2023年行ってよかった展覧会②~ハリエット・ヴァン・レーク
こんにちは。みしまです。
前回に引き続き、昨年、訪れた展覧会で印象に残っているものについて、振り返りたいと思います。
絵本『レナレナ』を通じて知ったハリエット・ヴァン・レークの世界
2023年は、オランダの絵本作家ハリエット・ヴァン・レークさんの展覧会に2度伺う機会がありました。
私がはじめてハリエット・ヴァン・レークさんを知ったのは『レナレナ』という絵本です。
レナレナという、髪が長くてスラっと細身の女の子が、好奇心の赴くままに、毎日何かを見つけたり新しい経験をする姿が描かれています。何もおそれることなく、常識なんて言葉は知らないかのようにズンズン進んで行く姿がカッコよくも見えます。
ページを開くと、左ページにはコマ割りされた絵が展開されていて、右ページには手書きの文字でテキストが書かれています。見開きで1編のお話のようになっています。紙面をためし読みできるサイトがあるので、ぜひ紙面を覗いてみてください。
https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=125124
私自身の身に降りかかったら、あたふたしたり騒いだりしてしまいそうなことでも、レナレナは全く気にしない様子で、ニヤリと笑って見せたりします。そんなところがチャーミングで魅力的な女の子だなと思います。
中でも私は、雨から作った雨茶(あまちゃ)をケモノたちと一緒に飲むエピソードが好きです。植物も動物(ケモノ)も虫も、みんなレナレナの友だちなんですね。
『エーディトとエゴン・シーレ』刊行絵本原画展
さて、そんなハリエットさんの新しい絵本『エーディトとエゴン・シーレ』が刊行されたと聞きつけ、その刊行記念絵本原画展に伺いました。2023年2月のことでした。
そしてちょうどそのとき、上野の東京都美術館で「エゴン・シーレ展」が開催されていました。そのときのことは以下の記事に書いています。
『エーディトとエゴン・シーレ』の作者ハリエットさんの住むオランダには、「エーディトの肖像」というエゴン・シーレの作品が所蔵されているそうです。そして、この1枚をもとにハリエットさんは、エーディトとエゴンの物語を描いたとのことです。
絵描きさんが他の絵描きのことを描くとき、どんなふうにどんな思いで描くのだろう。この絵本を前に、そんな疑問が頭に浮かびました。
『エーディトとエゴン・シーレ』刊行絵本原画展の展示会場は、原宿にあるシーモアグラス。私がうかがったときにはちょうど版元の編集者さんがいらっしゃって、ハリエットさんがこの1枚の絵からどのようにエゴン・シーレと向き合ったのか、制作過程のお話を聞くことができました。
ハリエットさんの絵からは、 あちらこちらから、エゴン・シーレ独特の色の組み合わせや構成を感じることができます。紙面の中で、エゴン・シーレとハリエットさんが一緒に溶け合っているように思えました。
エゴン・シーレも妻エーディトも戦争に苦しみ、最後はスペイン風邪を患い、若くして亡くなります。このような史実だけを読むと、2人の物語は悲しい最期を遂げたように思えます。けれど、ハリエットさんが描くの2人の世界は、カラフルで優しく、エキセントリックでありながらも愛情あふれた素敵な時間だったのかなと想像できます。そしてそのことに少しほっとするのでした。
『ミーのどうぶつBook』刊行記念展
2つめは、同じくシーモアグラスで開催された『ミーのどうぶつBOOK』刊行記念展です。
この絵本は、ミーという女の子と、ブタやメウシやカタツムリなどの動物たちとのかかわりを描いた話です。16編の小さいお話が入っています。
ミーは自然や動物が大好きで、とっても仲良しです。そこにはやさしい時の流れがあって、読みながらミーの世界にどんどん入っていき、穏やかな気持ちになります。
中でも私のお気に入りは、「ブタ」というタイトルのお話です。
1匹のブタが泣いています。涙がどんどんこぼれていき、地面は水たまりのようになってしまいます。すると、メウシや農夫のおじさんがやってきて、やさしくなぐさめてくれます。だれも「どうしたの?」なんて聞いたりせずに、ただそばにいてあげるのです。やさしくされて、うれしくなったブタはこう言います。
このお話は、幼い頃の娘を思い出させます。娘は幼い頃、よく泣いて泣いて泣きました。そのたび機嫌をとろうと、目の前で必死にいろんなことをしました。泣くことがピークに達すると、今度は急にケラケラと笑いだし、「何で泣いていたのかわすれちゃった」そう言っていたものです。そんな頃のエピソードを懐かしく思い出しました。
「ウマ」というお話もまた生命を感じる素敵なお話です。
ミーがウマに「あなたのうえでねてみたい、かまわない?」と聞きます。そして、ウマの上でミーはウマの心臓の音を感じるのです。
私は子どものころ、父のお腹の上で眠るのが好きでした。父が眠ってしまった後、大きなお腹が上下するのを全身で感じするのが好きで、こっそりクスクス笑みをこらえていたものでした。ミーと同じように大事な人の心臓の音を聞いて、安心していたのかもしれません。
原画を見ると、ハリエットさんの描く線はとても気持ちよくすーっと伸びていて素敵でした。こんな動物の世界に逃げ込めたらな、そう思わずにはいられませんでした。
ハリエット・ヴァン・レークさんの絵本、ぜひ読んでみてくださいね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?