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“1019年の自衛隊” 現実を見ない為政者理想の政とは程遠い現実  光る君へ『第47回“哀しくとも” その2』

分かっているのだ。連隊も中隊長も何も嫌がらせでこんな直前になって
敵の来襲が明日あるかもしれませんよ、と予告しているのではない。
どこかで情報がつっかえているのだ。それは別に最近始まったわけでは
なく、こんなことが起きる前から閣議だの選挙だの陸幕の通達だの
方面だの総隊だのとイベントや階層を踏めば踏むほどに時間がかかる
仕組みになっているだけだ…(砂川文次著 / 小隊)

【 中央と現場(地方) 】

◆シン・ゴジラ “総理執務室での関係閣僚のやり取り”
首相「これはいったい何だ?」
関口文科相「巨大不明生物としか呼称しようがありませんが
      目下省内や大学や研究機関の生物学と多方面から
      学識経験者を招集し緊急の有識者会議を設置すべく
      候補者リストを作成しております」
首相「早く正体を知りたい。急いでくれ!」
関口文科相「ハイ!」
赤坂総理補佐官「総理、緊急の課題はシッポの正体よりも今後の対応です」
首相「あ、そうか」
金井特命担当相「しかしコイツは思ったより想定外過ぎるぞ」
内閣危機管理監「ですがぁ、対処フローの選択はシンプルです
        静観、つまり野放し、もしくは捕獲か駆除か
        それとも湾外に追い出すか、ですね」
国平副総理兼外務大臣「でしたら駆除でよろしいかと」
葉山経産相「賛成ですねぇ。トンネル事故との関連はさておいても
      羽田は全便欠航、東京湾内が無期限全面封鎖されており
      すでに莫大な経済的損失が出ております」
河野総務相「私も駆除に同意致します」
金井特命担当相「そうだ!一刻も早く駆除すべきだ。そうだろ!防衛省!」
松本防衛省運用政策統括官「え〜、過去有害鳥獣駆除を目的とした出動は
       幾度かありますが、海自による東京湾内での火器の使用は
       前例もなく、なんともぉ…」
柳原国交相「まぁまぁ、コトを荒立てず穏便に追い出せないのか?」
菊川環境相「総理、各学会と環境保護団体が貴重な新生物として捕獲調査を
     提言しています。定置網を至急湾内に用意して欲しいそうです」
金井特命担当相「いや、ここは駆除だ!魚雷とか使えばすぐ済むだろ」
花森防衛相「お気持ちはわかりますがここは、火器仕様も含め本省に
      検討の時間を頂きたい」
関口文科相「私からも、是非とも捕獲を視野に入れた検討を願います」

矢口内閣官房副長官(会議に参加している役人を振り返り)
「速やかに巨大不明生物の情報を収集し、駆除、捕獲、排除と
 各ケース別の対処方法についての検討を開始して下さい」
 (役人たちは互いに顔を見合わせる)
平岡内閣官房副長官補「それ、どこの役所に言ったんですか?」

当事者意識の希薄な役人たち

◆陣定(じんのさだめ)“解文(げぶみ)に対する公卿たちのやり取り”
右大臣「左大臣様!」
左大臣「はぁ…あぁ、其方にまかせる」(ほぼ寝ている)
右大臣「では、私が上卿(しょうけい)を。この太宰の権帥の窮乏に対し
    朝廷が何を為すべきか。下の者より順に考えを述べよ」
参議1「前例も無きことでわかりませぬ」
参議2「わかりませぬ」
参議3「わかりませぬ」
参議4「須らく敵は討つべしと考えます」
参議5「討つべしと考えます」
行成「朝廷が武力を振るってはなりません。祈祷をして邪気を祓うのが
   宜しいかろうと存じます」
公任「太宰府の事は太宰の権帥が解決すべきでございます」
源俊賢「しばらく様子を見ても宜しいのではないかと存じます」
斉信「朝廷が武力を振るうことは如何かと思うが
   攻め入ってくる者は討たねばならぬ」
道綱「…、あ、同じく」
(実資登場)
実資「こ、れ、は、如何なことかぁ?
   公卿が揃ってこその陣定でありましょう!」
斉信「遅れて来られてそれはありますまい」
右大臣「只今、太宰の権帥の解文に対して如何すべきか聞いておった
    大納言殿は如何か」
(実資着座)
実資「敵が都を目指した時のために、山陽道、山陰道、南海道、
   北陸道の守りを固めるべし。都の武者だけでは足りぬ故
   急ぎ各地の武者を募るよう手配すべし」
道綱「面倒だなぁ〜それ!」
実資「面倒とは何事かぁ?」
右大臣「皆の考えは摂政様にお伝え致す。本日はこれまで」
左大臣「ふぁ…」(立ち上がって下がり始める)
実資「お待ち下さい!事は急を要します。今話し合わねば!」
右大臣「警護の話はまたと致す。以上!」
 (皆立ち去る)

皆、そそくさと陣定から立ち去る…

【 理想主義 と 現実主義 】

■道長に刀伊の入寇の顛末を報告する実資
実資「隆家殿がここまで優れた将であったとは存じませんでした
   以前隆家殿は朝廷も武力を持たねばやっていけぬようになると
   申しておりましたが、誠にそうやも知れませぬ」
道長「武力に頼る世になってはならん」
実資「それは勿論のことなれど、平将門の乱以降、朝廷は軍を
   持たなくなりました。それから80年が経ち、まさかこうして
   異国の賊に襲われることになろうとは。もはや前例に拘って
   おっては政は出来ぬと存じました。では、これにて」

※平将門の乱(935~940)なので刀伊の入寇が1019年とされている
 ので実資は将門の反乱から80年と言っています
 今から80年前は1944年  終戦の前年に当たりますね

■双寿丸とまひろの会話
双寿丸「調子はどうだ」
まひろ「心配してくれてありがとう」
双寿丸「俺、肥前に行く事となった。殿が備前守となられる故
    俺も着いて行く」
まひろ「平為賢様が備前守に成られるの?」
双寿丸「そうだ。此度の戦で大いに働かられたから褒美らしい
    俺も肥前で武功を立て続けるぞ。」
まひろ「武功を立てるとは人を殺めることではないの?」
双寿丸「殺さなければ殺される。敵を殺すことで民を守るのが
    武者なのだ。」
 (見つめ合う二人)
双寿丸「そんな顔するな。なぁ、あんたも早く健やかになってくれ
    そうでないと周明とて成仏できないぞ」
 (小さく頷くまひろ)
双寿丸「乙丸も、達者でな」

【 現代の理想主義者と現実主義者の論争 】

「世界を自分たちの政策に適応させると考える人々と
 自分たちの政策を世界の現実に合わせるよう立案する人々の
 間にある永遠の論争」(アルベール・ソレル)

「現にあるものについての分析とあるべき姿への願望とを区別するという
 謙虚さを十分身につけるまではどんな学問も学問という名には値しない」
 (E・H・カー)

ウクライナ、ガザ、レバノン、シリア、アフガニスタン、
ミャンマー、イエメン、北朝鮮、新疆ウイグル、チベット…
現実世界で毎日起きていることをじっと見ていると
理想主義者の提言は事実ではなく願望に近い
“説得力”に依存しており現実的には困難だろう
いまや世界は理想や倫理ではなく
現実の力関係や利害が重視されつつある
リアルポリティクスの時代に入ったように見える

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は8日、シリアとの間にある
占領地ゴラン高原の非武装緩衝地帯を、イスラエル軍が一時的に管理下に
置いたと発表した。シリアで反政府勢力が実権を握ったことで、同国と
1974年に合意した兵力引き離し協定は「崩壊」したと述べた(BBCニュース)

大石静はこの第47回の脚本をどのような思いで
執筆したのだろうか訊いてみたい!
ではまた!


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