ケニアの食の安全についてのお話。+ ケニア発のクラフトブランドの紹介
ケニアと聞いて何を思い浮かべますか。
きっと雄大な自然やライオンキングかと思います。
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実は、そんな国に住むケニアの人たちが抱える「食」の安全性について課題があります。今回はそのお話を少し共有しようと思います。
というのも、2018年の3月から3週間の間、ケニアのナイロビ大学と共同で、食の安全に関する現地調査を実施していました。そこで思いもよらなかった課題が見えてきました。
ケニアと聞くと貧困を思い浮かべる人もいると思います。
Photo by Karthikeyan K on Unsplash
私もプロジェクトを行う前は、食の「安全」が<<<<< 「量」よりも問題ではないか?と考えていました。
実際に食の「量」も足りず貧困が問題となっています。しかし、食の「安全」にも問題があり知れば知るほど、深刻であることが分かりました。
では何が問題なのか?結論から言えば、「アフラトキシン」と呼ばれるカビ毒が、日常的に摂取するトウモロコシやミルクなどに含まれていることです。
このアフラトキシンというのは、
- 長期的に摂取するとガンの原因になりうる
- 子供は母乳を通して、成長障害などの症状が出うる
- 目に見えない(写真は極端に汚染された状態であり、健全に見えても汚染されていることが多い)
- 摂取直後は自覚症状はなく、長期に渡って発現する
などの厄介な特徴があります。
このようにたくさんのミルクの種類がありますが、1つのブランドを除いてアフラトキシンの基準値越えをしているとのことです。
なぜ、アフラトキシンが発生するのか?
大元の原因としては、トウモロコシが水に濡れることでアフラトキシンが発生しているようです。
じゃあ、雨や水に濡れないようにすればいいんじゃないの?と思いますが、簡単ではないようです。
上の写真のように、トウモロコシを乾燥させる際に外に干す風習がありますが、雨季には突然雨が降り出し、濡れてしまうことも多くあります。
サプライチェーンの中で、トウモロコシの保存中、売っている店先、運搬中など、水に濡れてアフラトキシンが発現する可能性はどこにでもあります。
このような複数のステークホルダー関わるサプライチェーンの中で、一体どこからアフラトキシンが侵入したのか特定することは難しく、コントロールできていない状態です。
ケニアの人たちはカビ毒を摂取していることは認識しているのか?
YESでもありNOであります。明らかに健全な状態ではない、トウモロコシは食べないようにしているそうです。
例えば、この写真のように明らかにアフラトキシンに汚染されていそうなものは食べないようにしているそうです。
ただし、上の写真にあるトウモロコシは、
"Only for Animal Feed" - 「動物の餌として使用してください。」
人間が食べるのではなく、家畜の餌として使用するために売られています。
想像に容易いですが、家畜を介し、ミルクとしてアフラトキシンが凝縮されて人間の体内に蓄積されていきます。
だから、お店で売っている牛乳のほとんどで基準値越えをしているのだと想像されます。
では、危険だと知らせればいいのでしょうか?
食の安全に関する学会に出席してきましたが、ケニア政府の人たちもこの問題に気がついてはいるようです。学会の様子。
アフラトキシンの基準値を超えているミルクを日常的に摂取していることをどうして周知しないのか、という主旨の質問を間接的にしてみると、
どうして、食の量が足りていないのに、今食べているものが危険だと知らせることができるんだ。
という旨の回答が帰ってきました。もし、生活者にミルクに危険な物質が含まれていることを伝えたところで、基準値を超えていないミルクは非常に高級であるため、購入することはできず、危険と知りながら摂取することになります。であれば、知らない方が幸せであるのかもしれません。
このような問題を深く理解して、人間中心のソリューションを生み出すために、ナイロビ大学と共同でデザインプロジェクトを実施しました。下の写真はナイロビ大学。
本記事の主旨から離れますので掲載しませんが、もしご興味があればプロジェクトのHPに遊びに来てください!デジタルソリューションのロードマップを作成しています。https://aaltoglobalimpact.org/foodafrica/about/
※ 今回の現地調査は留学中のアアルト大学IDBMプログラムで、6ヶ月間のハンズオン型のデザインプロジェクトの一貫で行いました。顧客はフィンランドの国立資源研究所です。
現地の食環境?
今回の調査では、100名ほどの人口の小さな農村から、機械化が進んでいる中規模の農家、イギリス人が経営している大規模の農家、トウモロコシを細かく潰して家畜の餌にする工場など、様々な関係者を訪れインタビューを行いました。
小さな農村では貧困の問題は深刻で、特に、近年異常気象の影響で、乾季が長く、一切雨が降らない日が続き、ほとんど農作物が取れない状況という話を聞きました。
荒れた田畑。我々がインタビューをしている間は笑顔で対応してくれていたお父さんが、あとから振り返ってみてみると、とても不安そうな顔をしていました。
真ん中にあるのがトウモロコシで作ったお粥です。この食事を父、祖母、子供2人の4人で食べるそうです。
ケニア発のクラフトブランド
最後に、ケニアで訪れた大規模農家が副業として営んでいる、ケニアのクラフトについて紹介したいと思います。
このように、ケニアの女性たちが手作りで、ゾウさんやキリンさん、ケニアの動物の達の人形を作っています。一切、人口的な材料を使っていないそうです。
彼女達の多くは、自分の力で食べていけるようになりたいという思いを持って、この仕事をしているそうです。
それは、ケニアでは男尊女卑の考えが強く残っており、女性は家事と農業の手伝いをし、仕事を男がするものという考えが深く根付いています。
彼女たちは、ここで働くことで自分で何かを生み出し、お給料をもらうことを心から嬉しいと思っているようで、イキイキとしているように見えます。
ヨーロッパで購入すると5000円くらいしますが、ここで買うと1500円ほどで購入できます。友達は10頭ほど購入していました。
ただ、イギリス人のオーナーが経営しており、いくら分が彼女達の給料として支払われているのか考えると、資本主義って搾取だなあと手放しで賞賛できない気持ちになりました。植民地時代からのケニアの土地、労働力、資源を搾取して富の生産をしているような空想をしてしまいました。
とはいえ、こういう地元初のクラフトで、地域経済を活性化し、女性のエンパワーメントに繋がるビジネスは素晴らしいと思います。私もビジネスで地方活性化をするのが1つの夢であります。
そのためには、デザインとストーリーから伝えられる価値が大切だなあと。
ちなみに、このブランドは「Kenana Knitters」(リンクはこちら)です。
日本ではこのサイトから輸入できるようです。気に入ればぜひ。
私の娘は、ゾウさんをとても気に入ってくれています。手作りした人の名前のサインが1体1体に入っています。人間のような格好と、少し弱そうな足が可愛いです。
それでは最後まで読んでいただきありがとうございます。
トップ画像: © 2018 Laura Silvanto