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セットアップ講座の前に Part⑤(最終)

こんばんは。Emperor-Dです。

前回までは少し難しい話になってしまい申し訳ありません。セットアップについて考える上で重要なことなので、4回に分けて基礎的なことをお伝えしてきました。

今回はセットアップ講座の前に Part⑤ということで、この内容の最終章になります。内容はドライバーとエンジニアがセットアップを考える上で必要となる、双方が理解しておくべき基礎知識です。これはレースシムをやっている方だけでなく、ドライバーや、エンジニアを目指す方もそうですし、学生フォーミュラをやっている方は、皆が覚えておいて損のない情報だと思います。
今回は数式はありませんので、皆さんにお楽しみ頂けるのではないかと思います。

では内容に入ります。

1.ドライビングのフェーズ分割について

ひとつ目に重要なのは、ドライビングのフェーズ分割(場面分け)です。
フェーズ分割って何?という方、次の図を見てください。

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上図の左側がフェーズを分けたもので、右側は私がrFactor2で似た形状のコーナーを走行したロガーデータです。
※分け方は人によって違いますが、ドライバーと共通認識を持っていれば問題ありません。今回は私の考えているものでお伝えします。

まず、コーナーを走る上でフェーズは"5つ"あると考えています。
① Braking@Straight
② Entry
③ Mid(Apex)
④ Exit(1st part)
⑤ Exit(2nd part)

①はブレーキを踏んでからステアリングを切り始めるまでの間で、②はステアリングを切り始めてからブレーキングをある程度リリースするところまでで、③はブレーキ少しとステアリング舵角最大くらいまでです。④と⑤はどちらも近いですが、スロットル開け始めから暫くは④で、舵角が小さくなっていく最後の方を⑤としています。
これがなぜ重要かというと、同じアンダーステアでも、コーナーミッドと出口では対処方法が違うからです。そのためドライバーはエンジニアに伝える際には必ず"場所"を明確にしましょう。


2.ステアバランスの表現(Input⇒Output)

では、上記のフェーズを覚えたところで、次にステアバランスの表現方法を考えましょう。先ずは図を使ってドライバーが車両を操るロジックを説明します。

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ドライバーは基本自分が通りたい走行ラインに対して操作を行います。それに対して、出てきたアウトプットが希望通りかどうかをドライバー自身が持ってるセンサーで感知し、目標との誤差を確認し、必要であれば追加で操作を行うという流れです。制御工学ではフィードバック制御といいます。
またまた難しくなってしまいましたが、大切なのは、どんな操作(Input)をしたら、挙動(output)がこうなったという情報です。

例えば、コーナー進入(Phase)で、ステアリングを切り始めたら(Input)、リアが流れ始めた(Output)という感じですかね?1の内容と合わせて表現してみましたが、これが出来るとセットアップはより効率的に進められます。
更にあると嬉しい情報は、ステアリングの舵角(Input Amplitude)とステアスピードが早く切ったのかゆっくりなのか(Input Frequency)といったところでしょうか。ちょっと難しいか。
要はステアリング操作と一口にいっても操作の仕方でも起こる事象は変わるのでそれも理解した上で表現してもらえればよいかなとと思います。

3.ステアバランスの表現(Phase優先順位 & Car speed)

さて、1と2を覚えて頂いたのでエンジニアに対して状況説明は上手く出来るようになったと思います。ですが、まだもう少し理解すべきことがあります。それは説明する順番とコーナーの速度です。
まず、説明する順番については例を使って理解していきましょう。


『①コーナーの進入が弱めのオーバーステアで、②ミッドから出口で強いアンダーステア』という状況が両方起こっていたとします。
Q. ①と②はどちらを先に解決すべきでしょうか?

この問題の答えは①です。ポイントは“フェーズの前後“か、 “ステアバランスの強弱“に注目すべきなのかという点ですが、私は『”フェーズの前後”に注目すべき』だと考えます。
というのもコーナーミッドの状況はコーナー進入の結果から来ており、進入の状況が変わればミッドの状況も変化するからです。上の問題はよく現場で直面しますが、コーナー進入を直したらすんなり改善した、なんてことがよくあります。なので、ステアバランスに問題がある場合は、フェーズが手前の方が重要度が高いと覚えておいてください。
そして、ダウンフォースのある車では、車速によってステアバランスが変化します。そのため、コーナーのスピードでも場合分けを行いましょう。

なかなか、種類多くて覚えられませんよね...次に体系化しますので、参考にして下さい。

4.ステアバランスの記録(コメント)

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レースシムで使うならこんな感じかな?で作りましたが、使ったことはありません。プロドライバーとやるときは1~3がしっかりできてますから、口頭のみで理解できてしまうので必要ないと思ってます。レースシム等でセットアップを変えた時にどんな変化があったかを記録として残したい時に、有効だと思います。
これは各コーナー・フェーズ・バランスを左側に、詳細な状況や操作内容をコメントに書くことで私が説明した内容が網羅されます。
昨今では、オンボード動画とデータロガーで凡そ理解できますが、ドライバーからの”整理されたインフォーメーション”はとても重要です。

5.まとめ

いかがでしたか?ドライバーが車両のステアバランスを表現するのにも、覚えておくべきことがたくさんあるということをわかっていただけたと思います。ここまで理解して頂ければエンジニアとのコミュニケーションやセットアップをする時にも困ることはないでしょう。後は単語やフェーズの認識をしっかりと共有しておけば完璧だと思います。

次回からはセットアップ講座に入ろうと思いますが、先ずはロガーデータが見れなければ先に進めないので見方から始めようと思います。計算チャンネルなんて誰も使ってませんよね...いづれ説明しますね。


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