おまえは何を持っているのだ ②
絵本夏合宿からの続きのお話です。
前回のお話はこちら↓
夏合宿でのプログラムの一つに、田島征三さんとのワークショップがありました。今思えばそれは、異次元に飛んだワークであったと思います。
長野県山中での夏の晴れた日、合宿に参加した私たちに、1枚の大きな白い紙が渡されました。
2m×1.5m程の真っ白な大きな紙です。
そこに自由に絵を描くというワーク。
ただし、ひとつ条件がありました。
魔物を降ろせ、と。
魔物。
征三さんは絵を描いている時、紙の上に筆を下ろし無心になって絵を描いていると、ある時にふっと魔物が降りて来て、この魔物が勝手に自分の手を動かし絵を描いているのだと言います。そして気づくと絵は完成している。
私たちにこの魔物を降ろして絵を描けと。
白い紙の上で無心に向き合い魔物を降ろせと。
向き合い続けて魔物が出てくるのを待つのだと。
魔物...。
魔物って一体なんだろう?
二十歳そこらの私たちは、というか私個人に特定した話ですが、魔物を降ろすと言えば、その当時はまっていたPSゲーム『女神異聞録ペルソナ』でプレイヤーが自分のペルソナを召喚して敵と戦う時の、この召喚して降ろしてる感じが魔物を降ろすイメージとリンクしてしまいました。学ラン姿の南条君が、低く冷静な声で「ペルソナ」と囁き、片手を前に出してペルソナを召喚する姿に萌えます。どうでもいいオタク話を挟んでしまいましたすみません。
魔物とはそういうものではないです。
征三さんは魔物という言葉を使っていましたが、言い方はや捉え方はそれぞれにあると思います。
宇宙と繋がるとか、超意識、源、潜在意識、内なる神、高次の自分、今風に言うならハイヤーセルフと繋がるとか、魔物とはそんなようなものであったと思います。
だけども征三さんが言うとしたら、やっぱりそれは「魔物」と言うしかしっくり来ないのです。
「魔物」と言う力強さ。どっしり感。睨みを効かせた鋭い感じ。征三さんの絵から感じるのは、そんな魔物です。
私たちは外へ出て、それぞれ好きな場所で白い紙を広げ、魔物待ちをしました。
私は目の前に草が生い茂っている場所に腰を降ろし、絵の具の付いた筆を白い紙の上に滑らせ、目の前の草をイメージしたようなものを描き始めました。
草に集中して描いてると、なんだか知らんがバッタが見えてきて(実際にはバッタはいない)、草むらの中に潜むバッタをイメージで描き、すると他の虫たちや、なんだかわからない光のようなものも見えてきて、そのイメージを白い紙の上に降ろしました。
これは魔物と言うか妄想ですが、この絵を描いていた時は集中して自分が生み出している世界に入り込み、夢中になって描いていたのを覚えています。
上手く描けと言われるより何千倍と楽しいです。
魔物が降りて来たのかはわかりませんが、実のところ実に楽しい時間でした。
そしてその日の夜に、この日に描いた絵の表彰会が行われました。みんなが描いた絵の中から、素晴らしい作品だと思われるものに賞が与えられるのです。
その中で私は「特別賞」をいただきました。賞品はベロール社の48色色鉛筆。私的に一番嬉しいやつ。
上位の賞ではなく特別賞という位置で、思えばいつも、私はこの「特別賞」という位置のものを貰う人生であったと思います。
上位に求められる高いクオリティやそこまで突き詰めたものはないけれど、何か気にかけてもらっての「特別賞」を貰うことが多かったように思います。
小学生の時の紙飛行機大会では、誰が一番遠くまで紙飛行機を飛ばせるかと、飛距離を伸ばしてみんなが優勝を狙う中、私は紙飛行機にキラキラ紙吹雪を仕込み、自分が飛ばす順番が来るのをひっそりと待っていました。
自分の番が来て、体育館のステージの上に立ち、紙吹雪が入ってる紙飛行機をギュッと押しながらステージ下にいるみんなの方へ飛ばすと、キラキラした紙吹雪がふわっと舞い散り、その瞬間、みんなから歓喜の声が聞こえてきました。
私はみんなを驚かせ「特別賞」を貰いました。
はなから飛距離を伸ばして優勝することに興味はなく、こういう面倒くさいことをいつも考えているような子どもでした。
物事を正面から受け止めない(受け止められない)、そして斜め向こうから打ち返してくる非常に面倒くさい子どもです。
先日、この面倒くさい人レベルを底上げしてくれるような素敵な出会いがありました。
最後にそのお話を書いて終わりにしたいと思ったのですが、長い話となりましたので、次回に分けて載せたいと思います。
今回タイトル文の核心部分に触れると前回お伝えしてたので、それを待っていて下さった神さまのような方がいらっしゃいましたら大変申し訳ありません。すぐに上げます!
ここまで読んで下さりありがとうございました。
次回にすぐ続きます。