
形のないものにキャラ付けをする才能
店の中で音を出さなければ商品を盗んでもいい、「盗」というイベントに行ってきた。
つまりお客さんはみんな泥棒なのだけど、Xでご丁寧に「良いものが欲しい人は早めにお越しください」とか、「外で行列ができているので、何か防寒対策してください」など、泥棒にとても優しい。
そんな、存在自体がボケてきている企画って、出オチになりやすい危険性もあると思うのだけど、想像を超えてくる美術とゲームバランスだった。


挑戦は1グループずつ。
店に一歩踏み入れると、「いらっしゃいませ」の言葉と同時に90秒のタイマーが作動する。
それまでほのかに鳴っていた環境音が消え、全くの無音状態になる。
サーチライトがうようよと動き回る中、200本のマイクが泥棒を狙う。
泥棒たちは、微塵も音を出さないように、靴を脱いでそろりそろりと歩くのだが、関節のポキッという音がするだけでも警告音が鳴って脱落してしまうシビアな世界。
周りを見渡すと、異様におしゃれな八百屋みたいな陳列棚に、"FRUIT OF THE ROOM"のTシャツが飾ってあり、手を伸ばそうとすると、足元の空き缶が睨んでくる。

さらに、商品には鈴がついているので、入り口まで持って帰るのに全く気が抜けない。
店員さんの話では、10組中2〜5組が成功するかどうかというところらしく、失敗すると絶妙に悔しい。
この、「盗めるもんなら盗んでごらんにぃな」という無言の圧が、イベントの企画元のラジオ「脳盗」のパーソナリティのお二人の雰囲気とかっちりハマっていて、ファンとしては五感でラジオを浴びたような感覚に浸ることができて歓喜した。
「なんなんだよてめぇ」「うるせぇなぁ」とケンカみたいな治安の悪さと、それでいて憎めない茶目っ気が、企画の人格として表れているようだった。
パーソナリティのTaiTanさんは、何か企画をやるなら、絶対に自分の色が出てないとやりたくない、というようなことを言っていたけれど、そのエッセンスを抽出して形にするのがなんて上手なんだろうと思った。
よく考えたら、普段のラジオでも、その回で話したい内容にピッタリの曲をかけるセンスもピカイチなTaiTanさん。
自己プロデュースのように「人」だけでなく、「話題」という形のないものにもキャラ付けをして、曲という形で半具現化する。
この才能はなんていう名前で呼べば良いのでしょう?