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あなたはSNSで誹謗中傷を受けていませんか? 「ネットいじめ」に立ち向かうためのスキル

この記事は、「ネットいじめ(cyber-bullying)」をテーマに、株式会社エモスタが独自で行った「Twitterでの誹謗中傷に関する調査結果」や、欧米での研究成果を踏まえながら、「ネットいじめ」の特徴や解決方法についての考察を伝えるものです。

記事を通じてのメッセージが、ネットいじめで悩んでいたり、苦しんでいたりする人に届くことを願っています。


今、「ネットいじめ」が社会問題になっている!

今回、エモスタで「ネットいじめ」に関する調査を行ったのは、プロレスラーの木村花選手が亡くなったというニュースを見たことがきっかけです。そのニュースは、海外メディアでも大きく報じられ、イギリスのテレビ局「BBC」では、木村花選手を追い詰めた原因の1つとして「ネットのいじめ」が考えられると言及しています。

エモスタでは、「ネットいじめ」という社会問題に対して、どのように取り組んでいくべきなのかを考えはじめました。


(1)ネットいじめの特徴について

ネットいじめには、以下の5つの特徴があります。

1. 個人や集団が通信技術を用いる。

2. 加害者が意図を持ってしている(被害者が不快を感じている)

3. 加害者の行為が繰り返されている

4. 被害者が加害者を特定することが難しい

5. 被害者のフラストレーションや無力感を増大させる

ネットいじめの最たる特徴は、4と5にある「匿名性」です。匿名性の高い発信においては、被害者が加害者を特定することを難しくさせ、被害者の「フラストレーション」や「無力感」を増大させます。その結果、被害者に大きな悪影響を及ぼすのです。それでは、どのような悪影響があるのか、もう少し詳しく説明します。


(2)ネットいじめの悪影響について

ネットいじめが被害者に与える悪影響は主に以下の3つです。

・いじめ被害は、抑うつ症状や自殺願望と関連しやすい
 →いじめが解決できなくて、抑うつ状態になる
 →解決できない問題から、無力感が生じて、いじめを苦に自殺する

・いじめ被害が隠される傾向がある(思春期の被害者の90%以上は、自分が被害者であることを親や教師に知らせない)
 →不安、恥ずかしさを感じている
 →スマホを没収されるのが嫌
 →いじめが悪化することへの恐怖

・いじめの被害者は、頼れる人がおらず、孤立している可能性がある
 →孤立から、相談や助けを求めることができない
 →孤立から生じる、心理的な孤独感を募らせている
 →相談しようと思えるネットワーク環境が不足している

このような悪影響によって、いじめを苦に命を経つなどの最悪の結果を招くことになります。それでは、ネットいじめに立ち向かうために、何が必要なのでしょうか?


(3)ネットいじめに立ち向かうために必要な要素

欧米では、ネットいじめ対策として、①報復しない②支援を求める③証拠を保存する④公的機関に通報することが広く推奨されています。そして、サンディエゴ州立大学の研究では、ネットいじめの対策として、オンラインサイト上で、いじめが解決された事例を見せることが有効であると言われています。つまり、①から④までの対策についてSNSで公開していくといった方法です。

オンラインサイトでネットいじめの対策や解決事例を見られるようにすると、それを見ている第三者からの励ましや支援が寄せられます。それによって、いじめ被害者は、「自己効力感」を高め、前向きな解決に向かう行動を実行し、いじめへの対応力を発揮させることが明らかになっています。

【サンディエゴ州立大学の研究の論文情報】
Savage, M. W., Deiss Jr, D. M., Roberto, A. J., & Aboujaoude, E. (2017). Theory-based formative research on an anti-cyberbullying victimization intervention message. Journal of health communication, 22, 124-134.

この「自己効力感」がネットいじめに立ち向かうために必要な要素であることは、私たちの調査でも明らかになりました。その結果を、以下にご紹介したいと思います。


<エモスタで実施したサーベイの目的>

サーベイの目的は以下の2つでした。

1. SNSを「Twitter」に絞り、Twitter上でどのような嫌がらせや誹謗中傷を受けているのかを調べること

2. ネットいじめに立ち向かうために必要な要素として、「自己効力感」「コーピング」「援助要請」を取り上げ、それらが「他者への信頼」や自分の「孤独感」という心理状態に及ぼす影響を検討すること

・「自己効力感」とは、個人がある状況において必要な行動を実行できるという認知です。つまり、自己効力感は「自信」と言い変えることができるでしょう。

・「コーピング」とは、ある問題に対処する行動です。

・「援助要請」とは、自分が困っている時に、誰かに助けを求める行動です。


<エモスタで実施したサーベイの概要>

今回のサーベイは、Googleフォームクラウドワークスを用いて実施しました。調査票は、こちら(https://forms.gle/H91tfojL4TMxxA6V8)からアクセスできます。

【調査内容】
1. 個人の自己効力感の程度(自己効力感)
2. 個人がSNSでの問題を対処する程度(コーピング)
3. 個人が援助を要請する程度(援助要請)
4. Twitterの利用状況と依存度
5. Twitterにおける誹謗中傷の内容
6. 個人が思う人間全般に対する信頼の程度(他者への信頼)
7. 個人が抱く孤独感の程度(孤独感)

調査回答者は、全国の男女255名でした。
年代の分布は以下のグラフの通りで、20代・30代の回答者が多くを占めました。

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<調査結果1:Twitter上での嫌がらせや誹謗中傷などの経験>

Twitterを使用している人は、255名中、200名であった。

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Twitter上で嫌がらせや誹謗中傷などを、「受けた経験がある人」は12%だった一方、「見た経験がある人」は46%でした。このことから、約半数の人がTwitter上で嫌がらせや誹謗中傷などを日常的に見ていると考えられます。Twitter上での嫌がらせや誹謗中傷は日常化されていることが推察されます。

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<調査結果2:Twitter上での嫌がらせや誹謗中傷などの内容>

サーベイの目的1を達成するために、Twitter上でユーザーが受けたり見たりした「嫌がらせ」や「誹謗中傷」について、自由記述式で回答を求めました。その結果、261件の回答を得ることができました。261件の回答については、「ネット上での攻撃内容」としてラベリングしてみました。ラベリングした内容は以下の表です。

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どれも酷い内容でしたが、Twitterでは、脅迫や暴露より「相手の悪口」が多い印象でした。匿名性によって、気軽に他人への攻撃行動ができてしまう。そのような実態が見えてきました。Twitter上での攻撃行動を抑制させる方法として、例えば、ツイートする前に、ツイート内容に誹謗中傷の言葉があれば、ツイートできなくしたり、本当にツイートしても良いのか確認したりするようなシステム環境が必要かもしれません。

ネット上での攻撃行動を抑制させる方法や、ネット上で攻撃を受ける人を守る方法が求められるでしょう。


<調査結果3:ネットいじめ対策に必要な要素>

サーベイの目的2を達成するために、ネットいじめに立ち向かうために必要な要素として、「自己効力感」「コーピング」「援助要請」を取り上げ、それらが「他者への信頼感」や自分の「孤独感」という心理状態に及ぼす影響を検討してみました。その結果は以下の通りです。

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回帰分析の結果を要約すると、「自己効力感が高い人は、困った時に助けを求めたり、SNSで問題が起こっても自力で対処できる。そして、困った時に助けを求めていけば、他者を信頼し、自分の孤独を癒すことができる」と言えます。

人は、自己効力感を維持することができれば、問題が起こった時に対処したり、自分一人で対処できなかった時に誰かに助けを求めたりすることができます。

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「ネットいじめを受けている人を支援するサービス」について考えていきたい

欧米での研究知見や今回のサーベイ結果を踏まえると、「自己効力感」が、ネットいじめに立ち向かうために身につけてもらいたいスキルであると言えます。

ネットいじめを受けている人は、以下のような行動をとってみてください。
・加害者に仕返しはしない
・頼れる人がいれば相談する
・ネットいじめの証拠を保存する
・公的機関に通報する
・「ネットいじめ」に対処する姿勢を公表する
・自分が抱えている問題を解決した人の話を聴く
・ネットいじめを受けているSNSをしばらく使わないようにする

【SNS相談のサービス】


私は、エモスタで心理学×AIの事業に関わる心理学者として、今後、以下の3点について考えていきたいと思っています。

1. テクノロジーを活用して、誹謗中傷を検知したり、炎上を防止したりするような方法を考えること

2. ネットいじめを受けている人の自己効力感を維持する仕組みを考えること

3. SNSとの付き合い方や、SNS上でのコミュニケーションの取り方を教育する方法を考えること

この記事に共感していただいた人がいれば、エモスタと共に取り組んで行きましょう!

今回の調査結果の一部は、以下のイベントでも発表させていただきました。「大師ONE博」の方々とイベントに参加してくださった方に、ここで感謝申し上げます。

また、今回の記事の執筆にあたり、フリーランスエディター・ライターの宮本 恵理子 様からご指導いただきました。ここで感謝申し上げます。
宮本 恵理子 様のnoteを紹介させていただきます!→https://note.com/miyamotoerico

エモスタの事業に関心を持っていただけた方は、こちらもご覧ください!
株式会社エモスタのホームページはこちらです!→https://emosta.com/ja/


記事執筆者:エモスタ・研究開発パートナー 酒井智弘


参考文献

Clark, M., & Bussey, K. (2020). The role of self-efficacy in defending cyberbullying victims. Computers in Human Behavior, 106340.

Grigg, D. W. (2010). Cyber-aggression: Definition and concept of cyberbullying. Journal of Psychologists and Counsellors in Schools, 20, 143-156.

藤 桂・吉田 富二雄 (2014). ネットいじめ被害者における相談行動の抑制 教育心理学研究, 62, 50-63.

三好昭子・大野 久 (2011). 人格特性的自己効力感研究の動向と漸成発達理論導入の試み 心理学研究, 81, 631-645.

成田健一・下仲順子・中里克治・河合 千恵子・佐藤眞・長田 由紀子 (1995). 特性的自己効力感尺度の検討 教育心理学研究, 43, 306-314.

Savage, M. W., Deiss Jr, D. M., Roberto, A. J., & Aboujaoude, E. (2017). Theory-based formative research on an anti-cyberbullying victimization intervention message. Journal of health communication, 22, 124-134.

内海 しょか (2010). 中学生のネットいじめ, いじめられ体験 教育心理学研究, 58, 12-22.



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