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「笑坂&吉野大夫ツアー」(3)

【ツアー6】 明生橋

後藤明生氏の別荘と私の住居との―距離高低差の―ほぼ中間点、すなわち標高九五〇メートルの あたりに、一筋の川が流れている。そこに渡された橋のひとつを、私は明生橋と呼んでいる。晴れていれば噴煙を上げる浅間山の背景が美しい。
いつであったか、文芸誌の写真のページに、欄干に寄り掛かる彼の姿を見たからである。

(河島英昭『過ぎ去った夏の人びと』日本経済新聞2003.8.24)
旧中山道(笑坂)沿いの一筋の川(上流側)
旧中山道(笑坂)沿いの一筋の川(下流側)

川島英昭氏の住居は旧中山道を下った地点にあり、明生橋は笑坂沿いの御影用水に架かる橋かと思われましたが、欄干のあるのは1枚目の写真のみでした。

【番外3】 千ヶ滝湯川用水温水路

旧中山道を御代田方面へ、更に下った左手(東側)に「千ヶ滝湯川用水温水路」があります。
これは、千ヶ滝と湯川を水源とする農業用水を太陽光で温めるための施設だそうですが、欄干のある大きな橋が架かっていました。

軽井沢町と御代田町の境界付近
千ヶ滝湯川用水温水路(上流側)
千ヶ滝湯川用水温水路は浅く、水底に藻が茂っているので、鴨の格好の餌場
この橋の左岸で左折し、別荘地を通り、旧中山道に出て、笑坂に向かいました。
(この川は、のちに「追分の川」というエッセイにも登場します。【ツアー26】)
「明生橋」は、この川(千ヶ滝湯川用水温水路)に架かる橋かもしれません。

笑坂は、浅間サンラインに向かう(浅間山が良く見える)道から右に分岐し、旧道が残されていました。

浅間サンライン入口付近
中山道から右(分去れ方面)に分岐した旧道と御影用水

【番外4】 Petit Lapin

旧中山道を御代田方面に下ってすぐの所(右側)にPetit Lapinという洋菓子店があり、自転車ではケーキは無理だったので、くるみのヌガータルトを買って、宿に帰った後、大変美味しく頂きました。

洋菓子店 Petit Lapin(プティ ラパン)
くるみのヌガータルト

【ツアー7】 笑坂、分去れ、追分宿

「笑坂。人里を見出して、旅人が安堵の笑いを発したという坂。しかしそのような場所は、いまどこにあるのだろう。」

(『笑坂』単行本の帯より)。

旧中山道、笑坂の頂上は国道18号線のガードレールで仕切られていました。国道を右に行くと、左手に分去れの常夜灯と追分宿の入口が見え始めます。

旧中山道、笑坂の頂上(国道18号線のガードレール)
分去れの常夜灯(この灯り見て、旅人は安堵の笑いを発した。)
分去れ(右は旧北国街道、左は国道18号線から、さらに左の中山道に分岐する。)
追分宿入口(西端、枡形の茶屋つがるや付近)

【ツアー8】 吉野坂

(明生氏は、分去れ向かいのドライブインで尋ねます)
「ところで、吉野大夫の墓はどこでしょうかね」
「吉野大夫?」
「何だか有名な遊女の墓らしいですが、それ程有名でもありませんか」
(中略)
「あ、あの吉野坂のですか」
「吉野坂、ですか」
「それでしたら……」
「いや、その吉野坂というのを、そもそも知らんのですが」

(Y29)
(吉野坂は国道18号の右手2本目の坂で「ハチひげおじさん」の看板が目印と「油や」で教えてくれました。)
吉野坂(国道18号からの入口付近)

【ツアー9】 変則四叉路

「その坂をずっと下ってしまうと、川がありますけれども、その少し手前が、確か四叉路になっていますから。その四叉路のところですね」
「吉野坂を下ると四叉路になるんですね」
「ちょっと変則な四叉路ですけど」
「ははあ、変則な四叉路ですか」
「でも、すぐにわかると思いますよ。そこまでは一本道ですから」
「その四叉路に、墓があるわけですね」

(Y31)
変則四叉路に至る坂道
変則四叉路の遊女の墓群(吉野大夫の墓)
(この前を、明生氏は通り過ぎてしまいます。)
変則四叉路(坂下方面)
変則四叉路(坂上方面)

【ツアー10】 坂下の川と田園

わたしは一応そのまま下ることにした。(中略)
ところが、分かれ道もないようだった。そして坂を下り続けると、あたりがすっと明るくなった。林が切れたのである。思わず立ち止まると、水の音がきこえた。そちらへ下りて行くと、左から右へ水が流れていた。

(Y33)
吉野坂下の川(上流側、この川は千ヶ滝湯川温水用水路へと続きます。)

橋の先もなお下り坂だった。わたしはそれを下ってみることにした。すると前方が急にぱっとひらけた。右手にはまだ林が残っていたが、左手は一面の田圃だった。(中略)
まったく予期しなかった不思議な眺めだった。どこか見知らぬ場所に来てしまったようである。

(Y34)
吉野坂下の田園風景

【ツアー11】 浅間山のお化け

そして、ふとうしろを振り返った。わたしは思わず、あっと声を上げた。そこに見えたのは、いままで見たこともない、途方もなく大きな浅間山だったのである。空一面に広がるというよりも、巨大なスクリーン一杯に映し出されているように見えた。実物の浅間ではない、何か架空の山に見えた。浅間山のお化けだ、とわたしは思った。

(Y34)
吉野坂下からみた浅間山

(続く)



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