27 コンクールの呪い
中学三年生。ソロコンクールに出ることになった。前の音楽の先生は、ソロコンクールに出る方針はなかったので、ソロで吹く経験をするはじめての代だった。音楽の先生の前任の中学校では、フルートの上手な生徒さんがいて、その人をロールモデルとして、それを目指して頑張りなさいと、先生は私を指導してくれた。
初代で絶対によい結果をのこさなければならない。絶対に千葉県で一位にならなければならないと、プレッシャーが大きく、先生もなかなかの鬼指導だった。一人のフルーティストとして舞台に立つので、どんなキャラクターを作ったらいいか、私の演奏をどう見せたら、フルート奏者らしくなれるかを、その生徒さんを想像しながら、フルーティストとしての、人間像を創り上げていった時期でもあった。
フルーティストと聞くと、どんなイメージを持つだろうか。清楚でお嬢様、髪が長くてドレスが似合いそうなど、一般的なイメージがある。はじめから、自分のキャラクター像と、一般的に求められている、フルーティスト像にギャップがあることはわかっていた。そんなキャラじゃない。そう思いつつも、そうでありたいと頑張っていた気がする。ソロコンクールは、自分の中の音楽との戦いなのに、私は、身近な人と比べられて、音楽することが、他人との競争になっていた。自分の表現は、どこか置き去りになっていた。期待されることは、嬉しいけれど、プレッシャーが重なりすぎて、咳喘息になってしまった。
後戻りもできず、心もギリギリだったのだと思う。それでも、頑張って、地区大会も県大会も、一位になれた。なんか色々賞ももらった。何ものでもない、私をここまで短期間で引き上げてもらえたのは、嬉しかったけど、演奏には、自分らしさを感じない。それもそのときの自分らしさなのかもしれないが。本当にこれでよかったのだろうか。危なっかしい演奏だ。コンクールとはいえ、いろんな権力が働いてたんじゃないかって思うくらいだ。コンクールで勝つことは、私に、王道のフルーティストになることへの呪いをかけた。