息子はにわかマジシャン


身長178センチ、体重78キロ。
太ももパツパツ、お尻ブリブリ。アメリカンフットボール部で鍛え、すっかりたくましくなった高3の息子。

そんな息子が学校から帰ると、ソファに座っている私の隣にやって来た。

その日、息子の手には見たことのないトランプの箱が握られていた。

「ママ、マジック見せたろか?」

「器用な子だな」なんて思ったことがない我が子から、そんな言葉が飛び出した。

「え? マジック? そんなの出来るの?」

「うん、見ときや」と即席マジックショーが始まる。

トランプを指で挟み、数回振るとカードが変わっているというオーソドックスなものながら、なかなか見事にできたので、

「うぁ〜!  すごいすごい! どうやったの? もう一度やって!」とおおはしゃぎでリクエスト^_^

あまりの私のよろこびように気をよくした息子はニンマリと笑い、マジシャンとしてはあるまじき言葉を口にする。

「どうやったか教えたろか?」

嬉しそうに、そして得意気にさっさとネタバラシをした。

そして何故かいつも遅い旦那がタイミングよく帰宅。

「パパにも見せてあげて」というと

「え〜!まぁ別にいいけど」

邪魔臭そうに答えながらも、食卓に着いた旦那の前に椅子を持ち出し、マジックを始めた。

旦那もまた「うぁ〜!すごいな。なんで? どうやって?」なんてまあまあいいリアクションをしていたその時、私は料理をしながら息子の嬉しそうな顔を見逃さなかった。

そしてたったひとネタの「マジックショー2回公演」も終わり、夕食もお風呂も済んだ。

時刻は23:45。さあ寝ようと自分の部屋の前に行くと、ドアの隙間から灯りがもれていた。

ん? 消し忘れてたかな? 
そ〜っとドアを開けると息子が私のベッドに腰掛けていた。

ムキムキの腕を、ノースリーブのランニングシャツから出し、短パンを履いた息子。

「ちょっと〜! もう寝たいんやけど、向こうにいっ...」っと言いかけたその時、ふとパツパツの短パンのポケットにくっきりとトランプの箱の形が浮き出ていて、赤い箱の角が見えた!

「ま、まさか、今からマジックするんちゃうやろね?  私、寝たいんだけど〜!!」

そう言った私へ息子は、

「じゃぁ、ひとつだけにしといたるわ」となぜか上から目線。しかも満面の笑み?

「えぇ〜! もう〜!今から〜? 私寝たい〜!」と言いながらも、私が来るまでベッドで座って待っていた息子を思うと無性に可愛く思えて、笑えた。

今度は見るだけでなく、カードを私が引く参加型マジックショー(笑)

カードをニコニコしながらシャッフルし「途中止めたいところで、ストップと言ってください」と何故か敬語で指示。

どこでストップを言っても必ず4つに分けたカードの1番上に、同じ数字のカードがくると言うマジック。これを2回(笑)

「へ〜! すごいやん!」

「これはやなぁ〜」

またすぐにネタバラシをし、満足したのか「じゃ、おやすみ」と出ていった。

私、実は見ていたんです。
旦那にマジックを見せた後、ソファに転がり携帯をいじっていた息子。

チラッと見えたその画面にはマジシャンが映ってた^_^

あまりのリアクションの良さに楽しくなり、新たなマジックを仕込んでいた模様。

見た目筋肉モリモリでも、まだまだ可愛いところがいっぱい。親バカですが、ユーモアはいつまでも忘れずにいて欲しい。

そしてベッドに転がり、このnoteを書いているまさに今、トランプを握りしめた息子が部屋に現れたました!

これから幾晩、マジックショーは続くのだろうか(笑)

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