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謎解き・バナナフィッシュにうってつけの日08「ちっちゃい犬に手を出すな」
dig フカボリスト。口がわるい。
e-minor 当ブログ管理人eminusの別人格。
☆☆☆☆☆☆☆
どうもe-minorです。
digだよ。
前回は、シーモアが「どこへ行くにもオリーブと蝋(ろう)は手放さないよ。」と述べた真意を謎解きした。オリーブとはオリーブオイル、これは新約聖書にも頻出する当時の必需品だね。そして蝋は、あとでシビルが言い換えてるとおり「ロウソク」、すなわち典礼に使うキャンドル。いずれも「神(≒主)を迎えるためのもの」で、だからシーモアはこれらを持ち歩いていると。
むろん、ほんとに持ち歩いてるわけじゃないぞ。あくまでも比喩的な意味な。今なんかトランクス一丁だし。
それはみんなわかってると思うよ(笑)。さて、「蝋は好き?」「オリーブ好き?」ときて、シビルの次の台詞が、
「シャロン・リプシュッツ好き?」
なんとも可愛いもんだな。
ジェラシーには違いないけれど、これを「7つの大罪」に数え上げるのは忍びないね(笑)。「5人めの登場人物(エレベーターの女性を入れたら6!人)」というべきシャロン・リプシュッツ嬢も、これが最後の登場(?)シーンってことになるが。
それだけに、シーモアの次の台詞も、きちんと深掘りしときたいとこだ。
「うん、ああ。好きさ。あの子で特に好きなのは、ホテルのロビーで絶対に子犬をいじめたりしないところだね。たとえばほら、あのカナダから来たご婦人の連れてるブルテリア、おもちゃみたいにちっちゃいやつ、信じないかもしれないけど、女の子のなかには、あんなちっちゃいのを風船の棒で突っついたりする子もいるんだよ。シャロンはそんなことしない。絶対にいじめたりしないし、いじわるもしない。だからぼくはシャロンが好きだ」
これなあ。
つまり、前にシビルがそういう真似をしていたのを見かけたもんだから、「もうあんなことしちゃだめだよ。かわいそうじゃないか」というべきところを、シーモア流のやり方で、こんなふうに言ったってことでしょ? それ以上なにか深掘りする余地あるの?
そうなんだけどな。この短編が、T・S・エリオットの『荒地』……これは20世紀を代表する最高の詩のひとつだが……を下敷きにしてるってことは何度も言ってるよな?
うん。冒頭の一節が引用されてるし、そもそもシビル(シビュラ)って名前もそこから取ってる。
その『荒地』のなかに「犬を遠ざけておくんだ あいつは人間の友達だから」という一節があるわけよ。これもまたさらに聖書のパロディーなんだがね。
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