完母にできなかった話
初めての出産を終え、早半年。
出産する前は、何もしなくても母乳は出るもので、ミルクは楽をしたい人のためのものだと思っていました。
同僚に「母乳マッサージをした方がいいよ」とアドバイスを貰ったり、インスタで母乳が出なくて悩んでる人の話を見つけたりしても、どこかで「私には関係のないこと」と思ってしまっていました。
今思えば、母親が「溢れるほど母乳が出て、ミルクなんてあげたことがない!」と産後の相談をするたびに言っていたことで理由もなく「私も母の娘なのだから、遺伝的に母乳はたくさん出るはず」と盲信していたのだと思います。
そもそも、そんな遺伝があれば、世の中皆人の子なのだから、不妊で悩む人もいないはずですよね…。
そして、いざ迎えた出産当日。
想像の何倍も壮絶な分娩を終え、やっと生まれた!と思った直後、カンガルーケアにからの授乳指導が始まりました。
私が選んだ産院は、母乳育児を推奨しており、出産直後から母子同室に力を入れていました。
最初から出るものだと思っていた母乳は当然出ず、泣きわめく新生児を抱き抱えながら、ほとんどの時間を授乳に費やしました。
「初日から母乳が出る人はほとんどいないよ。だいたい皆退院日前後くらいからちょろっと出だして、1ヶ月〜3ヶ月くらいかけて完母に移行していくんだよ。」
という助産師さんの言葉を信じて、ひたすら赤子におっぱいを吸わせました。
その甲斐あって、3日目につまむとにじむくらいの母乳が出だしました。
「ああ、よかった。これで母乳育児ができる。」
そう思い、泣きそうになったことを覚えています。
しかし、思うように母乳量は伸びません。
あまり出ないおっぱいをひたすら吸わせ続ける授乳は、産後ハイで乗り切りました。
昼夜問わず1日に20回近くの頻回授乳に加え、最低でも片乳10分というノルマも課していました。
気付けば1時間以上授乳していることも多々ありました。
あっという間に1ヶ月検診。
早い人は既に完全母乳育児に切り替えています。
検診では「授乳回数が多いけれど、しっかりと休めてますか?」と聞かれたけれど、その時は本心から大丈夫だと答えました。
母乳の分泌量も確認してもらい、良好というお墨付きをいただき、ミルクの量はそのままで、残すようになってきたら完母にするように指導されました。
さあ、もうちょっとで完母にできるぞ。
そう信じて頻回授乳を続けるも、母乳だけでは満足せずに泣きわめく赤ちゃん。
ミルクを足しても泣き止まず、やむを得ずミルクの量を増やしていってしまいます。
1ヶ月検診から2週間後。
保健所の新生児訪問があり、体重を測ってもらう機会がありました。
1ヶ月検診後の体重増加量は60g/日で、標準値30g/日を大幅に超えていました。
助産師さんに「母乳育児を望むなら、ミルクの量を減らしていっても大丈夫」と言われ、ミルクの量を減らすことに決めます。
その後、ミルクの量を減らそうと頑張るのですが、やはり母乳だけで満足してくれることはありませんでした。
そんなある日。
なんだか寒い…、そう思って体温を計ると、38度を超える発熱がありました。
このコロナ禍。安静にするため、授乳回数を減らし、家族と顔を合わせるのも必要最低限に留めるようにしました。
そう、この時点で私は発熱の原因が乳腺炎だということに気づいていなかったのです。
授乳回数が減らされたことにより、さらに乳腺炎が悪化します。
翌日には乳房が赤く腫れ上がり、触らなくても胸が痛い状態となり、やっと乳腺炎に気付きました。
妊婦検診でお世話になった近くのレディースクリニックに電話をし、発熱があっても診てもらえるかどうか確認をとった上で受診。
触診もしてもらいましたが、ぱんぱんに腫れているはずのおっぱいから、母乳が出ることはありませんでした。
この日は抗生物質と痛み止めを貰って帰宅。
母乳マッサージについて調べ、近所の助産院に駆け込みました。
それでも乳腺炎は中々よくならず、週1でマッサージに通い、1ヶ月くらいかけてやっとよくなりました。
そこで助産師さんから言われたのは、「なんでミルク足してるの?」というセリフ。
寝耳に水でした。
なんでって、そりゃ、母乳が足りなくて、泣かれるからです。
ミルクをあげないと、泣き止まないんです。
答えると、「母乳、十分出てるけどねえ。飲み残しが原因の乳腺炎かな。」そう言われました。
それから、半信半疑でミルクを減らしていきました。
でも、いくら吸わせても満足しないんです。
泣き叫ぶことが増えました。
そして、体重の伸びも悪くなりました。
それでも、助産師さん曰く、「母体が萎びてしまいそうなくらい、とめどなく母乳が溢れてくる」そうです。
試しに母乳を手で搾ってみました。
5分くらいかけて、30mlくらいしかたまりません。
もう、何を信じていいのかわからなくなりました。
乳腺炎になったってことは、少なくとも母乳が積極的に作られてるってことなのかな。
相変わらず子供はミルクを飲まないと満足しない。
そんなもやもやを抱え過ごすこと数ヶ月。
子供が乳頭混乱をおこしたり、色々ありました。
いつの間にか離乳食も始まりました。
結局、完母にはできていないです。
もしかしたら、母乳は十分に作られていたのかもしれない。
それは誰にもわかりません。
わかったことは、子供は母乳でもミルクでも、元気に育っていくということ。
母乳育児でなくちゃ!と思っていたわけではなかったはずなのに、こんなにも母乳に振り回されるなんて予想外でした。
根底に、母乳が出ないと母親失格というような変なプレッシャーがあったのだと思います。
母乳じゃないの?と聞かれるのがすごく嫌な時期もありました。
他意はなくても批判されてるように感じてしまったんですね。
母乳のあげ方、飲み方、ミルクの増やし方、減らし方。
最初にうまくやっていれば…と思うこともありますが、今は混合でペースがつかめています。
母乳のいいところ、ミルクのいいところ。
両方つまみ食いできたので、結果的にはよかったのかな。
何はともあれ、子供が健やかに育ちますように。
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