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フィンランドから学ぶ:企業文化としてのDEI推進3つのステップ

こんにちは、くにちゃんです。
今日は、日本企業でますます注目を集めているDEI(多様性・公平性・包括性)について、フィンランドの先進的な事例から考えてみたいと思います。

はじめに 多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包括性(Inclusion)という概念は、今や企業経営において欠かせない要素となっています。

その背景には、企業の目線からは転職が当たり前となるなど、人材の流動性の高まりであったり、高齢社会から若手の労働力が減少してきたり、またはエンジニアの採用競争があったりと、人材の「採用」、「育成、「定着」という人的資本経営の重要さが増していることがあります。

令和5年度産業経済研究委託事業報告書
「ダイバーシティ経営診断ツール等の活用展開方策に関する実証調査事業」

つい、先月に経済産業省の社会政策室からダイバーシティ経営を推進するうえでのヒントとなる調査レポートが発行されました。非常にわかりやすく、大企業・中小企業のDEI推進のアプローチやロードマップ、成功事例について解説してあるので、とてもおすすめです。

さて、今回は北欧フィンランドのDEIコンサルタント、Heidiさんとの対話から得た洞察を共有します。
彼女の経験を通じて、フィンランドの大手企業がどのようにDEI推進を浸透させていったのか、その過程を見ていきましょう。

彼女のプロフィールはこちらです!

これからDEIに関する会社のホームページも製作中とのこと▽
www.heidipech.com

Heidiさんによると、企業へのDEI浸透は主に3段階で進むそうです。
では早速、それぞれの段階を詳しく見ていきましょう。

1. 意識醸成:全社的な当事者意識の育成

フィンランドの企業では、まず全社的にDEIへの当事者意識を育てることから始めることが多いようです。これは、ちょうどフィンランドの人々が「自分とのつながり」を大切にするように、組織全体が自己認識を深める過程とも言えます。

具体的には:

  • ワークショップの開催:様々な部門から参加者を集め、DEIについて学び、議論する場を設ける

  • 対話セッション:経営層と現場の従業員が直接対話し、多様性に関する課題や期待を共有する

  • eラーニング:全従業員が基本的なDEIの知識を身につけられるオンライン学習プログラムの導入

この段階では、フィンランドの「フィーカ」文化のように、人々が落ち着いて自分自身や他者について考える時間を持つことが重要です。また、ボトムアップで「主体的にDEIの取り組みを推進するリードする人」を見つけることも大きな目的です。

2. 経営層のコミットメント獲得:データ駆動型アプローチ

次の段階では、経営層の本質的なコミットメントを得ることに焦点を当てます。ここでHeidiさんが強調するのが「データ駆動型」アプローチです。

フィンランドの企業では、以下のような方法でデータを活用しています:

  • DEI専用サーベイの導入:従業員の多様性に関する意識や経験を定量的に測定

  • ダイバーシティスコアカードの作成:採用、昇進、離職率などの指標をダイバーシティの観点から分析

  • 財務パフォーマンスとの相関分析:DEIの取り組みと企業業績の関連性を示すデータの収集

このアプローチは、フィンランドの人々が「自然とのつながり」を大切にするように、企業が組織の現実の姿と向き合う過程とも言えるでしょう。

また、この段階では、いかに「経営層からロジカルに経営戦略とDEI推進を紐づけて理解が得られるか」が重要です。

3. 文化的変革(チェンジマネジメント):長期的なカルチャーデザイン

最後の段階は、Heidiさんが「3年、5年、10年と続くカルチャーデザイン」と表現する長期的な文化変革です。これは、フィンランドの人々が大切にする「社会とのつながり」のように、組織全体が新しい価値観や行動様式を育んでいく過程です。

具体的な取り組みには以下のようなものがあります:

  • DEI推進チームの設置:専門的知識を持つ社内外のメンバーで構成されたチームの結成

  • 定期的な進捗レビュー:半年または1年ごとに、DEIに関する指標や取り組みの効果を検証

  • リーダーシップ開発プログラム:インクルーシブリーダーシップを育成する長期的なトレーニング

  • 制度や仕組みの見直し:採用、評価、昇進などの人事制度をDEIの観点から再設計

フィンランドの企業では、この段階を通じて、DEIを一時的なブームや表面的な取り組みで終わらせず、組織の根幹に据えていく姿勢が見られます。

この段階では、トップもボトムも、両側から組織の文化変革に向けた取り組みが活性化されていくことが大切だといいます。また、1年、2年ではない、持続的な取り組みが必要であるため、まさにカルチャーデザインが重要な役割を担っていきます。

まとめ

Heidiさんに話を聞いてみると、実はフィンランドも欧州のなかでは企業におけるDEI推進では、決して先駆者ではないといいます。社会としては、世界一平等だと言われていますが、まだまだこれからだと謙虚におっしゃっていました。

日本企業の現状を振り返ると、意識醸成や経営層へのアプローチなど、基本的な方向性は間違っていないように思います。ただし、データ駆動型のDEI経営についてや、カルチャーデザインはさらなる強化が必要かもしれません。

皆さんの組織では、DEIをどのように推進していますか?データの活用や長期的な文化変革について、どのようにお考えでしょうか。
経産省の発行の調査レポートも参考にして、ぜひ、ご意見をお聞かせいただけると嬉しいです。

フィンランドの「3つのつながりと時間」の哲学のように、私たちも「自分」「自然」「社会」とのつながりを意識しながら、豊かな組織文化を育んでいけたらいいですね。

それでは、また次回お会いしましょう!

写真:昨年の夏にフィンランドで撮影

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