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お隣はいったいどうなってるのか?② 進む分断 混乱は長期化へ       韓国政治の行方

【 尹氏弾劾審判  25日に最終弁論 】

【ソウル時事】韓国の尹錫悦大統領の罷免の可否を決める弾劾審判が
大詰めを迎えた。憲法裁判所は20日、第10回弁論を実施。25日に最終弁論
を行い、結審する。3月中旬にも決定が出るとみられている。
これまでの審理では、尹氏が2024年12月に宣言した「非常戒厳」が憲法や
戒厳法の定める要件を満たしていたのかなどの争点が浮き彫りになった。
憲法77条は非常戒厳の要件として「戦時・事変またはこれに準ずる国家非常
事態」と規定。北朝鮮の攻撃の兆しなどもなく、国会訴追団は「要件を満た
していない」と主張したが、尹氏側は「野党が国会で政府高官らの弾劾訴追
を乱発して行政や司法がまひした事態を国民に訴える宣言だった」と反論。
野党の「横暴」を国家非常事態と見なすかどうかが焦点となる。

【 木村幹  神戸大学教授の説明 】

<韓国政局のポイント>
○大統領弾劾でも与党支持率は回復の傾向

○過剰に攻撃的な野党の姿勢には反発強く
○対立激化で伝統的な与野党支持層が変化

① 2024年12月3日に突如として行われた尹錫悦大統領による
 非常戒厳宣布の試みは、2時間半後に国会が解除を決議したことで
 失敗に終わる。
② 国会では直後から大統領弾劾の手続きが進められ、一部与党議員の
 賛成をも得て弾劾訴追案が11日後に可決された。
③ 与党「国民の力」の支持率は急落し、最大野党「共に民主党」との
 差は12月中旬にはダブルスコアにまで拡大した。
④ 事態はその後大きく変化した。裁判所が出した逮捕・捜査令状の執行に
 対し、尹氏が自らを警護する大統領警護庁配下の軍・警察“協力部隊”を
 動員して拒む緊迫した状況の中、与党支持率がじりじりと上昇を始めた。
⑤ 25年1月に入ると各種世論調査で国民の力の支持率は共に民主党に迫る
 か、一部調査で上回ることになる。1月15日に大統領が拘束され、19日に
 一部保守派デモ隊が暴徒化して大統領の拘束延長を認めた裁判所を襲撃し
 た後も、状況は大きく変わっていない・・・

韓国の主観的中道層の政党支持率の推移

【 いま何が起こっているのか 】

  1. 18~29歳の人々の動向 / この一年間に野党が2.2ポイントの支持しか  伸ばしていないのに対し、与党は4.7ポイントも伸ばしている。    逆にこれまで与党を支えてきた高齢者からの支持は減っており、現在の 与党の支持率上昇が若年層に押し上げられたということがわかる。

  2. 与党は農林水産業者の支持を11.5ポイントも落とし学生の支持を23ポイントも伸ばしている。地域的には大邱・慶尚北道といった保守派の支持基盤で支持が落ちているのに対し、ソウルでは4.2ポイントも伸びた。

  3. 野党・共に民主党はこれまでの支持層であった30歳代からの支持を伸ばすとともに、保守派の支持基盤であった高齢者や農林水産業者の間にも支持を拡大したが、より注目すべきは重大な「敵失」があったにもかかわらず党勢をほとんど伸ばせていないという事実だ。

【 主観的な立場を“中道”と考える人の動向 】

興味深いのは野党にとって圧倒的に優位に見える政治状況の中で
「共に民主党」が非常戒厳宣布時より中道層からの支持を減らしている
ことである。 では原因は何だろうか?
⑴ 非常戒厳宣布後の野党の過剰なまでに攻撃的な姿勢
共に民主党の李在明代表は自らも公職選挙法違反をはじめ様々な訴訟を
抱える。この訴訟で禁錮刑以上が確定すると公民権を失い次期大統領選挙に
立候補できなくなるためできるだけ早い時期の大統領選挙実施を求めており大統領弾劾に向けた憲法裁判所での審判を急ぎ、あらゆる手段を動員している。その姿勢が、法の支配を軽視する点で尹大統領と「どっちもどっち」だとみられている。
⑵ 20代以下の男性の多くが与党支持に傾いているという事実
韓国では以前から若年層でフェミニズム路線を巡る男女対立があり、22年の
大統領選挙でも争点の一つだった。今回の政局でも20~30代の女性の多くが
フェミニズムに否定的だった尹大統領の弾劾を求めるデモに参加した。
だからこそ、このようなフェミニズム運動に反発する20代以下の男性が大きく保守化する結果となった。言い換えるなら非常戒厳宣布以降の政局で野党
を中心とするリベラル的なイデオロギーが、メディアで強調された結果反発する人々が保守派に集結するという結果がもたらされた。

【 この先、韓国社会はどうなるのか 】

これまでは世代や職業・地域を基準とした集団の間でイデオロギー的な
対立があり、その中で社会は「不安定の中の安定」を続けてきた。
しかし非常戒厳宣布後の対立激化の結果、これまで保守・進歩両派の
各々安定した支持基盤であった集団を、イデオロギー対立が内部から
大きく引き裂こうとしている。
中道層の保守・進歩両陣営への分断や、20代の男女の対立はそのことを
典型的に示している。従って今後イデオロギー的な対立が益々激しさを
増し、両者が話し合いのきっかけさえ見いだせずに、韓国社会の混乱は
長期化してしまう可能性が高い。

興味のある方はこちらもチェックしてみてください
「お隣はいったいどうなってるのか?①」
https://note.com/eminem8milenemo/n/nf535b4e7ee7f



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