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ほくろ仮面②…余命宣告までカウントダウン。そのほくろ、癌かも!

早速大きな病院へ連絡すると、翌日来院して良いことが分かり、スケジュール帳に予定を書き込んだ。

もしもうっかり子どもの目に入ってはいけないので

『8時半』

とだけ書いた。

それから子どもたちが帰宅するまでの数時間は、もしかすると近い将来悲しいお知らせをしなくてはいけないかもしれない、両親にはどう伝えようか、そんなことをグルグルと考えていた。

それまでの私は、この世を旅立つ事について
もし私が治らない病になったら、いつか来るお別れの時を思い、周りの家族や友人たちを、その時が来るまでの間悲しい気持ちにさせてしまうのは嫌だ、と思っていた。

私自身も
病による痛みや苦しみ、そしてお別れの寂しさを経験する勇気を、全く持つことが出来ずにいた。

だから
いつか来るお別れの時は突然がイイな、と願っていた。何か不慮の事故とか病気である日パッと、、、

そんなワガママで勝手なことを、時々考えてしまっていた。

そして
なぜかふと、最近
誰かが病気になったら?
急に会えなくなったら?


そんな事が頭に浮かんでは
不安で不安で
私は残されたその誰かとの貴重な時間を、少しでも楽しく過ごせる自信がない、って事を確信し、悲しくて寂しい気持ちになっていた。

私、なんでこんなに人とのお別れが受け入れられなくて辛いのに、この世に生まれて来ちゃったんだろう。

そんなことまで考える日があった。

だから
私が勇気もなく弱虫だったから、逃げるように


ある日パッと、、、


なんてワガママな事を選びたがっていたんだと思う。

でも

たかがほくろ1つで人生の終わりを迎えることになるのかもしれない。

そう思った時


『でも私には"今"がある。』

『愛おしい我が子に、ずっと私を支え続けてくれた両親に、"愛している" と伝える事が出来る!』

と気が付いた。

『しっかりこの手で抱きしめる事が出来る。』

『どれほど感謝してるか、目を見て伝える事が出来る。』

『私の声を聞かせて、背中を撫でて、おかえりとおやすみを言う事が出来る。』

次々と
心を込めて伝えたい人の顔が浮かんで来た。
心を込めて伝えたい言葉が浮かんで来た。


ある日パッと、、、


それはもしかすると、病より先に私にそんな事が訪れるかもしれないけど、でも、今なら間に合う。

そう思った。

それから
見える景色全てが愛おしくて優しかった。

鳥の鳴き声も、空の雲も、名前を知らない木も。

私がせかせかと、まるでハムスターがあの輪っかの中をただひたすらクルクルクルクルしているみたいな毎日を、もう何年も過ごしている間だって、きっと私に微笑みかけて元気をくれていたに違いない。

『やっぱりあの時、お医者様に相談していれば。』


そんな事は一瞬も考えないでいこう。
今出来る事を、今ならまだ出来る事を、"いつか"と思っていたことをしていこう。

当たり前なのに、知ってたのに、しなかったバカな私を辞めようと心に決めた。

ありがとう、ほくろ仮面。

なりたかった私に生まれ変わるね。
検査でもうそこには居ないほくろの跡に、そっと両手を添えて伝えた。

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