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『嫉妬心』この厄介で面倒で泥臭い感情 光る君へ『第47回“哀しくとも” その3』
人は心中に巣くう嫉妬心によって
褒めるよりもけなす方を好むものである
ニッコロ・マキアヴェッリ
【 嫉妬、羨望、ルサンチマン 】
嫉妬と羨望はどう違うのでしょうか?
例えばあなたに片想いの人がいるとします
その人があなたの知らない第三者と付き合うことになった
その第三者にあなたが感じる憎しみの感情が嫉妬(ジェラシー)です
私が望むもの〜私が望んでいる対象を手に入れた第三者
この三角関係によって引き起こされる感情を嫉妬と言います
次に羨望です 妬みとも言います
自分は独り身です 目の前で仲睦まじいカップルを見ました
「自分も素敵な恋人がいると楽しいだろうなぁ…」と
羨ましく思う感情が羨望(エンヴィ)です
何も手にしていない私〜望むものを手に入れている人
この二者の関係をによって引き起こされる感情を言います
ルサンチマンは少し複雑です
イソップ物語の「すっぱい葡萄」をご存じでしょうか
狐が葡萄の樹の下で葡萄を手に入れたいと思いますが狐には
手が届きません。「あれはすっぱい葡萄だったのだ」と捨て台詞を
言って葡萄の木から去る、そんな話です
狐が葡萄を手に入れることができず「葡萄が欲しいのに悔しいなぁ」と
言って去れば単なる羨望の話です
葡萄を何とかして手に入れることもせず、羨望の感情を受け入れてしまう
こともせず、羨望の対象を“否定”することによって自分の気持に決着を
つけようとする行為のことをルサンチマンといいます
ルサンチマンは弱者の強者に対する高等戦術ですね
【 道長と公任の言い争い 】
※陣定の結果を道長に報告している実資
(そこに公任が現れる)
公任「道長」
道長「如何した」
実資「わたしは、これで…」
道長「ご苦労であった」
(辞去する実資)
公任「太宰府の件、治まったことを知らせに参ったが…
俺の出番ではなかったようだな。実資殿と通じておったとは…」
道長「陣定でのやりとりを聞いて心配しておったのだ
政に関わって以来、此度ほど驚いた事はない」
公任「何にも動じぬ道長が動じたのか?
俺たちにはそんな姿見せぬのに実資殿には見せるのだな」
(道長ににじり寄る公任)
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公任「隆家はおまえの敵ではなかったのか?
故に俺は陣定であいつを庇わなかった、お前のために!
伊周亡き後、お前にとって次の脅威は隆家だ
いっその事、戦いで死んで居れば良かったのだ
太宰府でこれ以上力を付けぬよう俺は、お前のために
あいつを認めなかった」
道長「国家の一大事にあっては隆家をどうこう言う前に
起きた事の重大性を考えるべきである
何が起き、どう対処したのか
此度の公卿らの有り様は、あまりに緩み切っており呆れ果てた」
公任「俺たちをそのように見ておったのか
俺たちではなく実資殿を信じて!」
斉信「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ、な〜にを揉めておるのだぁ」
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(公任立ち去る)
(入れ替わりに斉信が道長の傍らに座る)
斉信「ど〜した? ま、何があっても俺は道長の味方だから」
(苦笑する道長)
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※人間を行動に駆り立てるのは
「何かを新たに獲得しよう」という動機より
むしろ「失ったものを取り戻したい」という
動機の方がはるかに強い
人を政治的暴力に駆り立てるのは
「失う」ことへの痛みだ
だから『嫉妬』と言う感情は厄介なのである
【 倫子(ともこ)との再会 】
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倫子「お帰りなさい」
まひろ「ご心配をおかけしましたことを娘から聞きました」
倫子「今、貴女が初めてこの屋敷に来た日のことを思い出したわ
誰よりも聡明で偏次を皆一人で取ってしまって ふふふ」
まひろ「御無礼致しました。世間知らずで、お恥ずかしゅうございます」
倫子「五節の舞にも私の代わりに行ってくれたわね
倒れたと聞いて申し訳ないことをしたと思ったものよ
懐かしいわね」
まひろ「はぁ…」
(一呼吸おいて…)
倫子「それで、貴女と殿はいつからなの?」
(固まるまひろ)
倫子「私が気づいていないとでも思っていた?」
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ラスボスが表情を変えずに最強の光線を至近距離で発射してきた!
まさに“ゴジラ-1.0”ならぬ“倫子-1.0”
この時の倫子の感情、これは“嫉妬”なのか“ルサンチマン”なのか
それとも単なる“恨み”なのか“復讐”なのか・・・
なんとも結論付けるのは難しい
作者の意図はまだわからない
次週、最終回でどう回収していくのだろうか
実に楽しみです
※1 このドラマを毎週楽しみにしていますが
できるだけ言葉を発せず意見を述べず
黙って見るようにしています
「墓穴掘ってるんじゃないよ!」
と家内に叱責されるもので…
※2 蛇足(道長とまひろの年齢を生まれ年から計算)
刀伊の入寇は1019年5月
その年の道長は53歳、藤式部は46歳
都に戻ったのは1020年なので
再会時は道長54歳、まひろ47歳か…