見出し画像

エイリアン ロムルスは老舗ラーメン屋の“全部乗せ”(ネタばれ有り)

45年前に池袋の文芸座で「天国から来たチャンピオン」と「エイリアン」の2本立てを観ました。なんとも不思議な取り合わせ。天国から…の後にエイリアンの上映でした。何度も座席からずり落ちそうになりましたよ。図らずも閉塞空間に侵入した驚異の異生物との生存競争。ジョーンジーに驚かされて見終わってからも激しい胸の鼓動は収まりませんでした。それから7年。今度は連絡を絶った辺境のコロニーを探索する宇宙海兵隊と侵攻者との攻防の話。わらわらと出現する異生物。炸裂するM41A-1とM56スマートガン。ラスボス的マザーの登場。ニュートの運命は…?と、テンポよくとてもハラハラさせられたものでした。

さて昨日“エイリアンシリーズ”の新作である“エイリアン ロムルス”をIMAXで観てきました。これまでの作品とのつながりをどのように消化して「新作」に昇華させているのか非常に楽しみでした。
感想は「そこそこ美味しいラーメン屋さんの全部乗せ」を食べたような感じとでも表現するのが近いでしょうか。いろいろ詰め込まれてはいますが、どれも見たことある状況・展開で、「次はこうなるな…」と予測できてしまい、実際そうなりました。一方で人類のディストピア感が強調されていたり、アンドロイドのAIを書き換えてキャラを変化させたり、“ザ・フライ”のような展開を入れ込んだりと工夫は見えますが、如何せん過去作のアイデアを超えるようなものは見受けられず、やや退屈な展開に感じられました。 ここぞという際の“決め台詞”も既存作のそれをまんま口にさせています。「それを言っちゃぁお終いよ」まさか寅さんを目指してはいませんよね?

スープも麺も変わらず、トッピングの種類を増やし、味変のための香辛料や調味料を用意されても、まずくはないですが期待以上の満足感は得られません。評判の良いラーメン屋さんは常に看板メニューをブラッシュアップして、その上で季節限定メニューや新しいトッピングを開発して提供してくれます。美味しいものも繰り返していると人は飽きてしまいます。なぜか?味覚は“記憶”であるため嫌なことは忘れ、自分にとって良かった記憶がより磨かれて都度脳内で再現されるからです。それ故、先代の店主の味を引き継ぐだけでは進化する常連客の要望に応える事は難しいのでしょう。食の世界でベストセラーを作るよりロングセラーを作ることがはるかに難しいのはこのためです。シリーズ化されるエンタメも同じことが言えるかもしれませんね。次回は新しい解釈のこのシリーズを見てみたいと思いながら「いつものランチ」を食べに行く私でした。

【ポストクレジット】
池袋から西に延びる私鉄に10分ほど揺られ、
到着した特に特徴のない小さな駅を降りて
10分ほど歩いたところの私立高校に通っていた。
時々クラブ帰りに食べ盛りの空きっ腹を満たすのに
駅前の決してきれいとは言えない小さなラーメン屋で
ボリュームのあるラーメンを友人たちと食べて帰った。
テーブル席が埋まっていると店のおやっさんが
「奥行きな!」と言って小さな小上がりに通された。
それまで食べてきたラーメンとはちょっと違っていた。
炒めた野菜と豆腐、ひき肉がたっぷりかかっている。
見た目は赤く、ボリュームがあり、そして辛い。
空きっ腹の高校生にはそれがとてもおいしかった。
蒙古タンメン、北極ラーメン、樺太丼・・・

今では29店舗に拡大し、CVSの限定商品を監修するまでに
業容を拡大している「中本」
私の中の「中本」は中本正さんが鍋を振って作っていた
蒙古タンメンの味と店の匂いの記憶でできている


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?