【番外編】2021season振り返り Part①
皆さん、ご無沙汰しております。Emperor-Dです。
だいぶ更新間隔が空いてしまいましたが…サボっていたわけではありませんよ?(笑)
毎年のことですが、担当させてもらっているチームや車両に対して『結果』という形でお返しをするために最大限仕事に時間を割いていますので、シーズン中は執筆時間をとれない状況になっていたと言うか、追い込まれていたと言うべきか。(笑) といいつつもレースシムやってYoutubeで配信なんかやっちゃってましたよねと言われると弁明の余地もありませんが…あれは自分のルーティンなのでお許し願いたく…汗
それでは本題に…
今回はいろいろあった2021年のレースシーズンを振り返ってみようと思います。まだ終わっていないカテゴリーもありますが、このシリーズを書き終える頃には終わっていることでしょう。
●シーズンの流れ
まず、日本のモータースポーツにおける1シーズンの流れは大体5つのステージに分けられるのかなと思います。これは私が勝手に分けただけなので異論は認めます(笑)
12月から次年度向けのオフシーズンが始まり、テストのない2月くらいまでがテストに向けた準備期間となります。なので、2021年12月は2022年向けのオフシーズン期間で、今回書くのは2020年12月からになります。
次に、3月からオフシーズンテストが始まります。この期間は毎週のようにテストがあるので準備したものをテストしていくのみで終わっていきます。そして、4月からメインイベントとなるレースが開幕していきますが、だいたい3ヶ月刻みで序盤-中盤-終盤という感じに分けられます。ただ、実際に過ごしている感覚としては毎週何かしらのレースがあり、3月から11月まではこういうことを考える余裕すらないくらいに時間に追われています(笑)毎年の口癖ですが、いやー今年も辛かったな~^^
では2021年のスケジュールはどんな感じだったのか、見ていきましょう。
●2021シーズンの流れ
2021年のSUPER GTとSUPER FORMULAに関する大まかなスケジュールは下図の通りです。横軸が月で縦軸が週数となります。上下のマスで間が無いところは連続でレースやテストがあったということになります。こうしてみると、3月から5月の第3週まではほぼ毎週レースだったということになります。あと、最近ですと10月の第3週から11月の第1週までは4週間連続でレースでした。他の海外カテゴリーとの兼ね合いもありますので、疎と密が生まれてしまうのは致し方のないことではありますが、さすがに4週連続はかなりハードでした笑
実際にはもう少し走行機会はありましたが…凡そこんな感じでした。
では掘り下げてみていきましょう。最初はオフシーズン①から。
1. オフシーズン①(1-2月)
まず、自動車レースはスポーツの一種であり、他のスポーツ同様に競技会の行わないオフシーズンというのがあります。時期としては12月から3月くらいがこれに該当します。この時期は気候的に寒く、降雪等のリスクもあり、レースをするには不向きですので、レースは4月から11月までで行われています。誰かに理由を問うたわけではないので他の理由もあるのかもしれませんが…また、2020年はコロナの影響もありレースに携わって初めて12月までレースを行いました。なので2021年のオフシーズンは例年より1ヶ月も短かったので準備する側としては大変なオフシーズンとなりました。
一般的にオフシーズンは前年度の反省点を踏まえて対策や新しいアイデアを形にする時間として使用します。ですのでまずは、2020年シーズンについて個人の反省点をまとめるところから始めてみました。
レース戦略については色々な部分で対策をしましたが、ここで言えるような内容はほぼ無いです…ごめんなさい。
唯一言えることとしては、戦略を考える人間の数を増やしてカバーする範囲を広げました(笑)安易なやり方ですが、CPUのコア数が増えたのと同じで並列処理の能力が上がりますから解を求めやすくなります。処理方法を変えるわけではないので合理的な手法ではありませんが、時間のない中で解決するにはこういう手段も使わざるを得ないのかなと(笑)
さて、本題のGTとSFでパフォーマンスが低かったというのは、やはりセットアップが悪いという話しになりますが、セットアップにおけるステアバランス調整とパフォーマンスの関係については私の記事を参考にしてもらえるとわかりやすいかなと思います。
2020シーズンのGTにおいては、ステアバランスが悪すぎて、そもそも持っているパフォーマンスをフルに引き出せていないというのが主要な問題でした。シーズン序盤は強アンダーステアに始まり、対策していった結果、今度はドオーバーステアに...そこから最後まで直しきれず最終戦まで終わってしまいました。今までエンジニアをやってきた中でここまで外した年はありませんでした。
というのも普通はアンダーからオーバーに側にバランスがシフトしたタイミングで大体バランスの取れる辺りを掴めるはずなんですが、どういうわけか去年はそれが見つけられず…
なので2021年シーズンに向けてはまず、『ステアバランスを合わせて現状持っている車両の最大パフォーマンスを発揮させる方法』を考える所からスタートしました。
2020シーズンのSFに関してはステアバランスとしてはベストではないものの大体のイベントで許容範囲くらいには入っていたはずなのにも関わらず、それでもラップタイムがトップに比べてもの凄く遅かったです。
つまり、現状のセットアップで引き出せる最大パフォーマンスは、他車に比べて劣っているということになります。
そのため、2021シーズンに向けては『パフォーマンス自体を引き上げるためにはどういうセットアップにしていくべきか』を考える必要があります。
2020年の分析していった結果として、GTでは空力的にもサスペンションのセットアップ的にも両方の面でバランスを取れない要因を作ってしまっていました。これはそもそも私が設定したターゲットが車両やタイヤに対して合っていなかったのですが、担当チーム変更に伴い、タイヤメーカーさんが変わったことに対して以前の経験則で進めていたことが大失敗でした…もっと早く気づきたかった…
SFではバランスを合わせることを意識するあまり、フロント車高を高くし過ぎてしまっていました。今時のレーシングカーはフロント車高を上げるとフロントダウンフォースが減るだけでなくリアのダウンフォースも減ってしまいますので、パフォーマンスとしては下がる傾向にあります。ただ、低い車高でバランスを取るのは難しさが倍増していくため、そこまでの制御が出来なかったというわけです。
何故、車高を下げるのが難しいのかというと、ご存知の方も多いかもしれませんが、ウイングやディフューザーにはグラウンドエフェクトというものがあり、これらが地面に近づけば近づくほどダウンフォースが増えていきます。※実際にはストールもしますが…
これは良いことでもありますが、車高変化に対してのダウンフォースの変化が大きくなることを意味していますから扱い難さに繋がります。一般の方には理解して貰えないかもしれませんが、我々は車高を0.1mmでも下げようと血眼になって開発を行っているのです(笑)
こういった反省を踏まえて、2021年のオフシーズンテストに向けて、改善するためのアイテムを考えて準備していきます。
GTはサスペンションセットアップで試せそうなアイデアがあったので、それをテストに向けて準備をし、SFに関してはフロント車高を下げることが最大の改善策となりますので、そのためにばね系を調整することにします。
ちなみに車高を下げると、ダウンフォースが増えますので車高はより下がりますが、ストレートエンドの車高はスキッドプレートの最大削れ代が決まっていることから、ある程度制限されてしまいます。そのため車高を下げるにはストレートエンドの車高を保てる硬いばねが必要になります。しかし、硬いばねを使うことで、扱い難さや低速コーナーのグリップが下がる傾向にありますので、車高の下げ代とばねの硬さを何種類か用意しておき限界点を見極めれるようにしておきます。
ということで、だいぶ長くなってしまいましたが、2021シーズン開幕前のオフシーズンは振り返り-原因追及-解決策検討の3つの作業だけで2月末まで費やしています。これらの準備をするのに約2ヶ月もかかってます…。地味ですがこういった理詰めで進めるのが現代レーシングカーの基本的な性能を決める重要な要素なのです!
●まとめ
さて、2021シーズン振り返り編パート①はいかがだったでしょうか。書きたいことが沢山ありすぎてこれらを更新するのも結構な時間が必要そうです(笑)
次回の内容はオフシーズン②からレース序盤くらいになるかと思います。少しだけ紹介すると、こんなにも頑張って準備したのに、オフシーズンテストでいざ走らせてみた車両は激遅…セットアップもドはまりします…そして、シーズン序盤は期待以下の散々な結果に!?
乞うご期待下さい。
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