参加者に目線を合わせる、という点で、適切な研修内容だと思っています。前半は基本的な目線あわせで、後半では当社からの事前質問に対して助産師さんから具体的な事例を用いて回答いただいたのですが、参加者は自分ごととして興味深く聞いていたと思います。
例えば産婦人科の探し方や、セクハラ回避方法、体調が優れない様子の女性従業員への声かけの仕方等がとても良かったと思います。
本プログラムで特に印象に残った内容などはありましたか?
セミナーの冒頭で、生涯の月経回数が昔50回だったものが今は450回になっている、とありました。
その話を聞いて、会社が生理に苦しんでいる従業員に手を差し伸べることは、労働生産性の向上に寄与する可能性が高いのではないか、逆に言うとケアができないと労働生産性は低下してしまうということなのではないか、と焦りのようなものを感じました。
それが先ほどの、今後考えて行くべき施策としてお話した内容につながっています。
今後、健康経営について更に注力されたいことはありますか?
2つあります。
1つは、ヘルスリテラシーが高くない従業員が施策に参加するようになること。このようなセミナーに参加しないことが多いので、どうしたら情報を届けることができるか、意識や行動の変容につなげることができるのかを常々考えています。
もう1つは、Well-Beingの推進です。
肉体的にも精神的にも社会的にも満たされた状態を目指しましょう、と言われている中で、当社はまだそこには至っていないように感じています。
私は、従業員の健康より大切なことはないと思っています。
一方で、仕事を通じて幸せになってほしいと思っています。
Well-Beingを推進するというのは、健康であることが前提にあると思います。
ちょっと違う視点でいろいろな「幸せ」を考えると、例えば、当社では社内のクラブ活動が盛んで、体育会系でトレッキングやボーリング、フットサル等など13クラブあります。
クラブ活動が終わった後、トレッキングクラブでは「こんな山に登ってきました」と社内 SNS で写真をアップして、その後みんなでコメントを投稿しています。
すると、その様子を見て「楽しそうだな」と思ってもらえ、次回の参加者が増えたりします。また、そのような投稿のタイミングで、人事側から新たなクラブ活動の立ち上げの募集の告知を社内に行っています。
人間関係が縦だけではなく横や斜めにつながったりすると、心身共により健康になると思います。
そのような観点で、健康経営施策だけでなく、クラブ活動のように人と人がふれあう機会や環境をつくるサポートなど、会社が従業員の「幸せ」のためにできることとはいろいろあるのではないかと考えています。
最後に
私は、過去に現場にいた経験から、人事部に来てさまざまな制度を取り入れてきました。
現場にいたからこそ実感する従業員の悩みや辛さがあります。そのような感覚を大事にし、これからも従業員にとって必要な施策や制度改定等、積極的に実施していきたいと考えています。そのためにも、引き続きemphealさんには最新の情報を提供いただきたいと思います。
従業員がヘルスリテラシーを高め、互いを尊重できるような風土の醸成を目指します。
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※取材、文:株式会社empheal(エンフィール)
取材日:2022年11月10日